手紙と旅行の計画
朝、リリアさんの屋敷の食堂で朝食を食べていると、手紙を持ったアニマが食堂に入ってきた。
俺も家が出来て手紙はリリアさんの屋敷ではなく俺の家の方に届くようになっており、その整理に関してはアニマが主に行ってくれている。
といっても以前ならともかく、いまはあちこちの貴族から茶会などへの招待状とかそんな手紙は届かなくなったので、俺宛てに来る手紙は個人的にやり取りしているクリスさんやノインさんといった知り合いから数通来る程度だ。
基本的にそういう定番の手紙は俺の部屋に置いてくれているはずなのだが、わざわざ手紙を持って来たということは……それ以外の場所からで、しかもわりと重要な手紙ということだろうか?
「ご主人様、お食事中申し訳ありません。至急確認していただきたい手紙が……」
「えっと、重要なものってことかな?」
「おそらくは……友好都市ヒカリの中央大聖堂からの手紙です」
「う、うん?」
アニマが差し出してきたのは、一目見て上質な紙とだと分かる綺麗な封筒で、なにか豪華な印で封がされている。
なんか見るからに凄そうな手紙に戸惑いつつ、一緒に食事をしていたリリアさんに視線を向ける。
「……その印は教主様のみが使えるものなので、教主様からの手紙でしょうね。先日、白神祭で遭遇した件に関するお手紙なのでは?」
「あ~なるほど……どれどれ」
リリアさんの説明で教主さんからの手紙であることが分かり、ある程度の疑問は解決した。おそらく、あの時は簡単な挨拶だけだったので、こうして改めて手紙を送ってきた感じだろう。
そう思いながら封を開けて手紙を読んでみるが……滅茶苦茶びっしり書いてあるし、ものすごく硬い文章でかなり難しい手紙だった。
「……う、う~ん、言い回しが難しすぎてよく分からない部分もあるんですが、要約すると……改めて挨拶をしたいので、都合が会う時にでも大聖堂に来てもらえないかって感じの手紙ですね」
「なるほど、教主様がシンフォニア王国の首都に来れば、それはそれで騒ぎになるでしょうし、それに対する配慮でしょうね」
たぶんリリアさんの予想は正解だろう。手紙には呼び立てるような形になって申し訳ないという内容が、滅茶苦茶な文字数で書かれていたので、相当苦渋の決断であることがうかがえた。
……いや、別に、こっちから訪ねることに関してはまったく問題ない。友好都市は勇者祭の時に転移魔法具に登録しているので簡単に行けるし、丁度勇者祭以外で行ってみたいと思っていたところだ。
とりあえず、手紙に返事を書いて日程を相談してからになるが、足を運んでみることにしよう。
教主さんからの手紙に返事を書き終えたあと、俺は本屋で購入した観光案内をのんびりと眺めていた。以前白神祭の時にフェイトさんと話した旅行について、ちょっと真面目に検討してみようと思ったからだ。
静かな場所でのんびり数泊と過ごす。六王幹部への挨拶やら白神祭やらで最近バタバタしてたし、俺個人としても少しのんびりした言う気持ちはある。
ただ、場所選びが結構難しい。フェイトさんの希望を考えると有名な観光地とかはNGだが、だからと言って本当になにもない場所でもつまらない。
イメージとしては、あまり人気があるような場所ではないが景色とかがよくて、のんびり散歩したりとかもしやすい場所。
いっそ、湖畔のコテージとかそんな場所があればよさそうだが……なかなか難しい。そもそもこういう雑誌に載っている観光地はそれなりに人気がある場所が多いだろうし、人気が無い場所を探すのは困難だ。
そう思いつつページをめくっていると、『超高級スポット特集』なるものが目についた。というのも、そこに前にジークさんといった観光地が乗っていたからだ。
幻の高級リゾートといった感じで紹介されており、改めて凄いところに行ったんだなぁと感慨にふけっていると……同じ特集に乗っている観光地が目についた。
綺麗な湖畔とコテージが丸々貸し切りで利用可能であり、人里離れた緑豊かな場所ながら管理は徹底していて魔物などの心配はない。
貸し切りのみでの利用となるため、非常に高価ではあるがそれでもゆったりとしたプライベートの時間を過ごせる。
以前いったリゾートとの違いは、あちらのようにいろいろな場所があるわけではなく、こちらはそう言ったものは一切なく、あくまでのんびりとした休暇を楽しむといった感じの、まさに探していた通りの場所だった。
……よそさうだけど、やっぱあのリゾートと同じで人気なのかな? とりあえず、受付の窓口になっている商会に空きがあるかどうかを確認する手紙だけ送ってみようかな。
ちょうど、教主さんに返事を書いたばかりで手紙を書く一式は出したままだし……駄目だったら他の場所を考えればいいわけだし、とりあえず手紙だけは出してみよう。
そう思って手紙を書いて送った二日後……『いつでも利用可能です』と返事が来た……『クリスさんから』。
あれ? と思って確認してみると、この観光地はアルクレシア帝国にあるみたいで、連絡をくれればすぐにその日程を空けると手紙には書いてあった。
……う、う~ん、ちょっと申し訳ない気もするが、せっかくだしフェイトさんの予定も聞いてみて都合が合うなら、お言葉に甘えさせてもらおうかなぁ……。
シリアス先輩「これクリス絶対にガッツポーズしてるだろ」
???「ハイドラ王国が観光地に箔つけて、出遅れたと思ってたところにカイトさんのほうから最高神連れての旅行の計画ですからね。そりゃ予約は取れますよ……意地でも空けますよ」




