お茶会の終わりと新たな招待
リリウッドさんとある程度話をしたあとは、約束した通りアイシスさんの居るテーブルに戻ったり、他のテーブルを少し回ったりしてお茶会を楽しんだ。
ハーモニックシンフォニーと合わせて、七姫の方たちはかなり親しくなれたように感じている。
アメルさんも、本当になぜそんなに好感度が上がったのかは分からないが、別れを非常に惜しんでくれまた俺の家に遊びに来ることを約束した。
楽しかったお茶会が終わって家に戻ると、それなりに遅い時間になっており、夕食を食べて風呂に入って寝支度でもしようかと思っていたタイミングで、アニマが俺宛ての手紙を持ってきてくれた。
俺の家に届いた手紙は、一度アニマが確認して貴族の茶会の招待だとかそういうのはアニマが処理してくれ、ノインさんやクリスさんといった文通している知り合いのものは、俺の元に届けられる。
「ご主人様、一通招待状と思わしきものがありました」
「招待状? この少し豪華な封筒かな……アニマが持ってくるってことは、俺の知り合いってことかな?」
そういえばお茶会の時も招待状だったなぁと、そんなことを考えながら封筒の裏を見ると……。
「え? 光永君から? あっ、そっか、カトレアさんとの結婚式か!」
封筒は光永君からのもので、封を開けてみると結婚式の出欠確認の手紙だった。
光永君は現在勇者役を終えたあとで貴族の地位を貰っている。王女であるカトレアさんと結婚予定ということもあって、ただの地位だけでなく実際に領地もあり、いまはそちらに移り住んでカトレアさんにいろいろ教わりながら領地経営をしていると聞いている。
そして、光永君とカトレアさんは婚約関係にはあるものの、まだ正式に結婚はしていない。表向きは光永君が領主として一人前になってから式を挙げるとのことだが、実際は俺や葵ちゃんや陽菜ちゃんの帰還を待ってくれていたのだろう。
そして俺たちがこの世界に戻ってきたのを確認してから、結婚式の準備を進めていたというわけだ。
「……さすがに日程まだ先だけど、楽しみだな。アニマ、出席に印をしたから送っておいてもらえるかな?」
「はい、お任せください」
「ありがとう、よろしくね」
もちろん躊躇うことなく出席を決めた。日程は……三ヶ月ちょっと先か、まだかなりある。まぁ、光永君も貴族だし、カトレアさんは王女ということもあれば、招待客も多くなるだろうし出欠確認だけでも結構時間がかかるのだろう。
いや、そもそも俺がよく知らないだけで結婚式の出欠確認ってこのぐらい前からやるのかもしれない。こればっかりは、結婚式に招待を受けたことが無いので分からないな……。
一夜明けて翌日、朝食の席で葵ちゃんと陽菜ちゃんと話をしていた。話題はもちろん、光永君の結婚式についてだ。
「はぁ~正義が結婚とは……変われば変わるものですね」
「というか、光永君ってずっとこっちにいたってことは、もう私より年上になってるのよね? なんか少し変な感じ……」
「あっ、そっか、俺たちが帰ってる間に2年近く経ってるし、そもそも葵ちゃんや陽菜ちゃんみたいに元の世界に戻るときに身長とかの変化を1年前に戻してもらったりもしてないから……いまの光永君は18か19歳ってわけか……」
葵ちゃんや陽菜ちゃんは絶賛成長期であり、1年の期間で背もある程度伸びていたので、シロさんが魔力などの成長はそのままに体だけを召喚時の状態に戻してくれていた。
ただ、この世界への完全な移住を決めていた光永君に関してはとくにそういう処置も無いので。光永君はこの世界で通算3年近く過ごしており、年齢的には先輩だった葵ちゃんを追い越している。
「私もカティと会うのは久々なので、当日が楽しみですね」
同じく食堂で朝食を食べていたリリアさんも会話に参加してくる。リリアさんにとってカトレアさんは姪っ子であり、当然リリアさんも結婚式の招待は受けている。
そのまま光永君の結婚式の話でしばし盛り上がっていると、食堂に少し険しい表情のルナさんが入ってきてリリアさんに近づく。
「……お嬢様、やはり駄目でした」
「そうですか、流石に難しいですね。残念ですが、今回は諦めますか……」
なにがあったかは分からないが、あまりいい感じでないことは分かった。同じように気になったみたいで、陽菜ちゃんがおずおずと口を開く。
「リリアさん……どうかしたんですか?」
「ああ、えっと、私の持つ商店の店長から、新商品のアイディアと共に相談を受けたんですよ。その新商品はとてもいいものだったのですが、材料に有翼族の特産品が必要ということで、いろいろ伝手を当たってみたのですが、残念ながら空振りでした」
「有翼族は、基本的にあまり他種族と交流を持たないので、取引を行うのがかなり難しいんですよ。お嬢様も、以前と比べればいろいろとコネを持っているのですが、流石に有翼族となると交渉できる伝手も本当に限られるので……」
リリアさんの言葉にルナさんが捕捉を入れ、俺たちは納得したように頷く。なるほど、空振りという言い方を考えると、有翼族に繋がりそうな伝手を当たってみたが、上手くいかなかったということだろう。
と、そんなことを考えていると、ルナさんが苦笑を浮かべながら告げる。
「いっそミヤマ様に頼んでみますか? ミヤマ様ともなれば、有翼族に伝手もあるかもしれませんよ」
「あはは、それはいい考えですね。どうでしょう、カイトさん? どなたか紹介していただける有翼族の知り合いとか居ませんか?」
ルナさんの口ぶりは完全に冗談であり、リリアさんも同じく冗談のつもりで言っているのは伝わってくる……だけどなぁ、困ったことになぁ……あるんだよなぁ、伝手。
「……えっと、一応昨日のお茶会で、有翼族の長っていうアメルさんと知り合いましたが?」
その直後、ガンッという音と共にリリアさんの頭がテーブルに叩きつけられた。
シリアス先輩「ついに……いや、まだ先だけど、数年ぶりに正義が登場するのか…‥そして、相変わらず破壊される胃」




