表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1016/2412

白神祭昼⑩



 マグナウェルさんに軽く断りを入れたあと、俺は後ろを振り向きつつ声をかける。


「……それで、なにしてるの?」

「いや、別におかしなことしてるわけじゃねぇっすよ。単に、装備を新調しようと思って……」


 俺の呼びかけに応じてアリスが姿を現し、俺とマグナウェルさんの会話に入ってくる。アリスの様子を見る限り、本当に変なことをしていたり悪ふざけをしているわけではなさそうだ。

 悪ふざけとかをする時は、たぶんあえてバレバレな感じでとぼけた反応をすると思うし、ごく普通に返答する場合はほぼそういう変な行動はないと思っていい。

 ついでにイリスさんの言う通り、深刻なことは隠す癖があるアリスが素直に答えてくれる感じということは、何らかの問題が発生してたりとかそういうこともなさそうだ。


「装備の新調? お主が使っているナイフのことか?」

「ああ、いえ、ナイフは最近新調したんですよ。これですね、結構気に入ってるんすよ」

「……これはっ、また、凄まじいのぅ。目の前にあるはずなのに素材の見当がつかんし、なんというかナイフ自体から凄みのようなものも感じる。相当な逸品じゃな」

「さすが、マグナウェルさんはいい目をしてますね。ええ、少なくともこの世界に現存する武器の中では至高の一振りと言っていいと思いますよ」


 ……う~ん、やっぱりなんとなく、あの短剣に関して話すときは嬉しそうなんだよな。マグナウェルさんに短剣を褒められて、少し上機嫌になってる感じがする。


「っと、話を戻しますが、新調するのは服の方ですね。こっちは私が作ったもので、これもかなりの性能なんですが……いい加減長く使ってますし、武器も新調したのでついでに新しく作り直そうと思って素材を集めてたんですよ」

「つまり、マグナウェルさんの竜結晶やメギドさんの角は、その素材に使うってこと?」

「ええ、どうせ作るなら凄いの作ろうと思いまして、六王全員から素材を貰ってますね。それ全部合わせて作ろうかなぁって……」


 なんかサラッととんでもないこと言ったなコイツ。他の六王からも似た感じで素材を集めてるって……。


「ふむ、なるほどな。お主なら上手い具合にやるのじゃろうが……『あの剣』のようなことにならぬように注意せよ」

「いや、『あのおもちゃ』が酷いことになったのは、私のせいというよりはメギドさんやアイシスさんが面白がって滅茶苦茶したからでしょ……」

「あの剣?」


 納得したように頷いたあと、なにかを思い出した感じで微妙な表情を浮かべたマグナウェルさんと、同様になんとも言えない呆れたような表情を浮かべたアリス……ふたりが話すあの剣とやらがなんのことか分からずに首を傾げていると、アリスが苦笑を浮かべながら説明してくれた。


「だいぶ昔に、私たち六王でダンジョン……という名の腕試し施設を作ったんですよ。全部で六層、各階にクロさんが作った魔導人形を私たちが調整したものを置きました。まぁ当時の『私たちの劣化コピー』みたいなのを作って配置した感じですね」

「サラッと言ってるけどとんでもないんじゃ……」

「まぁ、伯爵級最上位よりはもうちょっと強いぐらいの魔導人形ですね。まぁ、それだけの性能を維持するには専用の結界でガチガチに囲んだ空間じゃないと難しいので、ダンジョンの外には出せませんがね。あとさすがにクロさんの強さを再現はできなかったので、最終階層にはクロさんの魔導人形とアインさんの魔導人形をセットでおいて難易度調整してます」


 かなり昔とはいえ六王の劣化コピー……一種のゴーレムのようなもので思考能力は無いにしても、それは相当に強力だと思う。


「……あれ? でもそれが、剣とどうつながるんですか?」

「ああ、それはな、せっかく造ったのだからとそのダンジョンは鍛錬に利用できるようにした。一度死ねば蘇生後に自動的に入り口に戻される仕組みにしてな。いまだ一層すら突破した者はおらんが、戦王配下を中心に人気のある訓練場となっておる」

「んで、その時にせっかくだから最終階層にお宝的なものでも置こうって話になって……『六王剣』ってのを作ったんですよ。私が作った剣に六王皆で魔力やら術式やらをギリギリまで刻んだ結果、振るたびにランダムで極大魔法が放たれる剣……おもちゃが出来上がったわけです」

「いや、おもちゃって……」


 聞くだけでとてつもない剣、まさに隠しダンジョンの奥に眠る最強の武器って感じなんだけど……。


「おもちゃなんすよ。振るたびにランダムで極大魔法って、つまりは振ったら自分ごと周囲数キロ消し飛ばすような魔法がランダムで出るってことですからね。周り巻き込むとかの話じゃないですし、なによりも……」

「なによりも?」

「劣化とはいえ、私たちのコピーを倒して最下層まで辿り着けて剣を手に入れられるってことは、そのひとは確実に公爵級レベルの実力者ですよ? 極大魔法なんざ自分で使えますよ。剣に付与できるレベルの抑えられた極大魔法なんて、火力の足しにもならないです。周りにとって迷惑なだけです」

「……あぁ、なるほど、そりゃそうだ」


 たしかにそんな超絶難易度で、なおかつ一度死ねば入り口に戻されるというシステムまであるダンジョンを突破できる人に、そんな剣は必要ないかもしれない。





~アリスちゃんが集めた素材~


・マグナウェルの竜結晶

・メギドの角

・世界樹の花

・大邪神のコアに死の魔力を込めたもの

・クロムエイナの霧状の魔力

・アインの魔力糸(※二万年前にアリスにしてやられたのが悔しかったのか、その後猛練習したため魔力糸の扱いは魔界一レベル)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 『六王ダンジョン踏破者にはカイトからキスしてもらえるらしい』噂 アリス「クロさんもアイシスも並ぶんじゃないっすよ!パンドラ、ハウス!」
[気になる点] 何というか、伏線、フラグだらけの回だなぁ 六王に渡された素材に対する対価〜残り5人も貰ったもので一悶着… アリス新装備の素材〜世界樹の花しか聖要素がない…大邪神とかヤバそう 六王ダン…
[良い点] 最後はカイちゃんの愛情をあげよう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ