白神祭夕方⑤
【第二回人気投票の結果発表を活動報告に掲載しました】
移動途中に遭遇したのは、上級神のひとりであり少し前に四択クイズの会場で見た大地神さんだった。俺に挨拶に来たとのことだが……なぜ急に?
俺と同じことを疑問に思ったのか、スカイさんは少し不思議そうな表情で口を開いた。
「カイトさんに挨拶に? なぜこのタイミングで? いえ、時間があったというのは分かりますが、最高神様方からカイトさんにあまり接触して迷惑をかけないようにと命がありましたよね?」
「ええ、なので、本当に簡単に挨拶だけして持ち場に戻ります。生命神様と天空神がどちらも顔見知りなのに、私だけ挨拶を済ませていないというのも少し気になったので、生命神様に許可を貰ってきました」
「なるほど、そういうことですか……」
そういえば、大地神さんはスカイさんと共にライフさんの直属というか、側近みたいなポジションらしい。たしかにソレで上司と同僚がだけ挨拶済みで、自分はいつ挨拶ができるか分からない状態というのも微妙な気分になりそうだ。
「えっと、初めまして、宮間快人です」
「初めまして、生命神様の補佐を務めております。『大地神ガイア』と申します。記憶の片隅にでも名前を置いていただけたら幸いです」
軽い挨拶ぐらいはまったく問題ないので、俺の方から自己紹介をすると大地神……ガイアさんは上品な所作で頭を下げて挨拶をしてきた。
全体的に清楚で上品な雰囲気で、なんとなく大人っぽい気がする。雰囲気的にはライフさんに似てる気がする。
……ライフさんみたいに、ところどころ黒い部分があったりするかどうかまでは分からないが……パッと見た第一印象では良い人っぽい感じだ。
「……では、挨拶は終わりましたので私はこれで失礼します」
ガイアさんは本当に軽い挨拶のためだけに来たみたいで、簡単な自己紹介が終わると、俺にもう一度頭を下げてこの場から去っていこうと歩き出して、なにかに気付いた様子で不意に足を止めた。
そして近くにいた葵ちゃんに視線を向け、優し気に微笑んだ。
「……失礼、貴女の名もお伺いしてもいいでしょうか?」
「え? 私、ですか? 楠葵です」
「貴女は大地に親和性が高いですね。土属性の魔法にかなり強い適性があるのではないでしょうか?」
戸惑う葵ちゃんにガイアさんは、葵ちゃんの魔法適正についてを尋ねた。葵ちゃんはたしかに、土属性の魔法に強い適性がある。しかも、異世界人特有の特殊な適性みたいな感じだ。
俺も他の魔法はサッパリだが、感応魔法に関してのみは相当のレベルだという話だし、葵ちゃんも土属性の魔法に関する適性は本当に飛びぬけて高いんじゃないかと思う。
なにせ、それこそ一年の練習でかなり高レベルな魔法も使えるようになっていたので、桁外れの特性と言っていいと思う。
「は、はい。土属性の魔法は得意で……いろいろと勉強していて」
「そうですか、とても素晴らしいことです。貴女は大地に愛されていると言っていいでしょう。これほどの適性を持った子に巡り合えたのはとても嬉しく思いますね。できればゆっくりと話をしたいところですが、いまは白神祭の最中……足を止めさせてしまうわけにはいきませんね」
「そ、そうですね。私もいろいろお話してみたかったですが……」
どうもガイアさんは一目見て葵ちゃんのことを気に入ったみたいだ。葵ちゃんの方も、得意魔法に近しい系統の上級神であるガイアさんとの話はためになると思うし、勉強熱心な葵ちゃんとしては是非話を聞きたいところだろう。
ただ、ガイアさんの言う通りいまは白神祭の最中であり、ガイアさんの方にもいろいろ仕事があるだろうし、ここで話すのは難しい。
かといって神界……それも上級神が住む中層以上には、普通はそうそう立ち入ることはできないので、日を改めてというのも難しいのかもしれない。
残念そうな表情を浮かべる葵ちゃんを見て、ガイアさんは少し考えるような表情を浮かべ……少しして優しい笑みを浮かべた。
「アオイさんといいましたね?」
「あ、はい」
「……貴女に『大地の祝福』を」
「ッ!?」
ガイアさんが一言告げて手をかざすと、葵ちゃんの体が淡い光に包まれる。
「略式ではありますが、私は貴女に興味を持ちました。もしよろしければ、また日を改めて遊びに来てください。私の略式の祝福があれば、神界の中層にも立ち入ることができます」
「あ、ありがとうございます!」
「貴女とゆっくり話ができる日を楽しみにしています。それでは、私はこれで」
恐縮しつつも嬉しそうな葵ちゃんを見て微笑んだあと、上品な動きでお辞儀をしてガイアさんは去っていった。
今回の件は偶然ではあったが、なんだか葵ちゃんにとってとても大きな躍進の切っ掛けになるような、そんな気がした。
シリアス先輩「ふむ、この感じだとやっぱり陽菜はスカイの祝福を受ける感じなのかな?」
???「ヒナさんはガッツリスカイさんに懐いてますし、精神的な相性がいいっぽいので可能性は高いですね。ガイアさんはかなり知的な方なので知識欲が旺盛なアオイさんにとってはいい話し相手になるでしょう」




