襲来する黒翼③
【活動報告に十三巻キャララフ公開第二弾を掲載しました】
本当に5分以内に到着したアメルさんは、なんというか少しはしゃいでいるようにも見えた。
「ここが盟友の家、凄くおっき――こほん。荘厳さと気品を兼ね備えた素晴らしい外観、さすがは盟友というべきか、特別な者が住むに相応しい良い家だね」
「ありがとうございます。それにしても、すみません、わざわざ足を運んでもらって」
「構わないさ、盟友のためなら例え世界の果てへでも駆けつけるよ。ボクたちの魂の契りは、輪廻という業程度で焼くことなどできないのだから」
「……と、とりあえず、立ち話もなんですし中にどうぞ」
「えへへ、友達の家に遊びに来るって初め――んんっ! では、お言葉に甘えさせてもらうとするよ」
あ、なるほど、なんかはしゃいでいるように見えたのは友人の家に遊びに行くということが初めてでテンションが上がっていたのか……。
なんだか、気のせいかもしれないが、アメルさんは中々にエリートぼっちなのかもしれない。いや、でも、カラーコンタクトは貰ったって……いや、違うな。知人って言ってたな、友人とは言ってない。
俺の窮地という話はどこに行ったのか分からないが、とりあえず楽しそうなアメルさんはキョロキョロと視線を動かしつつ、俺の案内に従って家の中に入った。
そのまま応接室に案内し、イルネスさんに紅茶を持ってきてもらい、改めて今回の本題に移ることにした。
「改めて、来てくれてありがとうございます。それで、相談なんですが……」
とりあえずアメルさんには、リリアさんのこと、リリアさんが有翼族と取引をしたがっており、アメルさんさえ嫌でなければリリアさんに紹介したいという話をした。
俺の話を聞き終えたアメルさんは、大きく一度頷きフッとクールな笑みを零す。
「……構わないよ。他ならぬ盟友の頼みだ。契約に関してはボクが示すべきではないし、後日にするべきだろう。人にはそれぞれ適材適所というものがあり、その領分は神聖だ。だが、安心してほしい。有翼族の長、アメルの名に懸けて扉を開くことだけは、この時点で確約しよう」
えっと……細かい契約内容に関しては、担当の者と後日改めて交渉してもらうことになるが、交渉のテーブルにつくこと自体は、この時点で確約してくれるってことだろう。
「ありがとうございます……それじゃあ、もし時間が大丈夫なら、さっそくリリアさんを紹介してもいいですか?」
「ふっ、ああ、もちろんだ。勇名を轟かす白き薔薇の姫君に興味もある。漆黒であるボクとは相反する輝きにも思えるが、真理は歩んだ先にしかない」
「リリアさん自体は噂とかで知っているけど、性格的な相性は合ってみなければ分からないって感じですかね?」
「さすがは、ボクの盟友。やはり、ボクたちの魂は深く通じ合っているんだね」
なんだろう、毎度アメルさんの言葉を正確に読み取るたびに好感度が上がっているような気がする。いまも口調こそクールだが、目はキラッキラしてるし……。
ま、まぁ、とりあえず、リリアさんの紹介は問題ないみたいなので、さっそく話を通してしまおう。
連絡をして数分後、リリアさんが俺の家の応接室に訪れ、アメルさんと向かい合って座る。リリアさんは呼びに行った際は、死んだ魚のような目で『……朝食から1時間も経過してないんですが……どうなってるんですか本当に……』と呟いていたが、流石そこは貴族というべきか、応接室に来ることにはしっかりと普段通りの表情に戻っていた。
簡単な自己紹介を終えたあとで、取引についての話をリリアさんが切り出した。
「確認をさせていただきたいのですが、取引に関しては後日担当者と話す形でよろしいのでしょうか?」
「やはり、相応しき時、相応しき場が存在するからね。目録を携えた賢者に任せる。叶うなら三度帳が下りるだけの時を間に用意してほしい。賢者は疾風とはいかない、たどり着くには猶予が必要だ」
「……え、ええっと……」
アメルさんの言葉を聞いて、リリアさんが明らかに困った表情を浮かべている。たぶんというか、間違いなくアメルさんの言葉の意味が分かっていない。
なので当初の予定通り、俺が通訳をすることにした。
「えっと……つまり、取引内容とか特産品とかの目録を持った担当を後日リリアさんの屋敷に向かわせて、そこで取引の交渉をしてほしい。日程に関しては三日後以降で決めてもらって、アメルさんほど早く移動できるわけではないので、有翼族の里から王都までの移動にある程度時間がかかるので、それを考慮した日程を組んでほしい……ってことです」
「なるほど、それでは交渉の日程などに関しましては、改めて書面で送らせていただき、互いに都合の合う日に訪問いただくという形で問題ありませんか?」
「示す輝きに不満はないよ」
「それでいいそうです」
アメルさんは割とフルスロットルというか、結構難解な言い回しも使いまくってるが……さすがに慣れてきたのか、結構スラスラと通訳することができ、話し合いは順調に進んでいった。
ただひとつ、例によって通訳する度に、アメルさんはキラキラと感激したような目をこちらに向けており、またも好感度がガンガン上がっている気がした。
アメル
友達の家に遊びに来るというシチュエーションにウッキウキであり、テンション高め。中二っぽい言い回しもフルスロットル。
快人がスラスラと自分の意を汲み取ってくれるのが、めっちゃ嬉しい。
快人
相変わらずの適応力。アメルの言い回しに関しても、もうだいぶ慣れた。
リリア
朝食の席で衝撃の交友関係に胃を痛めたと思ったら、1時間も経たないうちに有翼族の長と対面することになった。
なにが起きているか分からないし、考えたくもないが、とりあえず胃は痛い、すごく痛い。




