襲来する黒翼⑤
魔槍ウロボロスに目が釘付けのアメルさんに対し、アリスが説明を始める。
「まず、そのウロボロスの強度はオリハルコンすら遥かに上回ります。貴女が全力で魔力を込めたとしても、余裕で耐えうるだけの強度ですね」
「なんと、それほどの強度……神々の作り出した鉱石とか、そういったものを使っているのでは……」
「いえ、オリハルコンと……夜空に輝くオーロラを封じ込めた結晶を混ぜ合わせています」
「オーロラを封じ込めたっ……」
あぁ、セラのレインボーダイヤモンドか……気に入ってたびたびジークさんから買い付けているのは知っていたが、オリハルコンと混ぜて素材にしたりとかそういう使い方をしていたのか……。
それはそれとして、アメルさんの食い付きが凄い。
「さらに、このウロボロスには特殊な術式を施していまして、使用者の魔力を登録しておけば、投擲しても念じるだけで手元に戻ってきます」
「念じるだけで手元に……超カッコいいっ」
「さらに、それだけではありません」
「まだあるの!?」
喜び過ぎて言葉遣いが素に戻ってる感じがするアメルさんに対し、アリスはウロボロスを差し出しながら説明を続ける。
「魔力を注いでみてください。それで、全て分かるでしょう」
「魔力を――ッ!? こ、これは……『闇の力』!?」
アリスからウロボロスを受け取ったアメルさんが魔力を注ぐと、槍の周りになにやら禍々しい黒い炎のようなものが現れた。
アメルさんの言う通り、闇の力っぽい見た目である。
「そう、その槍は魔力を込めることで漆黒の炎を出現させるのです! まぁ、単なる演出なので特に特殊な効果は無くて見た目だけですけど……」
「ふあぁぁぁ、凄い、凄いぃっ!」
もう、アメルさんのテンションは完全に最高潮である。包帯を巻いた手で槍を掲げながら、漆黒の炎の演出に喜びまくっている。
なんというか、微笑ましいはしゃぎっぷりに俺も思わず笑みを浮かべた。
「なんか、そうしていると、アメルさんの手に封印された闇の力が顕現したみたいですね」
「ッ!?」
あれ? アメルさんが封印してるのって闇の力だったっけ? いや、よくは覚えてないが、アメルさんは俺の言葉に『それだっ!』みたいな顔してるので、別に問題はなさそうである。
「……ボクにはわかる。この槍は、悠久の時の中で所有者となる存在……同じ大いなる闇を宿した存在であるボクを待ち続けていたんだろう。こうして手に持った瞬間、通じ合ったような、そんな感覚があるよ」
「……まぁ、作ったの最近ですけどね」
感極まった様子のアメルさんを見ながら、アリスが小声で呟いたが、すぐに気を取り直したように明るい声で告げる。
「そうですね。やはりその槍は、黒き疾風と呼ばれる貴女に相応しいかと……」
「それで、アリス。結局いくらなんだ?」
「金貨五枚ってところですかね」
日本円にして500万円か……高いことは高いが、オリハルコンとレインボーダイヤモンドを合わせた特殊な素材を使っていて強度もあり、念じるだけで手元に戻ってくる機能があって、喜ぶ人は限られるが魔力を注ぐと特殊な演出もあるとそれだけのスペックがあることを考えると、むしろ安い気がする。
「もちろん買う」
「まいどあり~」
アメルさんは予想通り即決で購入を決め、金貨五枚を取り出してカウンターに置いた。
「あっ、おまけでこれ付けましょう。腕輪型の音声登録型収納魔法具です。予めキーとなる言葉を設定しておけば、それで槍を出し入れ出来ますよ」
「か、カッコいい……ありがとう!!」
やっぱりというか、なんというかアリスとアメルさんって割と相性がいい気がする。アリスが作る品には、結構そういう感じの……アメルさんが喜びそうな品が多い。
まぁ、いままでの情報から、アリスは間違いなく過去は俺と同じ病を発症していたので、俺と同じようにアメルさんの好みがよく分かるんだろう。
「いいものが見つかって、よかったですね」
「うん! 盟友のおかげだよ! 本当に、ありがとう、すっごく嬉し――んんっ!? さ、流石はボクが認めた盟友の導きというべきか、ボクはこの槍を長く探し求めていたような、そんな気さえするよ。ボクには分からずとも、きっと盟友には最初から分かっていたのだろうね。深き地下に隠されし、正しき闇の力を持つ者を待ち続ける魔槍……このめぐり逢いは奇跡だが、その奇跡を呼び起こしたのは、紛れもなく盟友の功績だろう」
まぁ、要約するとここに連れてきてくれてありがとうということである。物凄く満足げではあるが、まだアリスの雑貨屋に行っていない。
雑貨屋には他にもいろいろアメルさんが気に入りそうなものがあるし、この感じなら間違いなく喜んでくれると思った。
【魔槍ウロボロス】
①元々アリスが自分の短剣を新調しようと、いろいろ素材を考えてる時に創り出した特殊合金を使用している(アリスの力には耐えられないので没になったが、伯爵級最上位レベルの魔力にも耐えられる素材)
②投擲しても念じれば手元に戻ってくる。かなり複雑で高度なギミックであり、これを仕込んだので他はおまけ程度の機能しか搭載できなかった。
③魔力を込めると闇の炎の演出。見た目がカッコいいだけで特に意味はない。なんなら、量自体は微々たるものだが、その演出のために若干注いだ魔力を無駄にしている。
④お値段は金貨五枚(500万円)、ただしこれは『快人の家の店舗限定価格』なので、他で売る場合は白金貨十枚(1億円)。




