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黒き翼④



 とりあえず盟友と呼ばれるほどアメルさんと仲良くなれた訳なので、せっかくの機会だし有翼族についても聞いてみようと思って、いろいろ質問をしてみた。


「……へぇ、有翼族はアルクレシア帝国に多いんですね」

「ああ、有翼族は地に縛られるのを嫌う種族だ。天に向かってそびえる頂こそ、住処に相応しいというわけさ」

「つまり、標高の高い山とかに住んでるんですね」

「その通りだよ。ただ、自由に代償は付きものというべきか、有翼族はやや閉鎖的と言ってよく、あまり他の種族との交流は多くないね。まぁ、まったく無いというわけではないんだけど……」


 ここまでの会話である程度慣れたこともあり、アメルさんの言いたいことはなんとなく察することができるようになった。

 そもそも時々難解な言い回しが来るという程度で、それに関しても前後の会話やニュアンスから想像ができるので、そこまで難しいことではない。


「盟友はシンフォニア王都に住んでいるんだったね?」

「ええ、中央区画に家があるので、もし機会があればぜひ遊びに来てください」

「うん! 行く行く! ……こほん。盟友の招待とあっては、受けぬ通りなどないさ」


 あと、余談ではあるがアメルさんの素が出てくる法則もなんとなく察した。アメルさんのテンションがかなり上がった場合と、予想外の言葉に戸惑った時、あとなにか不安がある時……概ねその三パターンの時に、素に戻る感じがする。


 そんなことを考えながら会話を楽しんでいると、不意にアメルさんがなにやら少し不安げな表情でキョロキョロと視線を動かし始めた。

 なにかあったのだろうかと首を傾げていると、アメルさんは意を決するように表情を真剣なものに変え、懐から黒い羽根の付いた、アクセサリーのようなものを取り出してこちらに差し出してきた。


「……これは?」

「盟友とボクの絆の証とでもいうべきものさ。是非、受け取ってほしい」

「……ありがとうございます。この羽根って、もしかしてアメルさんの?」

「ああ、自らの羽根で作った飾りを贈ることは、有翼族にとって最大の信頼の証なのさ」


 本当に、なぜ短時間で最大の信頼の証を渡されるまでに好感度を得たのか、サッパリ分からないが……せっかく渡してくれようとしているのを断るのも失礼なので、その羽根飾りを受け取る。


「そんなに凄いものを、ありがとうございます」

「ふっ、いや……ボクと盟友、ふたりの悠久の友情を思えば、些細な贈り物でしかないさ。生まれいずるよりはるか前の記憶を完全に取り戻したわけではないが、それでも君とボクの友情は揺るぎはしない」


 ……えっと、悠久っていうと、遠い過去から未来まで果てしなく続くって意味だったと思う。それに、生まれいずるよりはるか前とか、記憶を完全に取り戻したわけではないって言い回し……そして、アメルさんの中二病っぽい感じの言動、盟友っていう呼び名……。

 気のせいかな? これ、前世から親友だったとか、そんな感じの扱いになってないかな? 


なんというか……仮に俺に前世があるとしても、この世界で生まれてるわけではないと思うので、アメルさんの前世と知り合う機会など無さそうだ。

 とはいえ、そんな重箱の隅を突くような指摘をしたところで、意味はないだろう。むしろ、アメルさんがそれでいいなら、別にいいかなと思う。


「……なるほど、俺たちは前世でなにかを固く誓い合ったのかもしれませんね」

「っ!? 盟友っ……」


 滅茶苦茶嬉しそうな顔してる。目がキラッキラじゃないか……なんか「やっぱりそうだった」って感じの顔してる。

 これは失敗したかもしれない。先ほどまでの前世云々っぽい感じの言動に関しては、アメルさん自身も荒唐無稽な話と思っていた感じがする。


 なるほど、だから羽根飾りを出す前に不安げな表情を浮かべていたのか……。


 しかし、いま俺が前世を肯定するような発言をしたことで、俺もアメルさんと同じことを考えていた、やはりふたりは前世から縁があるのだと、そう確信した感じがする。

 ここでの正解は「アメルさんが言うなら、そうかもしれませんね」的な少し濁した返答だった可能性が高い。


 迂闊な発言により、ただでさえ高かったアメルさんの好感度はさらに爆増したみたいで、アメルさんは椅子を俺のすぐ隣、それこそ肩が触れ合うぐらいまで近く寄せて、ウキウキがまったく隠れていない表情で告げる。


「盟友、盟友! 時を越え、こうして巡り合えたのだ。もっといろいろなことを話そう、ボクはもっといまの盟友のことをたくさん知りたいんだ!」

「あ、はい……」


 テンションがはち切れているのか、表情は幸せMAXといった感じであり、なんか背後に千切れんばかりに尻尾を振る犬の幻影が見えた気さえした。

 完全に自業自得ではあるが、これはしばらく話してくれなさそうな感じだと、そう思いながら勢いよくいろいろな質問をしてくるアメルさんに言葉を返していった。





【活動報告に十三巻のキャララフ公開第一弾を掲載しています】


シリアス先輩「会話を間違えた結果が好感度の爆増? もうだれか、このフラグ王をなんとかしてくれ……」

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― 新着の感想 ―
確か求愛に自分の羽根を渡すとかあったような、梟だったかな。アメルさんは梟では無いと思うけど。
[良い点] 攻略完了ですねw
[良い点] やっぱり人界に4人しかいない爵位級の人だったかー これで上位の実力者とはだいたい知り合ったカイトさん……… リリアさんの胃の未来はどっちだ!! [気になる点] 1話から読み直してて疑問に…
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