閑話・新たな参加者
快人たちが次の場所に向かっている頃、ハーモニックシンフォニーが行われている会場の一角では、ラズリアとフュンフ、そしてグラトニーという組み合わせの三人がハーモニックシンフォニーを回っていた。
「楽しいですねぇ~次はどこに行きましょうか?」
「グラトニーはどこか希望はある?」
「いや、私はそもそもハーモニックシンフォニーにあまり参加したことがないので、よく分からない。ただ、今回この場に来たおかげでミヤマカイト様のお力になれているのは喜ばしい限りだ。誘ってもらえたこと、感謝している」
「あはは、感謝が独特だなぁ」
はしゃぐラズリアを微笑ましく見つめつつ、グラトニーに声をかけるフュンフ。ふたりは昔ちょっとした縁で知り合い、気が合い以降は仲良くしている。
グラトニー自身はあまりハーモニックシンフォニーには興味がなく、友人であるフュンフに誘われたから参加した程度だった。
ただ、敬愛する快人に会えて時空間魔法で協力できるのは喜ばしく、フュンフのおかげと感謝していた。
「カイトクンさんにも会いたいですね」
「そうだね。なんとなく会えそうな気もするけどね」
そんな風に話しながら歩いていると、不意に三人は転移魔法の気配を感じて立ち止まった。その直後三人の近くに黒い渦が現れた。
「……よっと、遅くなってごめんね」
「クロム様ぁ~! 待ってたですよ!!」
黒い渦から現れたクロムエイナを見て、ラズリアが嬉しそうに飛びつく。クロムエイナは優しげな表情でラズリアを受け止めつつ、フュンフとグラトニーにも視線を向ける。
「お疲れ様です、クロム様。会議は滞りなく?」
「うん。問題なく終わったよ。今日はもう予定もないし、ゆっくり回れそうだよ。グラトニーちゃんも、久しぶりだね」
「ご無沙汰しております」
実は今回クロムエイナもハーモニックシンフォニーには参加する予定だった。ただ、いくつか会議があったので、それが終わってからラズリアたちに合流することになっており、会議が終わったのでこうして会場にやってきたというわけだ。
「そういえば、クロム様。カイトクンさんも来てるみたいですよ~」
「カイトくんが? ふむ……あっ、そうだね。いま、ブロッサムちゃんの出し物のところに向かってるみたいだね」
「クロム様は、カイトの場所が分かるんですか? カイトはシャローヴァナル様の祝福で探知魔法をすべて無効化すると思っていましたが……」
「あぁ、カイトくんが付けてるネックレスは元々トーレ用に作ってたものを改良したものだからね。ボクにだけはあらゆる探知阻害を無効化して居場所が分かるようになってるから……」
クロムエイナが快人にプレゼントしたネックレスは、元々トーレ用に作っていたものである。トーレは戦闘能力が皆無でありつつも、とにかくフラッと居なくなってしまう悪癖がある。
なので、戦闘能力が無いトーレを守るための複数の防御術式、クロムエイナのみにしか分からないが、シャローヴァナルの力すら無効化して居場所を探知する機能などを搭載した特別製だ。
ただ、あくまで魔法具の一種なのでどうしても経年劣化はするため、快人と初遭遇した際にはたまたまトーレが使っているものを新しくしようと持ち歩いており、それを快人にプレゼントした。
その後、毎日快人の元へ遊びに行く際に、ちょくちょくと改良を加えて調整しているので、現在はトーレに渡しているものとは違って快人専用と言っていい性能に変更している。
ただ、居場所を探知する機能はそのまま残っているので、クロムエイナには快人がどこにいるかが分かるのだ。
「会いに行きますか?」
「う~ん、それもいいけど、いまからブロッサムちゃんの出し物の場所に向かうと、開始に間に合うかどうか微妙なところだし、止めとこっか。だけど、そのあとでティルちゃんのところに行くみたいだから、そこで会えるかもしれないね」
フュンフの問いかけに、クロムエイナは一瞬迷うような表情を浮かべたが、いまから向かっても慌ただしくなると感じ、快人たちに会いに行くのは後ほどにしようと答えた。
「お~ティルのところですか! ラズもティルにはまた会いたいですし、クロム様も来ましたから、もう一度行きましょう!」
ラズリアたちは、ハーモニックシンフォニーに来て一番初めにティルタニアの場所には行っている。ただ、ラズリアとしては仲のいいティルタニアの元へは何度でも行きたいみたいで、嬉しそうな表情を浮かべていた。
フュンフとグラトニーも特に反対ではないようで、軽く頷く。そのあとで、ふとフュンフが首を傾げながら告げた。
「……ところで、なぜ次にティルタニアの場所に行くって、分かったんですか?」
「…………勘、かな」
シリアス先輩「……ここで、メインヒロインだと? 最近出番が少なかったから、強引に出てきやがったな」
???「……いや、白神祭のあとで割とガッツリ出てたような……」




