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ニアミス③



 取引先に向かって歩きつつ、茜は隣を歩く護衛兼補佐のフラウに声をかける。


「……前々から気にはなってたんやけど……この世界のメイドって、戦闘力が高い子が多すぎん? いや、全部が全部とは言わんけど、普通に騎士より強いのがゴロゴロおるイメージなんやけど」

「はぁ、会長、なにをおかしなことを言っているのですか」

「そ、そうよな。たまたまウチが見たことあるんがそんなんばっかやっただけで、普通は違――」

「メイドが騎士より強いなど、『当たり前』のことじゃないですか。そりゃ、騎士団長だとか隊長クラスとなれば話は別でしょうが、並の騎士に一流のメイドが後れを取ることはあり得ないです」

「えぇぇ、そ、そっち!?」


 茜の言葉に対して、フラウはどこか呆れた様子で一般常識を話すように語る。しかし、事実としてこの世界のメイドの戦闘力の平均値は、騎士より高いのである意味この世界では常識で間違いないのだ。

 異世界人である茜には受け入れがたい内容だとしても……。


「いいですか、会長。一流のメイドに必須とされるのは、献身的な心、卓越した技術……そして『圧倒的な戦闘力』です。そこら辺の騎士に後れを取るようなメイドは、まだ二流三流のレベルです。実際私も並の騎士より遥かに強いからこそ、会長の補佐兼護衛を務めているわけですし」

「いやいや、なんで戦闘力が必要やねん!? メイドの仕事のどこでその戦闘力を活用するんや!?」

「その三つのいずれかが欠けても、メイドオリンピアでは勝ち残ることはできません」

「……なぁ、その、前からアンタがたまに言うとるそれ……アンタの妄想の産物とかやのうて、マジで実在するん?」


 一流メイドについて語るフラウにツッコミを入れたあと、茜はメイドオリンピアについて尋ねてみる。

 四年に一度行われるメイドの祭典……メイドオリンピア。正直茜は、フラウから話を聞いた時は「なんかまたおかしなこと言うとるな」程度で聞き流していた。

 それもそうだろう、そんなバカげた大会が実在するなど思っていないのだから……しかし、いまのフラウの語るメイド像を聞く限り、もしや実在するのでは? とそう思い始めていた。


「もちろん実在しますよ。私も何度も参加しています……まぁ、私はメイドとしてはまだ若輩もいいところなので、三回戦より先に進んだことはありませんが」

「そうなん? ちょっと意外やわ、アンタはウチが知る中でも飛びぬけて有能やし、優勝しててもおかしないて思うたのに」

「高評価はありがたく思いますが、残念ながら私のメイド力は47000、まだ中堅にも届かぬ身です」

「……いや待て、なに言うてんの? メイド力?」

「メイド力とはメイドにとって必須となる心技体を兼ね備えたものが纏うメイドリックオーラを数値化したもので、このメイド力が30000以上無ければそもそもメイドオリンピアには出場できません。そしてメイド力が100000を越えたものをスーパーメイドと呼びますが、究極のメイドたるアイン様を除きスーパーメイドは世界に4人しか存在しない高き頂です。そもそもメイドリックオーラには種類があり……」

「……いや、もうええ、それ以上聞きとうない。頭がおかしくなりそうや……」


 あまりにもぶっ飛んだ内容の話に、茜は思わず頭を抱える。優秀で頼りにしていた補佐の思わぬメイドへの情熱に若干引いてもいた。

 しかし、彼女も商会の長として経験の多い存在だ。その手の話題には深く踏み込むべきではないと素早く割り切って精神を安定させ、そもそもの始まり、戦闘力についての話に戻る。


「……それで、そのスーパーメイドとやらはやっぱり戦闘力もスーパーなん?」

「そうですね。心技体の3メイドに関しては、ほぼ横並びの戦闘力ですが、もうひとりのバランスのスーパーメイドは、戦闘力という面では飛びぬけていると思います。ちなみに私が憧れているメイドでもありますね」

「ほ~ん」

「何回か前の大会の準決勝で、魔界の海で凶暴化したリヴァイアサンを討伐して料理を作るという競技があったのですが……」

「いや、そこサラッと流すなや!? メイドがやることちゃうぞ……ま、まぁ、いまさらか……話し続けてくれるか?」

「畏まりました。その際にバランスのスーパーメイドは、海岸から拳を振り一撃でリヴァイアサンを討伐しました。なおその際『海も割れました』」

「……バケモンやん」


 バランスのスーパーメイド、そう呼ばれているのは……アインにメイドであると勘違いされ、押しに弱い性格のため毎回メイドオリンピアに出場させられている草華姫カミリアだった。

 ちなみにそのリヴァイアサンを討伐した際には「10%じゃなくて5%で打つべきだった」と呟いていたとか……。


「ちなみにそのバランスのスーパーメイドは、界王配下幹部七姫のおひとりである草華姫カミリア様です」

「あっ、あぁ! なるほど、そっか、そういうことか!! 六王幹部やったら、そりゃそんぐらいできるわな。なんや、驚いて損したわ……つまり、他のスーパーメイドも同じように六王配下とか騎士とか兼任してるってことやろ? 他で必要やから、戦闘力も必然的に高く……」

「いえ、他の3メイドはメイド以外の職にはついていませんね。ついでに言うと人族2人と魔族1人という割合ですね」

「じゃあ、やっぱおかしいわ、ホンマなんやねんこの世界のメイド……怖いわぁ」

「もしよければ、次回の大会は会長も見に来ますか?」

「絶対に嫌や!! 確実に脳が汚染される未来しか見えん!!」


 もし仮にこの場に快人がいたなら、茜と快人ととても意気投合したことは間違いないだろう。主にメイドってなんかおかしいという関連の話で……。





【三雲茜】

58歳、過去の勇者役でありこの世界の移住を希望した存在。転移魔法に特異な才能があり、ノインの魔法と同じように、通常ではありえないほどの低燃費で転移魔法を使うことができるが、それ以外の魔法はからっきし。


三雲商会という移動商会を立ち上げ、世界各地を転移魔法で回りながら商売を行っている。立ち上げの際にいろいろ手を貸してもらった縁でクロムエイナとはそれなりに関わりがあり、六王祭にもその縁で招待された。

六王祭でライフの仮祝福を受けて現在は10代に若返っている。


関西弁(本人曰く関西弁ではなく漫才弁)で話す明るい性格の女性で、たこ焼きには並々ならぬ拘りがある。

なお、まだこの世界に移住してから他の異世界人には一度も遭遇しておらず、勇者祭等で遠目に見た程度。

紫のパーマではないにヒョウ柄の服に関西弁と狙った格好をしているのに、トリニィアの人にそういうネタは通じないためスルーされてちょっと寂しい。

若干意地になってるが、同郷の人と会ってツッコミ入れてもらえたらもうヒョウ柄は止めようと思っている。


なお胸部装甲はもともと薄い。

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― 新着の感想 ―
メイドさんの戦闘力の平均値(=アインさん含む)だしねw
[一言] メイドオリンピア編(ルナマリア編)待ってます
[一言] アインさんはクロノアさんをパンチで吹き飛ばせる可能性があるからなぁ まさか、そのヒョウ柄はヒョウが沢山書かれたTシャツではあるまいな?
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