フェイトと旅行⑨
星空を見ながら雑談を楽しんだあとは、もうかなり遅い時間になっていたので寝ることになった。コテージはかなり広く、部屋数もそれなりにある。
少なくとも俺とフェイトさんふたりで使うには広すぎるぐらいだし、寝室も一部屋ずつあるし中のベッドなどもかなりの高級品でとても寝心地がよさそうである。
「へぇ、いい感じのベッドだね。感触もいいし、広さも十分だね」
「……」
おかしいな。たしか最初にそれぞれの部屋を決めたはずなんだけど、なぜフェイトさんがここに居るんだろう? それどころか、俺の部屋のベッドに俺より早くダイブしてるんだけど……。
「あの、フェイトさん?」
「うん?」
「部屋割り、決めましたよね?」
「決めたね」
「ここ、俺の部屋ですよ?」
「うん、もちろん知ってるけど?」
念のため部屋を間違えている可能性を考えて尋ねてみたが、なにを当然のことを言っているんだとでも言いたげな返事が返ってきた。
「……フェイトさん」
「うん?」
「結局ここになにをしに?」
「え? 一緒に寝ようよ。せっかくふたりっきりで遊びに来てるのに、別々の部屋で寝る意味なくない?」
「…………なるほど」
たぶんフェイトさんには一切邪な考えはなく、ごく普通に……それこそ一緒に昼寝するような感覚で言ってきているのだとは、容易に想像できた。
なんだろう、そういうただ恋人と一緒に居たいという純粋な思いでこられると、こちらとしても拒否は難しい。
まぁ、俺が変なことさえ考えなければ問題ないか……宙に浮かぶクッションで一緒に昼寝したこともあるし、フェイトさんは寝つきがいいのですぐに寝るだろう。
「そうですね。じゃあ、一緒に寝ますか」
「うんうん」
とりあえず一度部屋から出て寝巻に着替えてから戻ってくる。ベッドの広さは十分だし、ふたり寝ても窮屈ということはないだろう。
そんなことを考えつつフェイトさんがすでに寝転んでいるベッドに、俺も寝ころぶことにする……あ~思ったより近くにフェイトさんの顔があるし、なんかいい匂いがしてドキドキする。
「カイちゃん、カイちゃん、明日はなにしよっか?」
「とりあえず、起きたら朝食ですね。簡単なものだけ作って……それ終わったら散歩でもしますか、湖の方じゃなくて山側に……来たときにチラッと見た感じだと、花とか結構咲いてましたし」
「あ~いいね。楽しそう!」
なんかこうやって、ひとつの布団にふたりで潜り込んでいると、不思議とひとりの時よりも温もりを感じる気がした。
別にフェイトさんと密着しているとかではなく、ちゃんとふたりの間にスペースはあるのだが、それでもなんだか体温が伝わってきているかのように錯覚する温かさだ。
う~ん駄目だ。どうしても思考が変な方向に傾きそうになる。しかし、かといってフェイトさんとの会話の方に熱中し過ぎると、結果的にフェイトさんが眠る時間が遅くなる。
特にフェイトさんは睡眠が必須なわけでもないので、眠気というのもそこまで感じないんじゃないかと思う。寝ようと思えばなれるとかそんな感じかな? なので、会話を楽しんでいる限りは眠ったりしないだろう。
いっそ、このまま徹夜で話し続けるのも有りか? 俺が眠たいということを除けば、問題はないし結構いい案とも思える。
あるいは俺が先に眠ってしまうか……眠れるかなぁ? 単純に恋人と同じベッドで寝ているというだけでも意識してしまうし、いまもすでにいろいろ考えてしまって眠気なんてほとんどない。
「お~い、カイちゃんこっち向いて」
どうしたものかと、そんなことを考えているとフェイトさんに軽く指で肩を叩かれて、会話じゃなくて思考に集中し過ぎていたことに気が付いた。
「あっ、すみませ――「えいっ」――んん!?」
謝罪しつつ振り返った瞬間に見えたのは、紫の綺麗な瞳で、直後に唇に柔らかな感触がした。
すぐに不意打ちでキスをされたのだと気付いたが、それ以上思考は回らず、そのまま数秒キスを続けたのちに、フェイトさんが顔を離してようやく我に返る。
「フェ、フェイトさん!?」
「ねぇ、カイちゃん? 私と初めて会った日のこと覚えてる?」
「え? なんですか、急に……そりゃ、もちろん覚えてますけど」
キスの話題に触れるでもなく、関係なさそうな話を振ってきたフェイトさんに首を傾げる。フェイトさんの声はいつもより真剣というか、思わず息を飲んでしまいそうな、そんな感じだった。
俺が言葉を返すと、フェイトさんは軽く微笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「困ったなぁ。最初に会った時に思ってたのと全然違う感じになっちゃったなぁ……自分の運命って、分かんないもんだよね。ねぇ、カイちゃん。聞いてもいいかな?」
「な、なんですか?」
「最初に会った日には、『カイちゃんは逃げようとした』けどさ……もし仮にさ、『いま私があの日と同じことを言ったら』……カイちゃんは逃げずに受け止めてくれるのかな?」
「フェイトさん……」
「カイちゃん……大好きだよ」
その言葉と共に、フェイトさんの顔が再び近づいてくるのが見えた。
シリアス先輩「……」
???「え? なんすかこの砂糖の像? なんすか、シリアス先輩糖度が限界を超えると砂糖化するんすか? どんだけ面白い生態してるんですかこの人……」




