お茶会で深まる絆⑧
感応魔法に共鳴し、過去の様子を映像として再現しながらのリリウッドさんの話は続いていった。
もちろん、リリウッドさんが実際に生きてきた年月を考えるとあまりにも短い……要点を絞った話ではあった。
七姫や配下たちとの出会いや、ユグフレシスを発展させていく過程の話、友好条約が結ばれた際の話、ソレにメギドさんがたまに森を荒らしたりすることへの苦言なども交え、穏やかに話は進んでいった。
『……といったところでしょうか。かなり省きましたが、昔話というとこんなところですね』
「いろいろ話してくれてありがとうございました。けど、もしかしてかなり時間が経ってますかね?」
『ああ、いえ、感応魔法に共鳴する際に少し時間の流れもズラしたので、長く話していたように思えても実際の時間はそれほどでは無いですよ』
「リリウッドさんって、いろんなことができるんですね」
『ふふふ、私もこれでも六王のひとりですからね。大抵のことはできますよ』
そう言ってリリウッドさんが微笑むと、景色が切り替わりリリウッドさんと一緒にお茶を飲んでいた場所……お茶会の会場が一望できるバルコニーに戻ってきた。
しかし、時間をずらすとか本当にあっさりやって見せるところを見ると、流石は六王である。アリスも、大抵のことはできると言っていた覚えがあるし、俺ぐらいのレベルから見れば六王クラスになれば全員全能といっても過言ではない感じだし、実際に俺が思い浮かべられる程度のことは実現可能なのだろう。
『そういえば、ここまではずっと私の話でしたし、今度はカイトさんのお話も聞いてみたいですよ』
「俺のですか? えっと、昔話ってことですか?」
『いえ、別に最近の話でもかまいませんよ。貴方の話が聞きたいと、ただそれだけですからね』
なんかそういう台詞をサラッと言われると少し照れてしまうが、たしかに聞いてばかりだったし、俺の方も何か話をするべきだろう。
「最近というと、友好都市に行きましたね」
『ほう、観光ですか?』
「観光も目的のひとつでしたが、切っ掛けとしてはオリビアさん……教主から手紙を貰ったことでした」
リリウッドさんも興味を持ってくれたみたいなので、そのまま友好都市ヒカリに行った際の話をすることにした。
偶然出会った同郷の香織さんの話や、オリビアさんとのやり取りを話していく。ちゃんと話せているか不安ではあったが、リリウッドさんは時折相槌を打ちながら、どこか楽しそうに聞いてくれていた。
そのまましばらく話を続けていると、ふとリリウッドさんの髪にいつの間にか咲いていた花が目についた。
「……」
『どうしました?』
「あ、いえ、すみません。つい、リリウッドさんの髪の花に目がいって」
『……おや? いつのまに……ふふ、カイトさんとの話が楽しかったのでしょうね』
リリウッドさんの葉の髪は、リリウッドさんの精神状態にある程度影響を受ける。リリウッドさんが疲れていると枯れ、機嫌がいいと花が咲いたりする。
「六王祭でも見ましたけど、その花って世界樹の花ってことになるんですかね?」
『ええ、そうなりますね。ただ、世界樹の果実のように回復効果があったりするわけではありませんがね。多少枯れにくくはありますが……ふむ』
俺の疑問に答えていたリリウッドさんだったが、途中でなにかを考えるような表情を浮かべたあと、なにかを思い出したように話し始めた。
『……そういえば、アイシスとカイトさんが初めて出会った際に、アイシスはカイトさんにブルークリスタルフラワーを贈ったのでしたね』
「ええ、いまでもあの時のことは覚えてますし、俺にとってもブルークリスタルフラワーは少し特別な花ですね……それでいうと、リリウッドさんと初めて会った時には世界樹の果実をいただきましたね」
『そうでしたね。まだそれほど時間は経っていないはずなのに、少し懐かしく感じます……しかし、ふむ……なんだか、花と果実では、少し華やかさで負けている気もしますね』
「……そうですかね?」
リリウッドさんの声色はどこかからかうような感じのもので、なにかを企んでいるというか、実行しようとしているというか、そんな感じがして首を傾げる。
すると、リリウッドさんはスッと自分の頭に咲いた世界樹の花に手を伸ばして取る。
『せっかくですから、アイシスにあやかって……今日という日の記念にこの花を贈ります。状態保存の魔法はかけてあるので、枯れることはないと思いますよ』
「え? あ、ありがとうございます。嬉しいですけど、あやかるって……どういう?」
『さぁ、どういうことなんでしょう? 私にもよく分かりません……ただ、貴方とアイシスの関係を羨ましく思う己も居ると、そう思うだけです。私はなにかを期待しているのか、それとも単なる好奇心なのか、困ったことに自分自身でも分かりませんので……今後カイトさんと関わっていく中で、探していけたらいいですね』
聞きようによってはまるで告白のようにもとれるそんな言葉と共に浮かべたリリウッドさんの笑顔は、今日一番……いや、いままでみたリリウッドさんの笑顔の中で、一番綺麗だったような気がした。
シリアス先輩「あぁぁぁぁ……くそっ、これ本人に自覚がないだけで、かなり攻略は進んでいるじゃねぇか!? 絶対好感度高いよコイツ……」




