ハーモニックシンフォニー中編⑨
メギドさんは自分から相手に勝負を持ちかける際、必ず相手にも勝ち目のある条件で戦う。
ただしそれはあくまで『自分から勝負を持ちかける場合に限る』話であり、相手から勝負を挑まれた際や、今回のような大会に参加する場合だと話は変わってくる。
その場合には対戦相手への礼儀として全力で戦うというのがメギドさんの主義であり、つまるところソレが意味するのは……蹂躙である。
なんならワンパンで終わった。そりゃそうだ。メギドさんを前にして、歌いながら戦う余裕などあるはずもなく、対戦相手はワンパンで気を失い、そこから先はメギドさんのソロライブだった。
まさに勝負にならないというか、まぁ、分かり切っていたことではあるが圧倒的である。そして、メギドさんやっぱり歌うまいな……。
まぁ、メギドさんの圧勝劇はさておき、それ以外の勝負はなかなか見ごたえがあった。意外と歌いながら戦うというのは緊張感もあり、歌っている本人もアドレナリンが出るせいか歌に熱が籠っているように感じた。
特に疾走感のある曲が多く、それこそアクション映画の一シーンでも見ているかのような迫力で、最初の印象とは裏腹にかなり見ごたえがあった。
ただまぁ、優勝はメギドさんで決まりなので、決勝戦とかは盛り上がらないのは少し残念ではある。まぁ、明らかにメギドさんに対抗できるような参加者はいないので、致し方ない話である。
『一回戦最終戦、最後に入場は12番……経歴不明、種族不明、名前以外のあらゆるプロフィールが不明! 自称『謎の超絶美少女歌手』……コスモス!』
……居たわ、メギドさんに対抗できそうなやつ。というか、なにしてんだあの馬鹿……姿は変えてるけど、メギドさんも戦えばアリスだって気付くだろう。
まぁ、メギドさん的には嬉しいと思うけど、アリスがわざわざメギドさんを喜ばすために参加するとも考え辛い……となると……。
「……アリス、ちょっといい?」
「なんすか?」
「……お前、賭けてるな?」
「……じゃ、私はこれで……」
「ちょっと待てこら……」
やっぱりそうか! メギドさんが参加して、倍率が凄まじい偏りになるのを見越して、メギドさんと同じタイミングで参加したな。
ここで、アリスもといコスモスがメギドさんに勝って優勝すれば、それはすさまじい大番狂わせだ。完全に無名ということもあって、12番の人気はほぼ最下位……とてつもない倍率になりそうである。
本当になにやってるんだかと、呆れつつもちょっと面白くなってきたと思っている自分もいる。メギドさんとアリスの戦いとなると、勝敗が予想できない。
しかも、2分という短い時間の中で歌いながら……。
ちなみにこの会場には観客席への防壁と共に、俺がシロさんから貰った眼鏡に似た効果のある結界が貼られているので、超速の戦闘であっても、俺たちでもある程度は視認できるようになっている。
アリスことコスモスは、そのまま危なげなく勝利を収め、順調に勝ち上がり……そしてメギドさんとの対決を迎える。
『さぁ、3位決定戦も終わりいよいよ決勝戦! まずは、優勝候補筆頭9番、戦王メギド・アルゲテス・ボルグネス様! そして12番、経歴不明ながら確かな実力と歌唱力を兼ね備え、ここまで勝ち上がってきた謎の歌姫コスモス!』
入場したふたりは、会場の中央で睨み合う。メギドさんと立ち並ぶと体格差がえげつないが、それでもコスモスは不敵な笑みを浮かべたままだ。
「……まさかテメェが出てくるとはな。楽しくなりそうだぜ」
「単純な戦闘ならともかく、歌と戦いというテーマであれば十分に勝算はある……さぁ、楽しいひと時を過ごしましょう」
たぶんコスモスのキャラ付けなのだろうが、ミステリアスで不敵な感じの口調である。声も大人の女性っぽい感じで、凛とした美しさを感じる。
両者睨み合い、そして音楽のスタートと共に戦いが始まった。
その巨体からの圧倒的な声量で荒々しく歌いながら暴れるメギドさんに対し、流麗に舞うようにメギドさんの攻撃をかわしながら歌うコスモス……まさに剛と柔の戦いというべき凄まじさだ。
そしてそれだけではなく、力強いメギドさんの歌声とコスモスの儚げで美しい歌声が綺麗に噛み合い、美しいハーモニーとなって響き渡る。
まさに演舞といえる2分の戦いはあっという間に終わり、両者それぞれ最初の位置に戻って静かに結果を待つ。
やはり戦いの決着は着かず、歌は対極的ながらどちらも素晴らしかった……ただ、俺の見立てではややメギドさんが優勢ではないかと思った。
たしかにコスモスの歌声はメギドさんに勝るとも劣らなかったが、声量という面ではメギドさんが上回っており、メギドさんの歌声の方が大きく響いて聞こえたような気がした。
『今回は戦闘結果による加点は無く、五人の審査員がそれぞれ持ち点20点で審査します。結果は……99対96! 勝者は、9番! 戦王メギド・アルゲテス・ボルグネス様!!』
審査の結果はメギドさんは4人の審査員から満点、ひとりが19点、コスモスは満点ひとつと19点4つという結果で、僅かながらメギドさんが上回り優勝となった。
う~ん、素晴らしい戦いだった。ただまぁ、アリス的には残念な結果かな?
「……アリス、残念だったな」
「え? なにがっすか?」
「いや、結果が……うん? お前それ、なに持ってるの?」
「トップ3予想、9-12-7の賭け札っすけど?」
「……あっ、そうなんだ……」
てっきり自分が勝って大穴狙いかと思ったら、ちゃっかりメギドさん優勝パターンで賭けてたのか……さすがというか、なんというか、抜け目ないなコイツ。
マキナ「我が子たち、お待たせ! 沢山の質問ありがとう! 最初に言った通り、全部じゃなくて一部をピックアップして答えるね。それじゃあ、スタート!」
Qアリスはどれぐらい裕福?
マキナ「アリスはトリニィアにおける権利関係をほぼ掌握してるし、人界から魔界への移動の管理や、モロクを始めとする配下に経営させている商会とか収入の幅がものすごく多いから、かなりお金持ちだね。クロムエイナには及ばないけど、世界でも3指に入るレベルだと思うよ。じゃなきゃ、アレだけ圧倒的な配下を好条件で雇えてないしね。大量の配下を抱えれるだけの収入があるってことだね」
Qカトレアと正義の結婚関係
マキナ「これはまだ結婚式を挙げてない状態だね。愛しい我が子が戻ってきてから準備は進めてるけど、やっぱり仮にも王家に連なる者の結婚式だから準備に時間がかかってる感じだね。もう少し先のエピソードで結婚式関連の話があるんじゃないかな?」
Qマキナは我が子をほぼ放置しているのはなぜ?
マキナ「基本的に私はあんまりアレコレ干渉しないね。我が子はもちろん可愛いけど、我が子自身がいろいろ考えて発展したり滅んだりって姿も大好きだからね。基本的に管理端末である楽園に任せて、私は見守ってる感じだね。地球以外にもたくさん星や我が子はいるし、皆本当に可愛いよ! 異世界に関しても、愛しい我が子と巡り合ってなければ干渉するつもりもなかったし、実際にしてなかったからね。けど、愛しい我が子に関しては別だね! 愛しい我が子には母の全霊の愛を注ぐって決めてるから、いっぱい構うよ!! いまトリニィアにいる我が子たちに声をかけて回ったのも、愛しい我が子関連でトリニィアに楽園をひとつ常駐させることになったからだしね」
Qハプティの勇者パーティたちへの印象など
マキナ「これに関しては、特に演技とかじゃなくて素で気に入っている感じだね。実際、ハプティとしてではなく、アリスとしてもなんだかんだで勇者パーティのメンバーたちには優しい感じだしね」
Qトリニィアの男女比に関して
マキナ「これは本編でも少し触れられていたけど、シャローヴァナルが愛しい我が子をトリニィアに呼ぶための因子を集める過程で、いろいろ調整を加えた結果だね。文明の発展なんかにもいろいろ手は回していて、特に人界に関しては裏で相当微調整していたみたいだね」
Qエピローグを除外した上での最強
マキナ「これは、条件によって多少違うね。すべてを内包する能力が発動する条件下であれば、ネピュラが最強。そうじゃないなら、私ことマキナが純粋な戦闘力では最強だね。あと、合わせてアリスの実力に関しても解答するけど、普通に戦ったら100%私が勝つよ。ただ、アリスの強さは精神状態に大きな影響を受けるっていうか、ムラがあるからね。仮に私が愛しい我が子を害そうとして、アリスがソレを守るっていうシチュエーションなら、絶対に勝てるとは言い切れない……そういう凄さがアリスにはあるんだよ」
Qリトルエピローグとは?
マキナ「これは、愛しい我が子がシャローヴァナルに勝利したときに、シャローヴァナルだけじゃなく、物語の終わりも愛しい我が子にデレた結果だね。物語の終わりが愛しい我が子を守るためにコッソリ搭載したもので、行ってみれば対象が単体に限定された物語の終わりってところかな? 愛しい我が子が本当に危機に陥ったら、自動発動して相手を終わらせるよ……本当に、なんでもありだよ、全然自重しないよ物語の終わり……」
Q快人の恋人たちのデート日程の話し合いはあるのか?
マキナ「……いや、まぁ、クリスマスとかそういうイベントがあったとした場合、愛しい我が子の場合は『恋人の数だけその日が増える』からね。シャローヴァナルがそうするだろうしね。だから特にそういうのはないと思うよ」
Qアリスはなぜ母親の心具であるアルテミスを使わない?
マキナ「これは単純に、アリスの戦闘スタイルに弓があまり合ってないだけで、普通に使うことはできるよ。基本的にアリスは万能だけど主戦法は近接戦闘だしね。あとトリックジェスターのような場所の入れ替えとか特殊な能力でない限り、アリス自身の実力が高すぎてあまり使う意味が無かったりするのも原因だね」
マキナ「と、今回はこんな感じかな? また機会があったら質問を募集して回答するから、次の機会を楽しみにしてね!」




