Mission⑨ 『関係を進展させろ!』
フィーア先生にしっかりと思いを伝えると、フィーア先生は凄く嬉しそうな表情を浮かべたあと、どこか躊躇うような表情に変わる。
感応魔法からはなにかに悩んでいるような感情が伝わってきた。
「ミヤマくん、嬉しい。凄く、嬉しいけど……けど、い、いいのかな? だって私――「関係ないです」――ぁっ!」
なにを言おうとしたかは大体わかったので、言葉を遮る形でフィーア先生の体を抱きしめた。
「過去がどうであれ、俺がいまのフィーア先生を好きだって気持ちが変わったりしませんよ」
「……そっか、ふふ、ミヤマくんならそう言ってくれるって思ってたけど、言ってもらえるとやっぱり嬉しいね。いいのかな、私に、私なんかにこんな幸せなことばかり起こって」
「いいに決まってるじゃないですか……フィーア先生は、幸せになっていいんですよ」
少し涙声で話しながら、そっとフィーア先生の手が俺の背に回される。
フィーア先生は、少し自分を卑下するところがあるので、その辺りに関してはしっかりと言っておく。
「ミヤマくんは本当に、何度も、何度も、私の心を救ってくれるね。本当に、ありがとう」
「いえ、むしろずいぶん待たせてしまってすみません」
「うんん、全然だよ。そんなの、嬉しさで全部吹っ飛んじゃったしね」
そう言って嬉しそうに、微笑んだフィーア先生の表情はとても晴れやかで、どうしようもなく魅力的に見えた。
「……まぁ、偉そうなこと言って、トーレさんに背中を押してもらったようなものですけどね」
「それを言うなら、私もだよ。トーレお姉ちゃんのメッセージカードには『カイトに対する自分の想いを見つめなおしてみよう』って書いてて、少しミヤマくんとの出会いとかを思い出してね。やっぱり好きだなぁって……それで、9の封筒には『怖がらずにカイトの気持ちを受け止めること』って書いてあった」
「たぶん、フィーア先生がいざとなると怖がっちゃうのもお見通しだったんでしょうね」
「あはは、だね。やっぱ、トーレお姉ちゃんには敵わないなぁ」
フィーア先生は、クロの件の時もそうだったが土壇場で怖がることがあるので、トーレさんはそれを分かった上で怖がるなというメッセージを書いたのだろう。
フィーア先生と互いに微笑み合い、一度体を離して向かい合う。
「えっと、まぁ、改めてこれからもよろしくお願いします」
「うん。こちらこそ……っと、そう言えば、トーレお姉ちゃんの最後の封筒を見なくちゃ」
「あっ、そうですね。俺の方もひと段落したらって書いてあったので……この上でなにかあるんでしょうかね?」
「う~ん。キスをすること! とか書かれてるんじゃないかな?」
「それはそれで、本当にありそうな気がしますね」
フィーア先生と想いが伝わり合って、ひと段落したので10と書かれた最後の封筒を取り出す。今回はひとりで見ろ等の指示はなかったので、フィーア先生と一緒に確認することにした。
特に示し合わせたわけではないが、互いに見えるように封筒を取り出し、ほぼ同時に中からメッセージカードを取り出すと、両方とも同じ内容が書かれていた。
『高級チョコレートを所望する!』
あまりにも力強い字で大きく描かれたそのメッセージを見て、俺たちはほぼ同時に噴き出した。
「これは、まさかの……お土産の要求でしたね」
「あはは、さすがトーレお姉ちゃん! けど困ったなぁ、コレは拒否できないよ」
「なんだかんだで思いっきりお膳立てしてもらっちゃいましたしね」
最後の封筒に書かれていたのは、仲を取り持ったことに対する報酬の要求だった。本当にさすがトーレさんというか、最後まで予想外の行動だ。
「……そうですね。じゃあ、まだだいぶ時間もありますし、どうでしょう? これから、デートの続きをして、その時にトーレさんに渡すチョコレートを買うってのは」
「いいね。大賛成だよ」
「そうと決まれば、せっかくですし、またシンフォニア王国の北区画にでも……」
そこまで言ったタイミングで、不意に少し服を引っ張られたので言葉を止めた。引っ張った相手は目の前にいるフィーア先生で、なんだろうと思いつつ首を傾げると……。
「ねぇ、ミヤマくん。ここでさ、私がミヤマくんに好きだって言った時のこと覚えてる?」
「え? ええ、もちろん覚えてますけど?」
「じゃあさ、その後のやりとりも、覚えてるって……期待していいかな?」
そう言ったあと、フィーア先生は俺の方に顔を向けて目を閉じた。
その姿を見て、俺はかつてのやり取りを思い出していた。不意打ち気味に頬にキスをされたあと、フィーア先生が言った『唇には、ちゃんと好きになってもらってから』という言葉。
フィーア先生が何を求めているかを察した俺は、フィーア先生の肩に手を置きながら微かに身を屈め……フィーア先生にキスをした。
シリアス先輩「うあぁぁぁぁぁぁ……ぐあぁぁぁぁぁ!? は、はぁ、はぁ……お、終わった……のか?」
???「はい。次回からデート後半ですね」
シリアス先輩「……(絶望」




