白神祭夜③
花火を見終わると、神界の天候は再び青空に戻り、白神祭のイベントはすべて終了となる……あっ、いちおうまだ閉会式? 終了式? のようなものがあるので皆と合流してそちらを見ることになる。
神域には合計で2時間ぐらいいて、いまは夜の8時……空が青空なので分かりにくいが、ここから各地へ帰還することを考えると終了にはいいぐらいの時間だろう。
いちおう終了式後も出店などは今日いっぱいはやっているみたいだ。ただ中層の店などはお土産を買う人が集中してかなり混雑しそうな気はする。
逆に神界特有のものではなく通常の出店が中心の下層は少し空きそうだし、帰りがてらになにか軽く買って食べてもいいかもしれない。
そんなことを考えつつ中層の広場で皆と合流する。クロのネックレスの探知魔法のおかげで特に迷うこともなく、すぐに合流できた。
いまは最高神を代表してクロノアさんが話をしているところみたいだ。この後に六王や人界の王から一言貰って、終了という流れになるらしい。
それにしてもいろいろあったはずなのに、気付けばあっという間に終わってしまったような気もする。それだけ楽しかったということだろう。
今後も勇者祭の都市を除き白神祭は開催されるとのことなので、次回以降も参加が楽しみである。
「……ところでルナさん」
「なんでしょう?」
「なんか、リリアさん疲れてません?」
「あぁ、割と神族に話しかけられることが多かったんですよ。ほら、お嬢様は最高神様の本祝福を受けているわけですから、一言挨拶をと思う神族は多かったみたいです。それで、お嬢様はあの性格なのでかなり委縮して、疲れてしまったという感じですかね」
「……なるほど」
まぁ、考えてみればリリアさんだって相当に凄い人で、結構な有名人だと思うし、話しかけられても不思議じゃないと思う。
ただ、そうなると疑問がひとつ……。
「リリアさんの疲れ方を見る限り、そこそこの数の神族が来たんでしょうけど……なんで急に?」
「大地神様と遭遇した際に、スカイ様が少し話していましたが、最高神様からの指示でミヤマ様にあまり手間を取らせないよう挨拶などは控えるように通達されていたみたいです。ですが……それはあくまでミヤマ様に対してという命なので、お嬢様は対象外というわけでして」
「それは、なんというか……」
「あくまで私の予想ではありますが、ミヤマ様の存在が大きすぎて、最高神様方もお嬢様に関しては失念していたのでしょう。それなりの数の神族の挨拶終わった頃に時の女神さまがいらっしゃって場を収めてくださったので……」
なるほど、シロさんの祝福を受けている俺の印象が強すぎて、俺に関してはしっかり対策を講じたが……リリアさんに関してはうっかり忘れてしまっていたというわけか。
たしかに、リリアさん本人すらVIP扱いの際に「なんで?」と最高神の本祝福を受けた立場であることの影響を忘れていた感じだったし……たぶんクロノアさんは途中で気付いて慌てて場を収めに出てきてくれたんだろう。
「……これもある意味、俺のせいなんですかね?」
「判断が難しいところですが、ミヤマ様が一種の防波堤になっていたのは間違いないでしょうね。まぁ、気にする必要はありませんよ。お嬢様は貴族ですから、コネクション作りも仕事の一環です。今後神界が人界や魔界との関わりを強めるなら、遅かれ早かれでしょう」
また俺がリリアさんに迷惑をかけてしまったかとそう思ったが、ルナさんはまったく気にする必要はないと告げてきた。
「そもそも単に上級神が多くて気疲れしているだけで、今後を考えた上でお嬢様には特しかありませんしね。神界と強いコネを持てるわけですから……まぁ、すでに強すぎる発言力が更に強まったことには胃を痛めてそうですが、そんなのはいまさらもいまさらなので、ミヤマ様が気にする必要はまったくありませんよ」
「……ルナさんって、こういう時には意外と優しいですよね」
「不思議ですね。どちらかというと誉め言葉のはずなのに、微妙に貶されている気がしますね」
ルナさんはかなり他者の感情の機微に鋭く、こういう時には結構フォローを入れてくれたりする。今回も俺が気にしないように、当たり前のような口調でフォローしてくれたり、気の利く部分は多い。
実際のところかなり気遣い上手な方だと思うし、なんだかんだでいろいろ感謝してる……まぁ、本人に行っても否定するだろうし、なんなら誤魔化して逃げようとするだろうけど……そういうところも、少しアリスに似てる気がする。
「そういえば、ユズキ様がスカイ様の祝福を受けていましたよ」
「え? そうなんですか? たしかに陽菜ちゃんはスカイさんにかなり懐いていましたね」
「そう考えると、大地神様の祝福を受けたクスノキ様、スカイ様の祝福を受けたユズキ様……なかなか凄いことになっていますね。上級神様の祝福を受けられるのは、羨ましくもありますね」
「……どこかに頼んでみましょうか?」
「胃薬を愛用するのは御免なので、遠慮しておきます」
……なんともな返答ではあるが……リリアさんの前例がある以上、言い返し辛い。
シリアス先輩「……おっ、コレはもしかして恋人シロ編は終了ということか!!」
???「物凄く普通に復活しましたね。まぁ、それはそれとして……なに言ってんすか、シャローヴァナル様編なんか始まってもいないでしょ?」
シリアス先輩「え? いや、だって……デート……」
???「順番通りに行ってるんですから、アリスちゃん編のあとはフェイトさん編があるはずでしょ?」
シリアス先輩「……あ、あったじゃん……」
???「個別タイトルじゃなかったでしょ?」
シリアス先輩「……あっ(察し」




