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何があったんだろう?

 何だかんだで一日滞在する事になったフェイトさんは、ごくごく当たり前の様に俺の部屋に移動し、浮かぶクッションからベットに移動してごろごろしている。


「あ~幸せ、ずっとこうしてたいよ~」

「ダラダラし過ぎでしょう……」

「だって、明日は真面目に働かなくちゃいけないんだし、今の内に羽を伸ばしとかないとね~」

「明日……やっぱりシロさんに言われると、それが最優先になるんですか?」


 正直まだ出会って少ししか経ってないが、フェイトさんがどんな方かはある程度把握している。

 失礼だとは思うが、ちょっと上司に叱られた位で仕事をする様な方とは思えない。

 しかし今の口振りから察するに、フェイトさんにとって明日真面目に働く事は決定事項みたいで、やはりそれは相手がシロさんだからだろうかと思って尋ねると、フェイトさんは寝転がったまま顔だけを上げて口を開く。


「そうだよ。私達にとってシャローヴァナル様は絶対。シャローヴァナル様の言葉は全てに優先される……もし、シャローヴァナル様の言葉に従わず、失望でもされたら……私達は、存在意義その物を失う」

「……」

「シャローヴァナル様は至高にして絶対の存在。もしシャローヴァナル様が私に一生働けって言ったら、私は感情も欲望も捨てて、命尽きるまで働き続ける……まっ、そう言う事だよ」


 フェイトさんは真面目な顔で、一切の迷いなく告げてくる。

 神族にとって、シロさんは絶対の存在……言葉としては知ってはいたが、実際にこうして目の当たりにすると圧倒されてしまう。

 フェイトさんは物凄く真面目な顔をしていたが、すぐにへにゃとベットに倒れ込む。


「ま~あれだよ。ぶっちゃけ私は、シャローヴァナル様に仕えてさえいれば良いから……最高神なんて辞めても良いんだけどねぇ~」

「……はぁ……」

「だから、カイちゃん、養って!」

「また、そんな……」


 どうやら真面目なのはシロさんに対してだけで、最高神と言う地位に拘りは一切無いらしい。

 と言うか本人の弁通り、シロさんに言われない限りは働きたくないみたいだ。


「いや、カイちゃん素質あると思うよ! カイちゃんに養ってもらえれば、凄く楽できそうだし……って、待てよ……」

「うん?」


 相変わらずな調子で、養ってくれと堂々と言ってくるフェイトさんに呆れていると、フェイトさんは途中で何やら真剣な表情で考え込む。


「……カイちゃんに養ってもらう位仲良くなれば……シャローヴァナル様も味方になってくれるって事だよね……それ、もう、無敵だよね……ずっとだらだらしてられる……」

「……あの、フェイトさん?」

「でも時空神の目をかいくぐって親睦深めるのは、難しいし、時間もかかる……既成事実さえ作っちゃえば……よし! カイちゃん! 『合体』しよう!」

「はぁっ!?」


 どうも大変危険な結論に達してしまった様で、フェイトさんは半開きだった目をまるで獲物を狙う獣の様に変えてこちらを見てくる。

 え? ちょっと、まって、この状況……不味くないか?


「私、神だから赤ちゃんとかは作れないけど……それは些細な問題だよね! 関係持っちゃえばこっちのもんだ! きっとカイちゃんは私を見捨てない!! いっぱい甘やかしてくれる!!」

「ちょ、ちょっと、フェイトさん!? お、落ち着いて!」

「……落ち着いてるよ……凄くクールだよ……決めた! 絶対、カイちゃんに養ってもらう!」

「目が血走ってるんですけど!?」


 恐ろしい笑みを浮かべ、それよりもっと恐ろしい事を呟きながら、ジリジリとこちらに近づいてくるフェイトさん。

 流石に不味いと思って、逃げようと扉の方を向くと……鍵がかかる音が聞こえ、近付いて触れてみても、その鍵はピクリとも動かない。


「ふふふ、甘いよ、カイちゃん……この一対一の状況で、最高神である私から逃げられるわけがないよ」

「ちょ、ちょっと……」

「さあ、カイちゃん! ぶっちゃけ私も初めてだけど……楽しいことしよ!!」


 流石腐っても最高神だけあって、ただの人間である俺が逃げられる様な相手では無いみたいだ。

 ゆっくりと恐ろしい笑みを浮かべながら近づいてくるフェイトさんを見て、俺が逃げられない事を悟った瞬間……横から伸びて来た手が、フェイトさんの顔をわしづかみにした。


「へ? あれ? 『冥王』?」

「……」

「え? クロ?」


 いつの間にか現れていたクロは、無言でフェイトさんの顔を掴み、軽々と片手で持ちあげる。

 そして……ミシミシと大変嫌な音が聞こえてきた。


「ぎゃあぁぁぁぁ!? 痛いっ!? 痛いぃぃぃ!? やめて、頭潰れる! 潰れちゃう!?」

「……」

「ぎにゃあぁぁぁ!? 弾けるうぅぅ!? 熟れた果実みたいに破裂しちゃううぅぅぅぅ!?」

「……」


 それは紛れもない……アイアンクローであった。

 フェイトさんって、最高神だよね? つまるところ、防御力とかも常識じゃ考えられない位高い筈だよね……それが死にそうな叫び声あげてるんだけど、一体どんな力で握ってるんだ!?

 後クロがずっと無言なんだけど……もしかして、滅茶苦茶怒ってる?


 クロは無言のままでフェイトさんにアイアンクローをかけていたが、少しするとその横に黒い渦の様なものが現れ始める。

 その直後クロが手を離し、フェイトさんが重力に従って落下――する途中で弾丸の様な速度で吹っ飛び、黒い渦の中に入っていった。


 え? 今何したの? クロ……平手を振り抜いたみたいな形になってるんだけど、ビンタ? ビンタしたの?

 ……フェイトさん、物凄い速度で吹っ飛んでいったんだけど……クロの平手って、ミサイルか何か?


 フェイトさんが黒い渦に消えた後、クロは完全に座った目でチラリとこちらを見て呟く。


「……ちょっと、躾けてくる」

「……ア、ハイ」


 そう言った後でクロが黒い渦の中に入ると、渦は初めから存在しなかった様に消えて無くなる。

 何だろう……なんか、クロ、かつて無い程怒ってたような……


























「……ずびまぜんでした……もう、カイちゃんの意思を無視して、変な事しようとしません……」

「あ、はい。お願いします」


 黒い渦が消えて30分ほど経ち、ボロ雑巾の様になったフェイトさんがクロに摘まれて戻って来た。

 そしてそこから即座に土下座の体勢になり、現在半泣きで俺に謝罪してきていた。

 よっぽど恐ろしい目にあったんだろう……もう、本当に色々風前の灯みたいに見える。


「全くもう! フェイトちゃんは、本当に油断も隙もないね……今度、カイトくんの了承得ずにあんな事したら……『すり潰す』よ?」

「ひぃぃぃ!? 怖っ!? え? ちょ、ちょっと……『慈愛の冥王』って通り名、どこ行ったの!? オーガみたいな顔になってるんだけど!?」

「……うん?」

「はい! 申し訳ありません! もう二度としません!!」


 まだ怒りが収まっていない様子のクロが、軽口を叩こうとしたフェイトさんを一睨すると、フェイトさんは生まれたての子羊みたいに震えて謝罪する。


 拝啓、母さん、父さん――フェイトさんは本当に欲望に忠実な方で、その暴走っぷリに危うく飲み込まれるところだった。それはそれとして、ここまで怯えるなんて……本当に一体、あの黒い渦の中で――何があったんだろう?















クロさん激おこ


備考:フェイトの物理防御力……ステータス風にすると7000000くらい。

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