襲来する黒翼⑨
活動報告に十三巻のキャララフ公開第三弾を掲載しました
アメルさんに運ばれること数分、突如スピードがゆっくりになり始めた。
「着いたんですか?」
「いや、まだもう少しだけど……丁度有翼族の集落の付近を通るから、盟友にも見てもらいたいと思ってね」
「有翼族の? お、おぉ。アレですね!」
アメルさんの言葉を聞いて視線を動かすと、そこにはたしかに有翼族の住処と思わしき場所があった。いくつもの切り立った相当標高が高いであろう山の山頂付近……いくつのも切り立った崖のあるような、なんとなく霊峰とかそんな雰囲気のある場所だった。
いくつもの峰の上には家らしきものがあり、アレが有翼族の家なのだろうが……峰と峰を繋ぐ橋のようなものが存在しないのは、皆飛んで移動するからだろうか?
少なくとも、空が飛べなければここで生活するのは無理だろうと、そう感じるような場所だった。
「凄いですね。なんというか、種族の特徴が出ているというか、人間の俺としてはあまり見慣れない居住形態で、物珍しさを感じますね」
「本来であれば、盟友を我が家に招待したいところなのだが、いまはまだその刻は訪れていない」
「……」
ファンタジー感あふれる光景に感動していると、そのタイミングでアメルさんが呟くように告げ、見ることに集中していたせいか反応が少し遅れた。
すると、俺が言葉を返すより先に焦ったような声が聞こえてくる。
「あっ、い、いや、盟友を招待したくないわけではないんだ。むしろ、ボクとしては来てほしいぐらいだが……その、他種族を招くには、いろいろ手続きとかあって……すぐにはできなくて……ご、ごめんね」
「ああ、いえ、大丈夫ですよ。すみません、反応が遅かったせいで気を使わせてしまいましたね。不満だったりとかそんなことは一切ないので、安心してください」
「よ、よかった……また今度、改めて正式に招待するよ」
「ええ、楽しみにしてます」
どうやら、景色に夢中になって反応が遅かった俺を見て、怒ったかもしれないと思って焦っていたみたいだ。なんとなくだけど、アメルさんはちょっとだけアイシスさんに似てる気がした。
見た目や性格とかではなく、もっと深い部分……自分は特別だ~と自信満々でいるようで、その内面では自分に自信がなくて不安げなところとかが、出会ったばかりのころの自分に自信がなかったアイシスさんに似ている気がした。
「それでは、改めて約束の地に向かおう!」
「了解です」
有翼族の集落から1分ほど飛ぶと、岸壁地帯とでもいうのか、木々が無く岩ばかりの場所が見えてきた。その中で広くスペースのある場所にアメルさんはゆっくりと俺を下ろしてくれた。
「ここはボクが己の力を磨くのによく利用していた場所さ。生物もほぼいなくて人里からも離れているから、周囲を気にせず力を解放できる」
「なるほど、それじゃあ、さっそく試してみるわけですね」
「ああ、盟友に示そう! ボクの魂の煌めきを!!」
テンション高めにそう告げると、アメルさんはスッと片手を己の目にかざす。その動作をキーとして、カラーコンタクトが赤い光を放つ。
「解放!」
続けてキーとなる言葉によって、アメルさんが腕に巻いていた黒い包帯が自動的にほどけ、腕の周囲に浮遊する。
「顕現せよ! 魔槍・ウロボロス!」
そしてさらに設定した言葉によって、腕輪型の収納からウロボロスが取り出されアメルさんの手に収まる。魔力が注がれたことでタトゥーシールが反応して、アメルさんの腕には禍々しい模様が現れ、ウロボロスにも黒い炎が現れる。
アメルさんはそのまま翼を大きく広げて跳躍しながら、ウロボロスを投擲する構えを取る。
「これぞ、終焉の焔! ディザストエンド!!」
そしてカッコいい技名と共に、ウロボロスを投擲。凄まじい速度で飛んだウロボロスは黒い魔力の尾を引きながら、遥か遠方の岩山にぶつかり、その岩山を消し飛ばした。
うん、普通にカッコいいし……ついでにいうと、流石というべきか威力はガチである。
「……封印」
アメルさんは念じてウロボロスを手に戻すと同時に、キーとなる言葉を告げて、包帯を自動で巻き直しながら着陸すると、非常に満足げな表情かつ、なにかを期待するような目でこちらを見た。
「すごくカッコよかったですよ、アメルさん」
「ありがとう! ボクも大満足だよ。えへへ、ボク、カッコいい――んんっ!? 封印されたボクの力をここまで制御できるとは、さすがは虚ろなる幻影の王より与えられしアーティファクト……」
俺の感想を聞くと、アメルさんはパァッと花が咲くような笑顔を浮かべてはしゃいだ後、慌てて咳払いをして冷静な表情に戻る……いちいち反応が可愛らしい方である。
「大迫力でしたね……せっかくですし、俺も買った魔力玉とかも試してみましょうか」
「うん! 一緒に遊ぼ――こほんっ、いつか来る終末に向け、共に力を磨こうではないか!」
テンション高く嬉しそうなアメルさんと共に、俺もしばし童心に返ったように買ってきた品を使って楽しんだ。
シリアス先輩「……なるほど、本質的に自分に自信がないところとかが、少しアイシスに似てるのか……だからヒロイン力が……」




