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黒き翼①



 リリウッドさんを探しつつ、他に知り合いがいないかいろんなテーブルに視線を向ける。う~ん、界王配下の人が多く、見覚えのある顔はそこそこ居るのだが、名前を知っている人はほぼいないし、話したことが無い方が大半である。

 まぁ、今回のお茶会は基本的にハーモニックシンフォニーの打ち上げという面が強く、やはり中心となっているのは界王配下である。

 そして、仰々しい催しというわけでもないので、立場の高い人が呼ばれているというわけでもない。まぁ、六王とかに関しては、忙しくて参加できないという人もいるのだろうが……。まぁ、もちろんゼクスさんのように立場の高い人も招待されている。


 そんなことを考えていると、ふと変わった人が目についた。銀色のショートヘアの女性で、整った顔立ちで、背はそれほど高くないがスラッとした体形だからか佇まいにカッコよさがある。

 黒いレザージャケットにホットパンツという服装でこちらもパンクスタイルっぽくてカッコいいのだが……それよりなにより目を引くのは、女性の背に生えた黒い大きな翼だった。

 もしかして有翼族だろうか? 存在は知っていたけど、見るのは初めてだ……あとなんで、この人はお茶会の場で眉間に人差し指を当てた、ちょっとカッコいいポーズで直立しているんだろうか?


 そんなことを考えながら有翼族らしき女性をチラリと見ると、その瞬間女性もこちらを向き目と目が合ったかと思うと、なぜか女性は不敵な笑みを浮かべてこちらに近づいてきた。


「……出会いに運命を感じたことはあるかい?」

「はい?」

「時に人は衝撃を落雷に打たれたようだと例える。いまのボクの心境がまさにそれさ……瞳から感じたよ、君の心の躍動を」

「……」


 どうやら、かつて俺も患っていた病にかかっていらっしゃるみたいだ。よく見たら右手に包帯まで巻いてるじゃないか……結構な重症なのではなかろうか。

 なんとも言えない気持ちになっていると、女性はスッと包帯の巻かれた右手を出しだしながら言葉を続ける。


「この出会いに感謝を。ボクの名は『アメル』……またの名を『黒き疾風』、強き輝きの瞳を持つ者よ、君の名も教えてくれないか?」

「……えと、み、宮間快人です。よろしくお願いします」

「おっと!」

「え?」


 戸惑いつつも名乗って、握手をしようと手を伸ばすと……なぜか手を引かれた。


「すまない、迂闊だったよ。ボクの右手には強大な力が封印されていてね。君になにかあっては大変だ、握手は左手で行おう」

「……はい」


 やはり相当重症みたいだ。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ……あとなんか、背中がゾワゾワするというか、過去の己の黒歴史を思い出すようなむず痒さがある。

 そんな俺とは対照的に、アメルさんはなんというか満足げな表情を浮かべていた。あと喋り方は芝居がかっているが、身長は俺より15cmほど低く、155㎝前後ぐらいなので、なんか若干アンバランスさもある。


「運命に導かれて出会ったふたつの綺羅星。惹かれ合うのはもはや必然だろう。さぁ、お膳立てされた舞台でひと時の踊りに興じよう!」

「……えっと……」


 言い回しが変ですぐに理解が追い付かないが、手で指し示しているのは近くの空きテーブルということは、いまの言葉は『そこのテーブルで一緒にお茶して親睦を深めよう』ってこと……でいいのかな?

 言葉の意味を考えていて少し沈黙していると、その沈黙を乗り気でないと感じ取ったのか、アメルさんは急に不安そうな表情に変わる。


「……だ、駄目……かな?」

「……い、いえ、大丈夫です。じゃあ、少しお話でも」


 泣きそうな顔になっていたアメルさんを見て反射的に答えると、アメルさんはパァッと見ていて分かりやすいほど表情を明るくする。


「では、双星の宴と洒落こもう!」

「……はい」


 まぁ、一度了承した以上は仕方がないと割り切って、近くのテーブルに座ると、アメルさんはマジックボックスを取り出し……そこから『黒一色』のティーセットを取り出した。


「漆黒はいい。吸い込まれそうな深淵の如き闇だけが、ボクの心に安らぎを与えてくれる」

「……な、なるほど」

「もちろん、君の黒衣も素敵だよ」


 ……黒衣? あ、ああ、黒いパーカーのことか!? え? もしかして、アメルさんが俺に声をかけてきたのって同じ黒い服を着てたから?

 またも戸惑っていると、アメルさんは慣れた手つきで紅茶を淹れ……いや黒っ!? コーヒーかな? てか、黒いカップに黒いコーヒーって……。


「この美しき紅茶を君に捧げよう」

「……あ、ありがとうございます」


 ……紅茶なのかこれ!? え? マジで? こんな真っ黒な紅茶が存在するのか? ま、まぁ、異世界だし、黒い紅茶があっても不思議ではないか……。


「く、黒い紅茶なんて珍しいですね」

「残念なことに、偽りの色ではある。魔法によってひと時世界を欺き、黒き深淵へと姿を変えさせているのさ」

「……」


 つまり、魔法で色変えてるだけの普通の紅茶ってことか!? 

 と、とんでもないなこの人……キャラが、キャラが濃すぎる……この先の話に付いていける自信がまったく無いんだけど、誰か……助けて……。





【アメル】

有翼族の特殊個体かつ同族をまとめる長でもある。人族では四人しか存在しない爵位級並の力を持つ存在。中二病気味な性格であり、なんかよく分からないが快人を見てビビッと来たらしい。

『黒き疾風』の通り名を自称しているが『そんな通り名で呼ばれたことはない』。


シリアス先輩「……フラグの回収がはぇえよ」

???「なにがなんでも、リリアさんの胃にはダメージが入るみたいですね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 膝黒の書……(快人にクリティカルダメージ 快人は膝から崩れ落ちた▼ いつかのシロさんの疑問に答えたのかな?
[良い点] なんて濃ゆい人だ…
[一言] ついに現れし4人目の爵位級!
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