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薔薇姫の来訪③



 快人の家の廊下を歩いていたイルネスの元に、ネピュラが飛んでくる。


「イルネスさん、主様に来客です」

「そのようですねぇ。飲み物の~ご用意でしょうかぁ?」

「はい。相手は主様がロズミエルさんと口にしていましたが、ご存知ですか?」

「七姫のおひとりなのでぇ、知ってはいますが~会ったことは無いのでぇ、好みまでは分かりませんねぇ。用意するのはぁ、無難な味のものが~よさそうですねぇ」


 イルネスも来客があったことは魔力で察知しており、現在も給湯室に向かっている途中だった。ネピュラと一緒に給湯室に向かいつつ、ふたりは会話を続ける。


「雰囲気からの推測ですが、主様にお礼に来たような印象でした」

「なるほど~それならぁ、お茶菓子はぁ、少し時間をずらしてお持ちした方が~よさそうですねぇ」

「そうですね。先方がなにかを持ってきている可能性もありますので、それが無難でしょうね。あとは花が好きそうな感じでした」

「場所は~テラス席ですかぁ?」


 会話としながら給湯室に入ると、イルネスは手慣れた様子で茶葉の入った缶を手に取り、湯の用意を始める。それをほぼ同時にネピュラはカップが並べてある棚の前に移動して、少し考えるような表情を浮かべる。


「はい。テラス席なので、いまの時間からだと少し経つと日の関係で影になりますし、明るめの色合いのカップがいいですね」

「そうですねぇ、今回はプライベートのお話のようですしぃ、ある程度は~遊びのあるデザインでもよさそうですねぇ」

「なら……この辺りですかね」

「さすが~いいものを選びますねぇ」


 ネピュラが用意したカップを見て、その場所や時間に合わせたセンスのいい選択を賞賛しつつ、イルネスはふと思い出したように別の棚を空けて小さな瓶を取り出す。


「せっかくですし、前に『ネピュラが作った砂糖』を~用意してみましょうかねぇ」

「あっ、いいですね。それも丁度花びらの形なので、楽しんでもらえそうです」


 仲良く楽しげに会話しつつも、あっという間に紅茶の用意を終え、カートを押して給湯室を出ていくイルネスをネピュラが手を振って見送った。









 ロズミエルさんを庭が一望できるテラス席に案内しながら、軽く言葉を交わす。というよりも、ロズミエルさんが少し楽しげな様子で話題を振ってきた。


「カイトくんの家の庭は凄いね。す、凄く腕のいい庭師さんが手入れしてるんだと思う。特に花壇の花は本当に素敵だったよ」

「超一流なのは間違いないと思います。お恥ずかしながら俺はあまり詳しくは無いんですけど、最近はロズミエルさんの応対をした精霊のネピュラっていう子が中心でやってるんですが、一緒に庭の管理をしてくれている人もネピュラの腕を絶賛していました」

「ほ、本当に凄いと思う。花の種類だけじゃなくて、同じ種類の花でも、一輪一輪微妙に手入れの仕方を変えてるような感じで、本当にそれぞれの花の魅力を十二分に引き出してるよ」


 ネピュラは精霊だけあって植物などの手入れは本当に凄いみたいで、イルネスさんも「とても勉強になる」と口にしていたほどだ。

 花好きなロズミエルさんも絶賛するレベルと考えると、本当に桁違いなのだろう。実際、ネピュラは手入れをしている花壇の花は、すごく生き生きとしているような気がする。


「たしかに凄く花が生き生きとしている感じはしますね。やっぱり、一輪一輪手入れをしているからなんですかね?」

「う、うん。花も人と一緒で、同じ種類の花でもそれそれ個性があるから、それに合わせて手入れをしてあげると、本当に元気で綺麗な姿を見せてくれるんだ」

「なるほど……自分の家にある花壇ながら、そこまでじっくり見たことがなくて……よかったら、どのあたりを見たらいいかとか教えてもらってもいいですか?」

「うん、わ、私でよかったら。まずは、えっと……あそこに咲いてる花たちは……」


 大好きな花の話題ということもあって饒舌なロズミエルさんは、ほんの少しではあるが表情を柔らかくして微笑みを浮かべていた。

 緊張はもちろんあるのだろうが、それでも俺の家は使用人もほぼいないし、人見知りなロズミエルさんにとっても少しは気が楽な場所と言えるかもしれない。

 そんなことを考えつつ、ロズミエルさんとテラス席に座ると、不意にロズミエルさんが小さな袋を取り出してきた。


「……あ、あの、カイトくん。そ、そのね、ク、クッキーを焼いてきてみたんだけど、よよ、よかったら…‥」

「え? わざわざ作ってくれたんですか、ありがとうございます!」

「そそ、その、私は普段食事はしないから、料理とかは、ああ、あんまり得意じゃなくて、か、形は少し変かもしれないけど……あ、味はリアに教えてもらって味見もしてもらったから、だだ、大丈夫だと思う」

「ありがとうございます、嬉しいです。いま紅茶を用意してもらってるので、せっかくですし紅茶と一緒に頂きますね」

「よ、喜んでもらえたなら、よかったぁ」


 ホッと胸を撫で下ろすロズミエルさんは、本当に見た目と実際に話してみた感じが一致しないというか……外見は綺麗系なのに性格は気弱で可愛らしい印象が強いので、結構ギャップがある。

 けどとりあえず、白神祭の時と比べると、安定して会話できているので本当によかった。





シリアス先輩「絶対者が作った砂糖? それはそれでヤバそうだけど、それ以上になんかロズミエルとの雰囲気が甘い感じなのが、私的には恐ろしい……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 絶対者と無償の献身……安心感半端ないって。
[一言] 砂糖とか、主人公がずっと作ってるじゃん。新しい砂糖とかいる?
[一言] なにをどうしたら砂糖を作ることに・・ カイトとイチャイチャしたんか?
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