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ツイてるみたいだ

 ひょんな事からモンスターレース場に来る事になり、アリスと共に入場料を払って中に入る。

 話を聞く限りでは地球にある競馬みたいな物なんだろうけど、細部は色々違うのかもしれない。


「それにしても、凄い人だな~」

「はふっ、もぐ……ふえ?」

「いや、何でも無い」


 中はとても賑わっており、円状の会場の客席には物凄い数の人達がいた。

 その光景に驚きながら話しかけてみたが、アリスは両手いっぱいに食べ物を持ってリスの様に頬張っている。

 ちなみに屋台で俺の金で買ったもの……臨時収入はどうした?


「と言うか、俺よくルール知らないんだけど」

「うあ? 簡単ですよ。まずレースに参加する魔物10匹が、あのコースをぐるりと顔見せの為に回るんですよ。その時にどれが勝つかを予想してチケットを買う。当たれば換金してもらえます」

「ふむ」


 アリスに促されてコースを見てみると、本当に様々な魔物が大型の犬みたいなものも居れば、ワニの様なのもいる。

 むぅ、こうしてみると速さは全然分からない……ワニとかどう考えても遅そうだけど、レースに出ると言う事はそれなりに速いんだろうか?


「そう言えば、勝負って言ってたけど……ルールは?」

「あ~そうですね。じゃあ、予算は1000Rまでで、賭け方は自由としましょう。今から10レースあるので、最終的に多く稼いだ方の勝ちで」

「分かった」


 1000R……日本円にして10万円ほど、ギャンブルはやった事が無いのでどの位が平均かは分からないが……一回で10万も使ってたら、確かに破産もしそうだ。

 一先ずそれで行く事にして、アリスと共にチケットを買う場所へ移動する。


 競馬についてはよく知らないが、三連単だとかそう言う言葉は聞いた事がある。

 ただ、このモンスターレースのチケットの買い方は、1着の予想か1着と2着の同時予想だけしか存在しないみたいだ。

 正直まだ全く分からないので、適当に勘で買う事にして7番の単勝を買う事にした。

 予算は1000Rで10レースなので100R分購入して、アリスと合流すると……アリスは俺のチケットを見て、ニヤニヤと腹の立つ笑みを浮かべる。


「カイトさんが買ったのは、ファニーラビットですか……ふふふ、素人考えですね」

「うん?」

「確かにファニーラビットは俊足で有名な魔物ですが、獲物を狙う時以外はまともに走らないんですよ。だから、ほら……人気も低いでしょ?」

「へぇ」


 アリスが指差した方向を見ると、木で出来た大きめの看板に手書きで人気順が書かれていた。

 俺の買ったファニーラビットは、下から三番目……よこの数字は倍率だろうか? 頭に約と付いているので、確定ではなさそうだが大まかな目安と言う事かな?


「ちなみに私は、一番人気のグラップウルフと二番人気のウインドジャガーをそれぞれ単勝で50Rずつ買いました。ふふふ、手堅く勝ちに行きますよ」

「素人相手におとなげない……」

「ははは、世の中勝者が全てですよ! 豪華なディナーはゲットしてみせます!」


 そもそも魔物の事についても良く知らない俺では勝負にならなさそうだが、アリスは楽しそうなのでまぁいいとするか……

 実際これでアリスが大勝ちでもしてくれれば、彼女の今後の生活は楽になるだろう……その場合は今以上に厳しく注意する必要がありそうだが……





















 アリスと共に適当な席に座ると、間もなくレースがスタートするみたいだった。

 ちなみにアリスはいつも通りのオペラマスクであり、普通ならかなり怪しく思うが……真っ赤な皮膚のオーガとかが普通に会場に居るので、全然問題なさそうだ。


『さあ、間もなくレーススタートです! 一番人気はグラップウルフ、二番人気はウインドジャガー、三番人気にブラックレオ!』

「うん? この声は?」

「拡声魔法の魔法具での実況っすね」

「成程」


 どうやらこの世界にも拡声器の様なものがあるらしく、レース展開を実況してくれるらしい。

 素人の俺にとって実況があると言うのはありがたいし、少し楽しみになって来た。


 そして参加する魔物達がスタート地点に並ぶ……俺が賭けたのは、あの2メートルくらいのウサギか。

 う~んそれにしても、やはり魔物と言うのは動物よりも大きいのが多く、こうして並ぶと迫力がある。

 ちなみにこのモンスターレースでは、魔物同士が戦う事もあり、それによって大番狂わせが起る事もあるらしい。


 そんな事を考えていると、ファンファーレの様な音が鳴り響き、魔物達の前にあった柵が消え、レースがスタートする。


『さあ、いよいよ始まりました! まず飛び出したのは……おおっと、コレは! ファニーラビット! ファニーラビットです!』

「なぁっ!?」


 スタートした集団の中から巨大なウサギが飛び出し、そのまま後続をぐんぐん引き離し始める。


『速い! ファニーラビット圧倒的な速さ! これはまさかの展開、滅多にやる気を出さないファニーラビットが疾走! コレはまさか100年に一度の本気か!?』

「え? ちょ、ちょっと、コレ……」


 どんどん後続との差を広げていくファニーラビットを見て、アリスが慌てた様な表情を浮かべる。

 てか、滅多にやる気を出さないとか、100年に一度の本気って……フェイトさんみたいなウサギだな。


『ファニーラビット圧倒的な速さです! ぐんぐん後続を引き離す!』

「そ、そんな……」

『そして今、他に半周以上の差を付けてゴール! 1着はファニーラビット! ファニーラビットです!!』

「えぇぇぇぇ!?」


 そして結局圧倒的なリードを持ったまま、ファニーラビットが勝利をした。

 まさか、当るとは……そしてアリスがあんぐりと大きく口を開けていた。自称美少女としてその顔はいかがなものか……


「び、びび、ビギナーズラックってやつですね……お、恐ろしいものです。これ、50倍位付きますよ……」

「50倍って……5000R!?」


 どうやらファニーラビットは本当に人気が無かったらしく、倍率は50倍にもなるらしい。

 これ、もう勝負決まったんじゃないの? まぁ、ビギナーズラックで間違いないだろうけど……


















「あははは! カイトさん、何買ってるんすか!? タイラントタートルって、鈍亀じゃないですか!」

「……いや、よく分からないからまた適当に」

「しかも、500Rって、あはは、ドブに捨てるようなもんじゃないですか~」


 2レース目、俺の買ったチケットを見て、アリスは大笑いしていた。

 また適当に買ったのだが、どうも俺が買ったタイラントタートルの人気は、ぶっちぎりの最下位らしい。

 う~ん、てっきりレースに参加する位だから早いのかと思ったが、どうやら本当に遅いみたいだ。


「どうやら、さっきのはビギナーズラックで間違い無かったみたいですね。ここから大逆転劇と行きましょう」

「はいはい」


 にしても、さっきから本当にテンション高いなアリス。

 慌てたりドヤ顔になったり、見ていて面白い。


 そして再び席に移動し、第2レースが幕を開けた……直後に信じられない展開になった。

 タイラントタートル……巨大な亀の姿をした魔物は、レースが始まるや否や真横を走っていた馬型の魔物の首に噛みつき、地面に引き倒した。


『おおっと! タイラントタートルが強襲! グレイブホースがその牙の餌食となった!!』


 成程、魔物同士の戦いがあると言ったのはこう言う事か……

 しかし、状況は更に信じられないものに移り変わる。

 このレースには血の気の多い魔物が集まっているのか、グレイブホースが倒されたのを見て他の魔物達もタイラントタートルの方を向き、襲いかかり始めた。


『これは、乱闘が始まったぞ!?』

「あ、あわわ……不味い、これ、不味いっすよ……」

「不味い?」


 いきなり始まった魔物達の戦いに、周囲の観客が沸き立ち大きな歓声が上がるが、何故かアリスは青い表情で慌てている。

 その様子が気になって尋ねてみると、アリスは青ざめた顔のままこちらを向く。


「だって、タイラントタートル、足は物凄く遅いですけど……戦闘力は……」

『タイラントタートル強いっ!? 他の魔物達をなぎ倒し、悠然とコースを進み始めた! これは、大番狂わせだあぁぁぁ!!』

「あわわわ……」


 実況の声を聞いてコースを見ると、文字通りなぎ倒された魔物達が倒れる中で、タイラントタートルがゆっくりした足取りでコースを進んでいた。

 文字通り独走状態であり、そのままタイラントタートルはゴールしてしまう。


「……そんな……嘘……」


 真っ白に燃え尽きた様に項垂れているアリス……あれ? また当った?

 

 タイラントタートルの勝利は凄まじい倍率となり、換金に行くと……他の通貨より一回り大きな白金色の硬貨が渡された。

 これ、もしかして白金貨? ってことは……100000R!? 200倍!?

 1000万円って……こんな簡単に手に入れてしまって良いんだろうか? 何と言うか、明らかに身の丈に合わないので、嬉しいと言うより委縮してしまう。

 使い道……う~ん。普段お世話になってる相手に何かお礼でも買おうかな?





















「あの……カイトさん」

「うん?」

「……また、当てたんすよね?」

「驚いた事に……」

「化け物ですか……貴方……」


 現在4レースが終了し、信じられない事に俺は現在4連勝である。

 何と言うか、今日はやたらツイてる気がする。ちなみにアリスは全敗である。

 所持金も物凄く増えてるし……何かとんでもない事になってきてる気がする。


 ただアリスにはまだ逆転の目が存在するのか、唖然とはしているが諦めた様子は無い。


「……まだ、ここからですよ……」

「うん?」

「次がメインレース! ここで一気に取り返しますよ!!」

「……そ、そうか……」


 どうやら次が一番大きなレースらしく、賭ける金額も跳ね上がるらしい。

 ただ、何だろう……どうしても、アリスが当てる未来が見えない……


 拝啓、母さん、父さん――モンスターレースに参加してみたんだがビギナーズラックなのか知らないが、何と言うか今日はやたら――ツイてるみたいだ。


















アリスフルボッコ……いたいけない? 幼女(142cm)が虐められている。

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