白神祭昼⑨
【第二回人気投票決勝ブロック&あとがき部門が開始されました。詳しくは活動報告を見てください】
2021/12/24~2021/12/31までが投票期間です
アリスとの取引で特殊な分体を手に入れたというマグナウェルさんに対し、俺は思い浮かんだ疑問をそのまま尋ねてみた。
「そのアリスとの取引って、俺が聞いたりしてもいいものですか?」
「構わんぞ……というか、奴がなにをする気なのかワシも知らんが、取引に関してはワシも少々驚いた。ことの始まりは数日前じゃったな……シャルティアがワシの元を訪れて『心臓をくれ』と言ってきた」
「え? し、心臓?」
「うむ、正確にはその心臓の中にある『竜結晶』が目的じゃろうな」
ふむ、なにやら聞き覚えのない単語ではあるが、マグナウェルさんが驚いたと言うってことは、かなり希少なものという認識でよさそうな気がする。
「その、竜結晶というのはどういうものなんですか?」
「竜種は心臓で血液と共に全身に魔力を巡らせることで精進な肉体を得ているのじゃが、膨大な年月を経てその巡った魔力が少しずつ集まり小さな結晶となる。それが竜結晶じゃが、見たことがあるものはほとんどおらんじゃろうな。竜結晶はそれこそ一万年以上の時を生きた超古代真竜の心臓ぐらいでないと存在しておらん」
「それだけ、結晶ができるまでに膨大な年月がかかるってことですね……けど、心臓の中に結晶とかできて大丈夫なんですか?」
「まったく問題ない。というより、本当に小さい結晶じゃからな。100mを越える超大型種の竜結晶でも1㎝あれば大きい方じゃな。シャルティアがわざわざワシに取引を持ち掛けてきたということは、それなりの大きさのものが必要なのじゃろうな。ワシは体躯も年齢も竜種一、となれば必然的に竜結晶も世界一の大きさのものがとれるじゃろう」
う~ん、とんでもないものというのは十分に伝わった。いったいアリスはそんなものを使ってなにをするつもりなのだろうか?
「竜結晶は超高密度の魔力結晶、迂闊に扱えば非常に危険じゃが……まぁ、シャルティアであれば問題なくつかえるじゃろうて」
「マグナウェルさん的には譲って問題なかったんですか……いや、心臓を譲るってのも変な話ですが」
「問題ない。というよりは、この取引はワシに不利益は一切ない。別に心臓なぞ簡単に再生ができる上、竜結晶は再びできるまで長い年月かかかるじゃろうが……そもそも竜結晶はワシら竜種にとってはなんの恩恵もない。高密度の魔力結晶じゃから迂闊に処分するのも危険で、別に体に悪影響があるわけでもないので放置しているだけなのでな」
当たり前といえば当たり前だが、マグナウェルさんも基本的に不死身である。そして竜結晶も別にマグナウェルさんにとっては必要ではないもの……確かに、それと特殊な分体を交換ならマグナウェルさんにとってはいい話なのだろう。
「実際この分体は素晴らしい。本体と連動しており、魔力量なども本体とほぼ同等。まだ動かすのに慣れておらんで、実際の戦闘力は本体の七割程度じゃろうが、それでも凄まじい。本体と同時に動かすのは出力の問題で少々大変じゃが、別に不自由はない。しかも、驚くべきことにこの分体は本体が成長すれば、それに応じて分体も成長するとのことだ……う~ん、ワシをもってしてもどういった技術で作られているのかサッパリ分からんが、素晴らしいことは間違いない」
「なるほど、たしかにマグナウェルさんにとっては、その分体があると行動しやすくなるんでしょうね」
「うむ。足元を過度に気にする必要もなくて、動きやすさは段違いじゃな。なにより、この分体は飲み食いも出来る。ワシの本体はあの体躯じゃからな、飲食が必須ではないとはいえ嗜好としても楽しめぬのは少々鬱屈としておった。じゃが、この体であれば問題なく飲食を楽しめるのでな、久々に飲んだ酒は実に美味かった」
たしかに、本体のマグナウェルさんのサイズだと、それこそ小さな山なら丸のみにできそうなぐらいだし、あの巨体で食事は……食材がいくらあっても足りそうにない気がする。
それ以外にも体が大きすぎるが故に楽しめないものも多かっただろう。買い物もできないし、本を読んだりするのも難しいとなると、体が大きいというのも考えものだ。
「おかげで、年甲斐もなくついはしゃいでしまっておるよ。いままではこうして祭りを見て回るなど不可能じゃったからな、いまも少し来賓席から外れて祭りを回っておったところなんじゃ。竜結晶なぞと交換では、こちらが申し訳なくなるほどに得ばかりしておる」
「それは、よかったです。けど、アリスはそんな凄いものを使ってなにをするつもりなんでしょうね? 話を聞く限り、いままでは欲しがったことは無いんでしょ?」
「そうじゃな……聞いたところによると、他の六王にもなにやら取引を持ち掛けているらしい。メギドの奴のところにも『角をくれ』といっておしかけたらしいぞ」
「……マグナウェルさんの竜結晶に、メギドさんの角? 世界最強の武器でも作るつもりなんですかね?」
「分からんな。昔からアヤツの考えておることは、よくわからんからのぅ」
まぁ、少なくともマグナウェルさん的には大満足の取引だったみたいだし、そこは問題ないのだが……アリスは本当になにをしてるんだ?
変なことしてないといいんだけど……いや……『直接聞けば早いか』。
シリアス先輩「ついにきたあとがき部門! って、滅茶苦茶おまけだとか遊びだとか書いてある!?」
???「まぁ、こっちは別に勝ってもなにかあるわけでもないですしね」
シリアス先輩「いやいや、私はこっちにしかエントリーしてな……なんか三回目があっても、絶対にエントリーさせないとか書いてやがる……ふ、ふざけやがってぇ……」
???「……人気という一点では、シリアス先輩マジチートですからね」




