フィーアとのデート⑤
運ばれてきたハーブティは、透き通ったガラスのカップに入っており、見た目も非常にお洒落である。
そして、フィーア先生の言う通りリンゴっぽい香りもして、飲んでみるとほのかに甘くすっきりとした味わいがとてもよく、リラックスできるような感じだ。
「上品でリラックスできる味わいですね」
「ハーブクッキーも美味しいよ。はい、ミヤマくん、あ~ん」
「え?」
ごく自然な流れでクッキーを手に持ちこちらに差しだしてくるフィーア先生。急なことで戸惑い視線を周囲に動かす。
店内に客はそこそこいる。注目されてるとかではないが、ちょっと恥ずかしい気はする。
「え、え~と、あ、あ~ん」
「はいっ」
とはいえ、拒否するにはフィーア先生の笑顔が眩しすぎたので、結局俺は口を開けてフィーア先生の手からハーブクッキーをいただいた。
サクサクとした食感にハーブの清涼感が心地よい。と思ってると、今度はフィーア先生がこちらに催促するように口を開ける。
「あ~ん」
「……どうぞ」
「う~ん、美味しい!」
やはりフィーア先生は積極的というか、これをやろうと思ってからの行動力が凄い気がする。
「なんというか、楽しそうですね、フィーア先生」
「うん。楽しいよ。ミヤマくんと、恋人になってこうやって一緒にいられるのが凄く嬉しいね。もっと恋人らしいこととかいっぱいしたいよ」
「若干周りの目が気になったりしますが……」
「そう? 私はむしろ、周りに自慢したいぐらいだよ。いいでしょ、カッコいいでしょ、私の恋人なんだよ~ってね」
……どうしよう、フィーア先生が滅茶苦茶可愛い。年上で大人の女性っぽさもありつつ、こういった茶目っ気のあるところも見せてくれるし、なによりいつも以上に笑顔が眩しい。
ここまで好意全開で来られると、もちろん恥ずかしさもあるのだが……それ以上に嬉しく感じた。
「……フィーア先生、もう一つ食べます?」
「あっ、うん! ちょうだい」
「はい、どうぞ」
「あ~ん」
とりあえずいまは恥ずかしさを忘れて、可愛らしいフィーア先生の笑顔を堪能することにしよう。
カフェから出たあとは、フィーア先生の転移魔法で移動しつつスタンプラリーを行った。さすがに転移魔法で回るとあっという間であり、すぐにニ十ヶ所を回り終えることができた。
全てのスタンプが集まった台紙を持って、地図に記載されている主催となる商会の店に行くと……粗品と一緒に難関クイズの入った封筒を渡された。
解けたら商会に持ってきて正解を告げると、交換で超豪華景品が貰えるとのことだ。
ちなみに、粗品に関しても結構しっかりした造りのペンでそれなりの値段はしそうな感じだった。となると、豪華賞品にはかなり期待できるかもしれない。
商会の外に出て、フィーア先生と一緒に問題の書かれた紙を見て見るが……。
「……な、なんですかこれ? 数字がズラっと……暗号ってことでしょうか?」
「う、う~ん、でもどうやって解けばいいのかサッパリだよ。ヒントもまったくないし……」
封筒に入っていた紙には、どう見ても100桁以上ありそうな数字が記載されており、その他の情報は一切なかった。
これでは解くのは不可能だろうと思って、裏面を見ると……。
「あ、裏になにか書いてありますね。第一のヒントは、場所を示したものである?」
「それだけじゃ、なにも分からないよね。第二のヒントは……あっ、後日発表って書いてある」
裏面にはひとつだけヒントが書かれており、それ以上のヒントに関しては正解者が現れなければ一定期間ごとに発表されていくらしい。
ちなみに第二ヒントの発表日は明日である……。
「う~ん、俺は完全にお手上げです。またヒントが発表されたら挑戦しますか?」
「私もこういうのは苦手だね。う~ん、何度もここに来るのもアレだし、この感じじゃ追加で一つ二つヒントがあったところで解けそうにないから、今回は諦めようか……」
「そうですね。残念ですが……」
超難問というだけあって、本当にサッパリ分からず、フィーア先生と諦めようかと話したタイミングで、不意にアリスが姿を現して俺の手から紙を取る。
「どれどれ……ふむ、『天空城』っすね」
「「え?」」
アリスは紙を見てほんの一秒程度で、正解が天空城であると口にした。口ぶりからして答えを知っていたとかではなく、いま見て暗号を解いたのだろう。
「……アリスお前、これ分かるの?」
「数字が7桁ごとに微妙な隙間、7桁で区切るとして7桁の数字が20個、今回のスタンプラリーのスタンプの数と同じです。順に各スタンプ台が設置されていた場所の区間番号……住所で7桁の数字を割って、出てきた数字をすべて合計した数字に、シンフォニア王国の建国記念日をかけて、出てきた数字を世界座標の桁数で分割すると、三つの世界座標が出来上がります。それは全てシンフォニア王都周辺の世界座標で、地図上で三つの点から点を線で繋いだ中心にあるのが天空城です」
「……お前本当にどんな頭してるんだ……え? ほぼノーヒントで解いたの?」
「いちおう他にも480000通りぐらい、いろんなパターンで解読してみましたが、それっぽいのは無いのでやはり天空城が正解でしょうね。じゃ、私はこれで」
やっぱりアリスは頭がいいというか、頭の回転速度が尋常じゃない。こういうのを見ると、アイツの凄さを改めて実感する。
「……えっと、正解を教えてもらってしまいましたが……」
「シャルティア様がわざわざ答えを教えてくれるってことは、豪華賞品は私たちにとっていいものなのかもしれないよ?」
「あ~たしかにアリスなら、超豪華景品がなにか知ってても不思議じゃないですね。暗号はマジでいま解いたっぽいですけど……」
「シャルティア様にとっては大した問題じゃなかったんだろうね。さすがは、三界一の頭脳と言われるだけのことはあるよ」
とりあえず、フィーア先生の言う通りわざわざアリスが姿を現して正解を教えてくれたぐらいなので、景品は俺たちにとってなにか有益なものである可能性は高い。商会に戻って答えを告げることにしよう。
シリアス先輩「一つ疑問なんだけど、世界座標って個人が調べられるの?」
???「図書館とかに世界座標が書かれた本は置いてますし、計算の仕方さえ覚えれば地図を見て割り出すことも出来ますよ。転移魔法が得意な連中は大体世界座標の計算方法は頭に入れてますね」




