お茶会④
ジュティアさん、エリアルさん、ティルさんとの雑談を楽しんだあとは、他のところにも行くために席を立って移動することにした。
しかし、どうも先ほどのジュティアさんとの一件で注目を集めてしまったらしく、結構な頻度で話しかけられてお茶に誘われるので移動するのも大変である。
やんわりと誘いを断りつつ、どこか落ち着けるところはないものかと周囲を見ていると……なにやら、不自然に人の集まりが悪いというか、人が捌けている場所があった。
少し疑問に思いつつその場所向かって移動すると、その原因はすぐに理解することができた。そこにあるテーブルに居たのは、アイシスさんとイリスさん、そして白神祭で見たポラリスさんと……あとひとりは、たぶんシリウスさんという方だと思う。
アイシスさんが配下が増えたと嬉しそうに話していたので、ある程度は知っている。
しかし、なるほど……アイシスさんの死の魔力があるから、一定以上の力がない人は近づくことができないというわけか……。
そう考えていると、アイシスさんがこちらに気付き、パァッと明るい表情に変わって小さく手を振ってきた……相変わらず天使のような可愛らしさである。
「こんにちは、アイシスさん」
「……カイト……こんにちは……会えて……嬉しい」
俺と会えて本当に嬉しいと満面の笑みを浮かべるアイシスさんを見て、幸せな気持ちになりながら他の人にも……というか、イリスさんに挨拶をする。
他ふたりは初対面なので、まずは自己紹介になりそうだし、先に顔見知りからというわけだ。
「イリスさんも、こんにちは」
「うむ。あとで探そうと思っていたが、早い段階で会えたのは僥倖だ。話は聞いているだろうが、お前に新たにアイシス様の配下になった者を紹介しようかと思ってな」
「あっ、そうですね。話自体は聞いていましたが、こうして顔を合わせるのは初めでですしね」
俺も丁度自己紹介をと思っていたので、タイミングとしては丁度いい。
そう思うとほぼ同時に、アイシスさんが隣の席を示しながら口を開く。
「……カイト……ここに……カイトのために……空けてた」
「そうなんですか? ありがとうございます。じゃあ、失礼しますね」
なんか不自然にアイシスさんの隣に空席があると思ったら、どうやら俺が来たときのために用意してくれていたみたいだ。
お礼を言ってその席に座りつつ、ポラリスさんとシリウスさんに視線を向けると同時に、イリスさんが口を開く。
「まず、こちらが我のあとに配下となったポラリスだ」
「初めまして、宮間快人です。よろしくお願いします」
「ポラリスと申します。こちらこそ、よろしくお願いします」
俺が声をかけると、ポラリスさんは穏やかに微笑みながら軽く会釈をする。その仕草は上品で落ち着いた印象を受けるのだが……なぜか、感応魔法では凄まじい緊張と焦りの感情が伝わってきた。
あまりに表情と感情が違うので、思わず首を傾げてしまったほどだ。ただ、好意的な感情も伝わってくるので、悪い印象は持たれていないとおも……あれ? 思ったより、好意的な感情でかいような……初対面でこの規模って言うと、十魔の狂信組レベルなんだけど……気のせいかな?
「そしてこちらが、シリウスだ」
「シリウスと申します。お話はアイシス様やイリス殿からたびたび伺っておりました。以後お見知りおきを」
「あ、はい。宮間快人です。こちらこそ、よろしくお願いします」
……シリウスさんから伝わってくる感情はごく普通なもので、別に規模が大きかったりということはない。比較すると、やっぱりポラリスさんから伝わってくる感情がやたら大きい気がする。
「……あと……今日は来てないけど……最近また新しく……ラサルって子が……配下になってくれた」
「そうなんですか? 凄いですね。じゃあ、もう4人も配下が居るんですね。アイシスさんの城も、どんどん賑やかになりますね」
「……うん……凄く……嬉しい」
ラサルという人に関しては初めて聞いた。アイシスさんの性格上、俺と会った時にすでに配下になっていたら、絶対俺に報告してくれるはずなので……それこそ、本当にごく最近配下になったのではないかと思う。それこそ、数日中とかではないだろうか?
そんなことを考えつつ、相槌を打っていると、不意に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……ラサル? アイシス様、ご歓談の途中で割り込む無礼をお許しください」
「……あっ……ゼクス……久しぶり」
「ご無沙汰しております。ミヤマ殿も、お久しぶりです」
「こんにちは、ゼクスさん」
現れたのは豪華な衣装に身を包んだリッチ、クロの家族のひとりで死霊の大賢者と呼ばれる伯爵級最上位の魔族、ゼクスさんだった。
……ゼクスさんって、紅茶飲めるんだろうか? あぁ、でもバーベキューの時も普通に飲食してたっけ? 胴体はいったいどうなってるんだ?
そんなことを考えていると、ゼクスさんはアイシスさんに一礼したあとで再び口を開く。
「……先ほど、アイシス様が口にしたラサルというのは、もしやラサル・マルフェクという死霊術士ではありませんかな?」
「……うん……そうだけど……ゼクスの知り合い?」
「……ええ、知人ではありますが……驚きましたな。まさか、彼女が誰かの配下になるとは……いや、だからあの時……」
どうやら新しくアイシスさんの配下になったラサルさんという方は、ゼクスさんの知り合いのようで、ゼクスさんはかなり驚いた様子でなにかを呟いていた。
シリアス先輩「……まぁ、そりゃ数千年単位で引きこもってる知り合いが、突然配下になってたら、驚くよな」
???「……初手土下座を知ったらもっと驚きそうですがね」
シリアス先輩「そこは触れないでおいてやれよ……」




