ハーモニックシンフォニー中編②
エリアルさんへの挨拶が終わった後は、開始の時間が近くなったので会場に移動する。会場にはそれなりの数の人たちが集まっており、開始を待っている感じだった。
そして少しすると、エリアルさんの部下らしき人が中央の壇上に上がり、拡声魔法で言葉を発する。
『皆様、ようこそいらっしゃいました。天花姫エリアルによる出し物、まもなく開催の時間となります。これより説明を行います。これより皆様には、各々指定された場所に移動していただき、ダンスを楽しんでいただくようになります。ダンスはとても簡単なものですので、経験のない方もご安心ください』
やはりエインガナさんが言っていた通り、参加型の踊りみたいだ。内容は簡単なものという話だし、とりあえずはあまり踊りの経験がない俺も安心である。
『それではこれよりエリア分けを行います。これより皆様の前に色のついたカードが出現します。それぞれカードの色のエリアに移動してください。なお、エリア分けは完全にランダムで行われます』
そう説明があった直後、目の前が淡く光ると一枚のカードが出現したので、それを手に取る。赤いカードだ。
他の皆のカードも見てみると、結構ばらけている感じだ。
陽菜ちゃんとフレアさんが俺と同じ赤いカードだったので、三人で赤い床のエリアへ移動する。
『……皆様指定のエリアに移動されましたね。近くの人に手が当たらない程度の距離を取ってください。それではこれよりダンスの説明をします。色分けされた各エリアの中心にある台に、各エリアのダンスリーダーとなる界王配下が立ち、ダンスの実演も同時に行いますので参考にしてください。それでは、最初は……』
そうして、ダンスの説明が始まったが本当にかなり簡単な内容で、基本的には単純なステップを繰り返すだけといった感じだ。
たぶん子供でも見様見真似で簡単に覚えられるようにと、シンプルにしているのだろう。俺も特に苦戦することなく覚えることができた。
基本的にはその単純なステップのダンスを繰り返すだけなのだが、ひとつだけ指示があり、各エリアのダンスリーダーが停止の合図をしたらダンスを止め、再開の合図をしたら再びダンスを行うという形らしい。
とりあえずは、簡単なステップのダンスを踊ったり止めたりを繰り返す感じかな?
『それでは以上で説明を終了しまして、こちらの壇上ではエリアル様がダンスを行います。それでは皆様、ダンスをお楽しみください』
説明が終わり、界王配下の人が壇上を降り、エリアルさんが中央の壇上にのぼる。そして、少しするとノリのいい音楽が流れはじめ、エリアルさんが踊り始める。
そして、少し間を開けて俺たちの居るエリアのダンスリーダーが合図を出したので、俺たちも簡単なステップのダンスを開始する。
音楽に合わせ、簡単なステップを踏む。シンプルではあるが、かなりの人数で踊っていることもあり、迫力はかなりのものだ。
これがまた凄いもので、俺たちは本当に簡単なステップを繰り返しているだけなのだが、ダンスリーダーの方の停止と再開の指示に従うだけで、エリアルさんを中心とした大規模なダンスになっている。
俺たち参加者のダンスを、各エリアのダンスリーダーがまとめ、さらに各ダンスリーダーのダンスが中央で踊るエリアルさんのダンスに連動する。
ステップを繰り返すたび、どんどん周りとの息があっていくようで、踏みしめる足音が揃ってかなりの一体感と迫力を感じる。
本当に皆で踊っているという感じで、エリアルさんのダンスはかなり激しく複雑なのだが、それを各エリアのダンスが引き立てているようだった。
物凄い一体感を感じながらの大規模なダンスは、あっという間に終わりを迎えた。いや、会場に設置してある時計を確認してみると、結構な時間が経っているので夢中になって時間を忘れていたみたいだ。
体にはそれなりの疲労感と、なにより満足感があった。
「すっごく楽しかったですね! なんか、こう、皆の心がひとつになったみたいで!」
「うん。凄い一体感だった」
興奮した様子で話しかけてくる陽菜ちゃんに同意する。たしかに、なんというか『皆で凄いダンスを踊った』という感覚がとても強く、もの凄く充実した心境だった。
「……これは、相当練られているな。幼子や踊りの経験のないものでも、踊りの楽しさを感じられるような造りになっている」
「たしかに、凄かったですね。やってることは単純なはずなのに、エリアルさんたちが上手くまとめ上げてくれたおかげで、最高の気分ですよ」
フレアさんの言う通り、この出し物は本当に『踊りの楽しさを感じる』というものをコンセプトに作っている感じで、踊り終わった後もまた踊りたいとか、もっと踊っていたいとかそんな気持ちになれる。
なんというか、そう……公園でエリアルさんと踊った時のことを思い出した。
多くの人たちに踊りの楽しさを知ってもらいたいという……なんとも、エリアルさんらしい素敵な出し物だった。
シリアス先輩「えっと、これでジュティア、リーリエ、エリアルのところを回ったから半分ぐらいかな?」
???「先輩が余裕そうな顔してるんで、どこかで突発的に砂糖入れてくるかもしれませんね」
シリアス先輩「なんでだよ!? 意味のない嫌がらせはやめろ!!」




