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友好都市で⑦



 香織さんは俺の前に柚子シャーベットを出してくれたあと、なにやら真剣な表情を浮かべる。


「……快人くんって、本当にお金持ちなんだね。まさか転移魔法具まで持ってるなんて……土下座して靴でも舐めたら金貨の一枚ぐらいくれるんじゃ……」

「……香織さん、人としての尊厳を捨てないでくださいね」

「あ、あはは、冗談、冗談だよ……」


 感応魔法の印象だと、冗談半分本気半分といったところだったが……。


「まぁ、それに、別に私もお金に困ってたりするわけじゃないしね。なんだかんだで、結構繁盛してるんだよ?」

「そうなんですか?」

「うん。やっぱり、異世界の料理ってのは大きいね。観光客とかがよく立ち寄ってくれるよ」

「あぁ、なるほど、たしかにいろいろ珍しい料理が多いでしょうしね」


 特にここは友好都市ヒカリ、観光に来る人の多くは初代勇者や歴代の勇者役の出身地である異世界に興味があるだろうし、その世界の料理となれば食べたい人も多いだろう。

 もちろん他にも異世界の料理を取り扱う店もあるのだろうが、移住者である香織さんにとっては異世界の料理に関して他より圧倒的に有利だ。


「おかげで、結構忙しいけど楽しくやれてるよ。まぁ……忙しくて出会いがないのは、ちょっと、困りものだけど……」

「出会い?」

「い、いや、ほらさ、私ももう三十路が近くて……まぁ、いろいろ気にするというか、いい人と巡り合えてもいいんじゃないかなぁとか思ったりもするわけだよ」

「ということは俺とは少し離れてるんですかね? 正直、見た目の感じだと違っても2~3歳かなと思ってたので、ちょっと意外ですね」


 まぁ、よくよく考えてみれば勇者役が15歳~19歳の範囲で召喚されるとしたら、一番若い15歳で召喚されたとしても27歳ではあるが、香織さんは童顔なのでかなり若く見える。


「え? えへへ、そうかな? そんなに若く見えるかな?」

「ええ、なんなら俺より年下と言われても信じてしまうぐらいですよ」

「そっかぁ……そういうことサラッと言えちゃう子はカッコいいと思うな。なんだろう、この百戦錬磨な敵う気がしない気配……まさか、その年齢で相当の場数を……」


 場数、う~ん、どうなんだ? いやでも、恋人が9人いるって考えるとそうなのか? いや、百戦錬磨ってのは大きな誤解ではある。

 いまだにしょっちゅうアタフタしてるし……。


「ねね、快人くん? 私にいい出会いがないのはなんでだと思う?」

「う、う~ん……まず具体的に、どんな相手と出会いたいかのビジョンがあった方がいいんじゃないですか? 漠然といい出会い~では、実際にいい出会いがあったとしても気付かない気もしますね」

「な、なるほど……くっ、やっぱりなんか恋愛強者のオーラを感じるよ……モテるよこの子、絶対モテるよ……」


 なんでいつの間に恋バナに話題が移行したのだろうと考えつつ、香織さんの言葉に苦笑する。

 とりあえず、なんかいろいろ鬱憤……とは違うけど溜まってるものもあるんだろうし、しばらくは聞きに徹するのがいいかな?

 そう思いながら柚子シャーベットを一口食べる。揚げ物を食べたあとにこのスッキリとした味わいはたまらないものがあるなぁ。


「そうだね……う~ん、やっぱ相手は年下がいいね。私、なんというか年上ぶりたいところあるし……実際に年上ぶれるかどうかは別としてもね」

「ふむふむ」

「俺様系とかは苦手だし、穏やかで優しいタイプがいいな。他愛のない雑談をのんびりと続けれる感じの相手。なんていうか、まったりした感じかな?」

「そういう会話の雰囲気とかって結構大事ですよね」


 やっぱり結構話せることは多いみたいで、一度考え始めれば香織さんはポンポンと自分の考えをまとめていっており、俺はとりあえず微笑みながら同意と肯定の言葉を返しておく。


「悩みどころだけど、カッコイイ系のイケメンよりは、可愛い系のイケメンがいいかな? いや、流石にそこまでは高望みし過ぎなのかもしれないけど」

「まぁ、とりあえずいまは理想を考えてみましょうよ。実際に会う前から可能性を狭めることもないでしょうし」

「そうだよね。う~ん、あとはなんだろう……あわよくばお金持ち! とか?」

「あはは、目指せ玉の輿ですかね?」

「うんうん。あとやっぱり大事なのは、味覚の趣味が合うことだよね。私の料理を美味しいって食べてくれる相手がいいな」

「なるほど……」


 のんびりと雑談をしつつ、柚子シャーベットを食べていると……楽し気に話していた香織さんがピタッと動きを止め、少ししてこちらをジッと見てきた。


「どうしました?」

「……あれ? 待てよ……年下で……私が滑っても優しくフォロー入れてくれて……くだらない雑談にも嫌な顔せずに付き合ってくれて……優し気で可愛い系のイケメンで……たぶん滅茶苦茶お金持ち……なのに私の定食を美味しそうに食べてくれる……」

「あの、香織さん?」

「あっ、ごめんごめん、ちょっと考え込んじゃった……ところで、話は変わっちゃうんだけど、快人くんって年上は恋愛対象になる?」

「まぁ、普通になりますが?」


 なんなら、恋人の中でアニマ以外は全員年上である。アニマもブラックベアー時代をカウントするなら年上かもしれない。





シリアス先輩「フラグが建った……だと……いや、でも、すぐに行動に移したりはしなかった。焦りはあるとは言っても、そこまで暴走するタイプではないのか? い、いや、まだ分からない……油断するな私、安堵していたらやられるパターンかもしれない」

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― 新着の感想 ―
[一言] なんなら住んでる世界を誕生させた相手が恋愛対象ですしお寿司……
[良い点] 目の前に超優良物件がありますよー な状態ですねw
[一言] この展開えぇ……ってなった、後輩達から恋人になると思ってたから、
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