お茶会③
注目を集めつつもジュティアさんをなんとかなだめることができた。俺が渡した紅茶の缶を嬉しそうに抱えるジュティアさんを微笑ましく思いつつ、紅茶を飲む。
とりあえず、周囲の視線は忘れることにしよう。『アイツが噂の……』みたいな空気が出てる気がするが、流石に七姫3人と話している状態で話しかけてきたりはしないみたいなので、このまま少し落ち着くまで三人と会話をしていよう。
「あっ、そういえば、お菓子も持って来たんですよ。うちの裏庭で採れたカカオで作ったチョコレートです」
「チョコレートさんですか!? ティル、チョコレートさん大好きですよ!」
「疑問……つまりは、カイトの家は裏庭にカカオの木があるの?」
エリアルさんの疑問はもっともというか、たしかに自分で言ってて裏庭で紅茶とカカオが採れる家ってなんだって思ったけど、まぁ、深くは考えないことにしよう。
マジックボックスから大き目の箱に入ったチョコレートのアソートを取り出す。箱も中のチョコも普通に高級チョコレート店とかに置いててもおかしくないレベルで、イルネスさんとネピュラの凄さと凝り性具合がよく伝わってくる。
「およ? 奇遇だねぇ、奇遇だねぇ、実はボクもチョコレートを持って来たんだよ。とっても、とっても、美味しいチョコレートだぜぃ」
「おぉ、なんか高級そうな感じですね。ひとつ頂いてもいいですか?」
「いいよ、いいよ、いっぱい食べてくれてオッケーだぜぃ。ボクの方も、カイトのチョコレートをひとつ……」
偶然にもジュティアさんもチョコレートを用意していたみたいで、黒い箱に入った、見るからに高級そうなチョコレートだった。
俺もテーブルの中央にチョコレートを置いて、ジュティアさんとひとつ交換するように互いのチョコをひとつ食べる。
そしてチョコレートを一口食べたジュティアさんは、時が止まったように硬直した。
「……ジュティア、どうしたですか?」
「駄目だこれ、駄目だこれ……ボクが持って来たやつより、ずっと、ずっと、美味しい。味がしっかり濃いはずなのに、全然後引かなくて紅茶の飲み味を邪魔しない。凄いよ、凄いよ、個性が強い筈のチョコレートが、ここまで紅茶と合うなんて……」
「そ、そんなに凄いですか? カイトクンさん、ティルもひとつ食べていいですか?」
「え、ええ、もちろん。ティルさんもエリアルさんもどうぞ、好きなように食べてください」
ジュティアさんの食い付きが凄い。たしかに、このチョコレートは紅茶にも凄く合う。不思議なもので、チョコレートとしての味はしっかりしてて、ジュティアさんの言う通り濃いはずなのに、紅茶の味を全然邪魔しない。
まぁ、ネピュラが作ったカカオだし、きっとなにかこちらも特別な作り方をしているのだろう。
「はわわ、凄いですよ!? 紅茶さんの時も思ったですけど、このチョコレートさんも、いままで食べたなかでいっちばん美味しいですよ!」
「美味……つまりは、とても美味しい。至高の一品……つまりは、私もティルと同じくいままで食べたなかでこのチョコレートが一番美味しいと思うよ」
「ありがとうございます。でも、ジュティアさんの持って来たチョコレートも、すごく美味しいですよ」
「う~ん、たしかに、たしかに、とっても美味しいんだけどさ、紅茶と一緒にって考えると、やっぱりカイトの持って来たチョコレートには敵わないね。こんなチョコレートがあるなんて、本当に、本当に、ビックリだぜぃ」
さすがネピュラが手塩にかけて作った紅茶とカカオ……三人とも大絶賛で、俺としても鼻が高い思いだ。いや、別に俺はこの紅茶にもカカオにも一切かかわってないが、それでもネピュラの作った品が褒められるのは嬉しい。
「カイトクンさん、カイトクンさん、よかったらティルが持って来たお菓子もどうぞ~ティルの畑で採れた果物で作ったです!」
「ドライフルーツですか、美味しそうですね。いただきます」
「はいです!」
ティルさんが差し出してくれたドライフルーツも大変すばらしい味で、美味しかった。
「私も用意……つまりは、私も用意してきた菓子があるよ。変わった逸品……つまりは、少し珍しいクッキー」
「ほんのりとした優しい甘さがすごくいいですね」
エリアルさんが用意してきたクッキーは、かなり薄く……パッと見た感じ、炭酸せんべいとかに似ている気がした。
優しい味で、食べるとなんだかホッとするような、おやつ時に食べるには最高の一品だ。
そのままそれぞれのお菓子の感想などを話しつつ、しばしの間三人との会話を楽しんだ。
シリアス先輩「ほのぼのしてる。シリアスは無いのか……無いよな…‥知ってる」
???「まぁ、シリアス先輩、そう落ち込まないでください。きっとそのうち、いいことありますよ。シリアスは無いですが……」
シリアス先輩「いま、未来のいいことが否定されたんだけど……」




