ハーモニックシンフォニー⑨
思わぬところでフレアさんとエインガナさんのふたりに遭遇することになったが、今回はリリアさんの胃を痛める感じではなく、むしろ喜んでいる感じさえする。
やはり、四大魔竜に関してはファンということもあって、むしろ歓迎しているみたいだった。
まぁ、リリアさんたちへの挨拶はあとにするとして、まずはこの店での買い物を済ませることにしよう。特にエインガナさんが、アリスの店に興味津々といった感じだ。
「……素晴らしい。店主、リュートはありますか?」
「ありますよ。これっすね」
「これはっ、ジュピターシリーズの……まさか、実物を目にできるとは、これはいくらですか?」
「白金貨480枚ですね」
たっかっ!? 日本円で48億円!? いや、たしかに数億円の楽器とか聞いたことあるけど……金額が桁違いである。
ただ、明らかに楽器とかに詳しそうなエインガナさんが「実物を目にできるとは」と口にするってことは、桁外れに希少ということなんだろう。
「買います」
そして、即決で買った!? たぶんだけど、あのリュートもアリスが作ったんだろう。アリスにしてみれば、儲けはすさまじそうだ。
まぁ、希少価値とかもあるから、そうそう流通させてても駄目なんだろうけど……。
「あと、こちらのバイオリンも」
「はい、そちらは白金貨120枚ですね」
「では、これで」
あわせて白金貨600枚……俺もその規模の買い物は流石にしたことが無いというレベルだが、エインガナさんもさすがは六王幹部というだけあってお金持ちみたいだ。
高い買い物ではあるが、エインガナさんは凄く満足そうな表情だった。
「素晴らしい買い物ができました……しかし、店主……貴女いったい、何者ですか? これだけの品を手に入れられるなど、普通ではありえません」
「……ふっ、そう、私はただの美しい白鳥の着ぐるみを身に纏った超絶美少女店主ではありませ――」
「あっ、そいつ幻王です」
「――カイトさぁぁぁん!? なんで、バラすんすか! いま私が、最高にカッコいい前口上言ってから正体を明かそうと思ってたところなのに!!」
「長くなりそうだったしウザそうだから……」
「辛辣ぅっ!?」
というか、その気持ち悪い鳥の着ぐるみって、白鳥だったのか……白色ではあったが、正直アヒルかなにかだと思ってた。
「なんと、幻王様でしたか……これは、ご無礼を」
「戦友はさすがだな。魔力の質もまったく違う幻王様をやすやすと見破るとは……」
「いや、まぁ、魔力というか……こんな気持ち悪い着ぐるみは他に居ないので、分かりやすいですね」
「カイトさん、カイトさん、キモ可愛って知ってますか?」
「知ってるけど、俺の中でお前の着ぐるみはソレに該当しない」
フレアさんの言葉に、一瞬こんなに分かりやすいのにと思ったが、よく考えたらアリスが着ぐるみを着ていることを知らなければ分からないのかもしれない。
それに、幻王としてのアリスとしか会ったことが無いと、アリスのことを結構カリスマある王と勘違いしている可能性もある。
「……実物は頭いいのに馬鹿だけど」
「なんでしょう? なんかめっちゃ馬鹿にされてる気がします。というか、完全に馬鹿って言ってますし……」
まぁ、とりあえずアリスと長々と話しているわけにもいかないので、適当なところで切り上げて皆と合流することにした。
「そういえば、フレアさんとエインガナさんは、これからどこに行くんですか?」
「我らはこれから天花姫エリアルの出し物を見に行く予定だった……が、エインガナが楽器の販売を見たいと言ってな、直近の時間より少しずらしてこちらを見に来たわけだ」
「それは偶然ですね。実は俺たちも丁度エリアルさんの出し物を見に行こうとしたところなんですよ」
本当に偶然ではあるが、ふたりとは目的地が一緒だった。そんな話をしつつ、リリアさんたちの元に到達した。
シリアス先輩「これは合流して一緒に行く形かな?」




