白き神とのひと時 後編
ポップコーンとドリンク……お金を入れたら自動で出てきたそれを持って、目的の映画が上映されているスクリーンに移動する。
マジで本格的な造りになっており、スクリーンもちゃんと複数あるみたいである。
そして目的のスクリーンに辿り着いて、券売機で購入したチケットに描かれていた番号に移動すると……なぜか他の席は普通なのに、そこだけ先ほどのカップルシートに変わっていたので、思わずシロさんの方を振り返る。
「……シロさん、ここだけ席がなんか違うんですけど」
「不思議ですね」
「……そう……ですね」
犯人が誰かなど分かり切った問題だし、なにか言ったところで無駄だろう。あと、周囲との差に驚きと素早い行動に若干呆れはしたが、別に嫌なわけではないのでそのシートに座る。
なんか薄暗い映画館にポツンとふたりきりの文字通り貸し切り状態というのは、少しソワソワする部分もあるが……。
「快人さん、あ~ん」
「へ――むぐっ……ポップコーン?」
「いちゃいちゃするのなら、映画館では最初の15分が勝負と聞きました」
最初の15分? あぁ、他の映画のCMとかが流れるからか? いや、取り合えず暗くなったらあまり騒ぐべきではないと思うのだが……ここに限って言えば、完全なる貸し切りなので問題はないといえば問題はない。
「快人さんのポップコーンも食べてみたいです」
「同じ味ですけどね……はい、どうぞ」
「あ~ん」
こういう互いのポップコーンを交換し合うみたいなのがやりたいなら、別の味にするべきだったのでは? と、そんなことを考えつつ、シロさんにポップコーンを食べさせる。
なんというか、神域の映画館となると本当に完全に俺とシロさんのふたりきりだし、ある程度大胆に行動したとしても……それこそシロさんの言う通りいちゃついたとしても、多少は恥ずかしさに余裕があるので、少し大胆になれるかもしれない。
「……ほぅ」
「あっ……」
ただひとつ、迂闊だったのは……隣にいる方が心を読めるというのを失念していた……いや、いつも当たり前に読まれているのであまり気にしていなかったことだ。
シロさんの顔はなにかを考えている顔であり、流れ的にちょっと不味そうな気もする。
「快人さん、大変です」
「え? なにがですか?」
「私の手などが空いたままです。由々しき事態では?」
手を繋げってことだろうか? てっきりまた突拍子もないことを言い始めるかと思ったが、意外と普通の要求だった。いや、困るわけではないのだが……。
「じゃあ、こんな感じで」
とりあえず、シロさんの要望通り開いていた手を恋人繋ぎのような形で繋ぐ。これで満足してくれたかなと思いつつ、スクリーンの方に視線を戻すと……直後にコテンとシロさんが俺の肩にもたれ掛かってきた。
フワッと鼻腔をくすぐる心地よい香りに、微かな重みと温もり……思わずスクリーンに向けていた視線を戻すと、こちらを見ていた綺麗な金色の瞳と目が合った。
薄暗い中でも輝いているように見える銀色の髪、反則的なほどに整った神がかり的に美しい顔……それなりに見慣れたかと思っていたが、こうして不意に見るとその神秘的な美しさに息を飲んでしまう。
その直後フッとシロさんが繋いでいた手を離したかと思うと、俺の首の後ろに手を回すとグイっと顔を近づけてきた。キスをするような感じではなく覗き込むような……顔に息がかかるほど近くで、ジッと俺の目を見つめている。
「……快人さん」
「え? あ、はい」
いくら恋人同士とはいえ、コレだけ近くでシロさんの顔を見ると本当に緊張する。
「以前、時空神と快人さん、リリア・アルベルトにクロの従者のアインの四人で話をしていた時に、私が言ったことを覚えていますか?」
「と、いいますと?」
「私は快人さんの攻略対象で、最終的に肉体関係に発展するものだと、そう口にしました」
「……そ、そういえば、そんなことを言ってましたね」
あの時は、空気が凍りついたのを覚えている。
「しかし、あの時の私は恋愛というものをそもそもよく知らず発言していました。故に、あの発言は誤りだったと思っています。決して肉体関係に発展することが最終ではないと、いまは理解できています」
「……」
「ですが、生憎といまだ勘違いや知らないことも多いわけです」
「……えっと」
そこまで語ったところで、シロさんは少し顔を離し……心の底から美しいと思える笑みを浮かべで告げた。
「……いつか、その先を教えてくださいね」
「……は、はい。えと、頑張ります」
「ふふ、よい発言が聞けました。楽しみにしていますね」
そう告げたあと、シロさんは不意打ちのように俺に顔を近づけ、触れるだけの軽いキスをしてから座りなおして、俺の手を握ってスクリーンに視線を向けた。
そして俺がなにか言うより早く、まるで図ったようなタイミングで部屋が暗くなり、スクリーンに映画が映る。
暗くてシロさんの表情は見えないが、自分の顔が滅茶苦茶赤くなっているであろうことは理解できた。シロさんは本当に成長しているというか……どんどん魅力的になっていくので、ある意味では恐ろしい話である。
本当に気をしっかり持っておかないと、さっきシロさんが言ったいつかが来たときに、油断していたらシロさんに溺れてしまうかもしれないと、そんな気がした。
……なお、その後、俺があまり映画に集中できなかったのは言うまでもないことである。
シリアス先輩「ぐあぁぁぁぁぁ……ほ、本当にこいつは……二部始まってから登場する度に糖度が増してやがる……ツライ……」




