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Mission① 『指定の場所に向かえ!』



 よく晴れた日の昼下がり、俺はフィーア先生の診療所を尋ねてきていた。なんの目的かというと、ノアさん用の献血である。

 ちなみに今回のノアさんはいない。というのも、以前俺が一度元の世界に戻っていた2ヶ月……こちらでは1年8ヶ月ほどだが、ノアさんの体調は若干悪化していた。


 いや、悪化というと語弊があるが、俺が協力し始める前の血を飲むのが苦手な状態に戻っていたという感じだ。

 もっと極端に言うと、ノアさんは本当に俺の血の味が気に入ってるらしく、俺の血が混ざってない血に食欲が湧かないとのことだ。

 若干というか、結構依存気味な感じもするのでフィーア先生も割と頭悩ませているみたいだが、貧血は本当に劇的に解決しているとのことだ。

 まぁ、それで、その時みたいなことに備えて、ある程度俺の血をストックしておきたいと相談を受けた。血中の魔力は時間経過で抜けてしまうが、ノアさんは俺の血を混ぜさえすれば他の血でもそれなりに飲むのでそれように確保しておきたいらしい。

 献血程度の量で充分とのことなので、特に断る理由も無く了承してフィーア先生の診療所を尋ねてきた。


 来客用の魔法具に触れると、すぐにフィーア先生が出てきてくれたが……気のせいかな、若干疲れた顔をしている気がする。


「ミヤマくん、いらっしゃい。来てくれてありがとう」

「いえいえ、このぐらいは別にお安い御用ですけど……えっと、気のせいだったらすみません、なんか疲れた顔してません?」

「うん。まぁ……入ればわかるよ。とりあえず、追い返すのは諦めたところだから……」

「追い返す?」


 フィーア先生の言葉に首を傾げつつ診療所の中に入り、奥にあるプライベート用の空間に入ると……見覚えのある方がハーブティを飲んでいる姿が見えた。

 その人物はこちらに気付くと、一瞬驚いたような表情を浮かべたあとで明るく笑う。


「……おぉっ、カイトだ! こんなところで会うなんて、やっぱり運命では?」

「お断りします」

「……以前より格段に……早い返答……だとっ……」

「いや、というか、なにしてるんですかトーレさん」

「うん? 私はフィーアのところに遊びに来たんだよ~」

「……そうですか」


 フィーア先生が疲れた顔していた理由が分かった。たぶん本当にアポなしで突如やってきたんだろう。その上、例によって例の如くチェントさんとシエンさんがいない。


「……あっ、いや、違うよ。今回はチェントとシエンを連れてきてたよ」

「え? そうなんですか?」

「うん。ただなんか買い出しをしなくちゃいけないものがあるみたいで、トーレお姉ちゃんが完全に居座る感じになっちゃったから、とりあえずトーレお姉ちゃんはこっちで見とくから、買い出しに行ってきていいよ~って言って、ふたりは買い物に行ってるね」


 ちなみにトーレさんと知り合ったことに関しては、前にノアさんへの血の提供で訪れた際に話しているので、フィーア先生も知っている。


「それで、カイトはどうしてここに? フィーアとデートしに来たの?」

「違うよ、トーレお姉ちゃん。ほら、さっき言ったでしょ、他の患者さんの治療に協力してもらってるんだよ」

「ふむ……へぇ」

「うん? どうしたの?」

「ううん、なんでもない」


 フィーア先生の言葉を聞いたトーレさんはなにやら興味深そうな表情を浮かべて、フィーア先生と俺に一度ずつ視線を動かしたあとで再びハーブティを飲みはじめた。

 よく分からなかったが、とりあえず当初の目的と済ませてしまおうと、フィーア先生と共に設備のある部屋に移動して血の採取を行う。


 それが終わって戻るころには、チェントさんとシエンさんも帰ってきており、そのまま流れで五人でお茶をすることになり、なんだかんだでワイワイと楽しい時間を過ごした。










 診療所に行った日から数日経った時、トーレさんから不思議なハミングバードが届いた。というのも、日付がいくつか書かれており、その中で暇な日を教えて欲しいとのことだった。

 不思議に思いつつも、予定の空いてる日を返信すると……少し間が相手から、この日を空けておいて欲しいという旨のハミングバードが帰ってきたので了承して予定を空けた。


 一緒に遊ぼうとか遊びに来るとかそんな感じだろうか? いや、でも、トーレさんがそんな回りくどいことをするとも思えないし、そうならそうと直接言ってくるだろう。

 なんか変なことでも企んでるんじゃなかろうかと、若干の不安を感じていると指定の日の前日にトーレさんから……なんか『大量の封筒が届いた』。


 封筒にはそれぞれ番号が振られており、最初は必ず1の数字の封筒を開けるようにと付箋が付いていた。本当になにがしたいのか分からないと考えつつ、1の封筒を開けてみると、中にはチケットと地図……そしてメッセージカードが入っていた。


『ミッション!! 指定の場所に向かい、演劇を鑑賞せよ! ※指定の席に付いてから2の封筒を開けること』


 ……なんだこれ? 本当になんだこれ? えっと、つまり明日の予定を空けてる日に、演劇を見に行けってことか?

 場所はシンフォニア王都の北区画で、チケットの時間は……朝一の公演っぽい結構早い時間だ。


 う~ん、意図がよく分からない……トーレさんはいったいなにがしたいんだろうか?





シリアス先輩「新恋人編の開始で、感覚的に重要なことを察するトーレ、デートっぽい変な指令……あっ(察し)」

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― 新着の感想 ―
[一言] 1『リリア公爵の背を見ろ』 快人「リリアさん…お願いがあります」 紆余曲折 あー背中じゃなくて 2『ジークリンデの背をみろ』 3『ルナマリアの背をみろ』 [アホが見ーる豚のケーツー] 快人「…
[良い点] トーレさんGJすぎる
[一言] なんでシリアス先輩せぐ砂糖になってまうん? (^p^)
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