白神祭昼⑧
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富裕層向けのエリアをある程度見て回ったあとは、メインステージのある広場に行ってみようということになり、スカイさんの案内で皆揃って移動を行う。
メインステージでは様々な出し物が行われており、人界の王や六王たちといった来賓はそのメインステージのある広場に居るらしい。
「……そういえば、スカイさん。ふと思ったんですけど、今回の祭りにはマグナウェルさんって来てないんですかね?」
「う~ん、間違いなく招待は届いているはずですが、竜王マグナウェルはあのサイズですので、たびたび四大魔竜の誰かを代理に立てたりするので、今回もそのパターンかと思います。中層は下層ほど広くないので、気を使ったのではないでしょうか?」
「あぁ、なるほど……」
マグナウェルさんはあの巨体なので、来ていれば遠目でもすぐにわかるはずなので、スカイさんの言う通り今回は代理が来ているのだろう。
アリスもたまにパンドラさんを偽幻王としてではなく代理として参加させることもあると言っていたので、おそらくそのパターンだろう。
まぁ、実際いくら下層より中層が狭いとはいえそれでもかなり広いので、マグナウェルさんが居てもまったく問題が無い広さではあるのだが、招待が来た時点では白神祭でどこまでの範囲を使うかが正確に分かってなかっただろうし、仮に中層すべてを使って行う場合だと困るので念のためにという感じかな?
そんなことを話しつつ歩いていると、不意に聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「おお、ミヤマカイトたちではないか、奇遇じゃな」
そこに居たのは、白い顎髭を生やした年配の男性がいた。身長はかなり高く190cm以上はありそうで、スーツっぽいシャツの上に淡い灰色のコートっぽい上着を着て、コートと同色の帽子を被った老紳士というイメージの方だ。
「え? えっと――ッ!?」
見覚えのない相手に戸惑っていると、直後にアニマにキャラウェイ、イータとシータの四人が、明らかに警戒したような表情で俺の前に一歩進み出た。
ともすれば臨戦態勢とも感じ取れるピリピリとした感じではあるが、敵意というよりは、犬が威嚇で唸るような……四人の表情には、強い緊張と微かな『怯え』が見てとれた。
その理由はなんとなくわかった。なんというか、目の前の老紳士の雰囲気だ。一見すると穏やかで知的な雰囲気を感じる顔立ちだが、独特の存在感があるというか……戦闘関連に疎い俺でも、一目でただ者ではないと感じられるような凄みがある。
……そう、たぶんというか、確実にこの老紳士はアニマたち四人より強い……それも圧倒的に……。
「……何者ですか? これほどの存在感、六王や最高神様に匹敵するレベル……どう低く見積もっても伯爵級最上位ですら比べ物にならないほどの実力があるはずですが、初めて見る方ですね」
アニマたちと同様に表情に警戒の色を強く出しながらスカイさんが問いかけると、老紳士は穏やかに微笑む。
……う、う~ん、アニマたちが警戒するのもわかる。得体のしれない強者が突然現れたように感じているのだろう。
だけど、いや、俺も少し半信半疑だけど、この老紳士はたぶん……。
「……えっと、『マグナウェルさん』、ですよね? たぶん……」
「ふっははは、さすがシャルティアの変装を見破るだけのことはある。一発で気付きおったか……うむ、その通りじゃ」
「いや、正直俺も半信半疑でした。というか、いまもまだ少し信じられないというか……マグナウェルさんって、人化の魔法で人のサイズにはなれないんじゃなかったでしたっけ?」
そう、俺がなんとなくマグナウェルさんだと思いつつも戸惑っていたのは、それが原因だ。他ならぬマグナウェルさん自身から聞いた話だが、人化の魔法には元のサイズから変われる大きさに限度がある。
『最大で元のサイズから5000メートル差』までぐらいが限界みたいで、全長30000メートルのマグナウェルさんが人化の魔法を使ったとしたら、『身長25000メートルの巨人』になってしまう。
縦の大きさであればもとより大きくなってしまう上、そんな身長では足元など全く見えないため、マグナウェルさんは人化の魔法を使うことはない……という風に本人が言っていたのだ。
だというのに、現在俺の目の前には大き目とはいえ人間サイズのマグナウェルさんがいて……『本人から聞いた話が間違っている』という変な状況になっていて、戸惑っている形だ。
スカイさんもこの姿を始めてみた感じっぽい反応だし、本当にどうなっているんだ?
「うむ、疑問ももっともじゃろうて……この体は人化の魔法によるものではない。特殊な分体……とでもいうべきものを、遠隔で動かしているようなものかのぅ?」
「なんか、微妙にハッキリしない感じですね」
「ああ、この体は『シャルティアとの取引』でつい先日手に入れたものでな、ワシもそれほど詳しくはわかってないんじゃ。たしかシャルティアの奴は……『ぷろぐらむこーど』だとか『こーどどらぐにる』だとか、言っておったな」
……なんかよく分からないけど、またアリスがなにかやってるのは分かった。取引って言ってる以上、その特殊な分体との交換でなにかを要求したのだろう。
まったく……今度はなにしてるんだか……。
マキナ「……私が作らさせられました」
シリアス先輩「だろうね! 他だったらビックリするぐらいだよ」
マキナ「……前の縁日の件のお詫びに作れっていってきたよ……おかげでシャローヴァナルにアレコレ説明したりで、大忙しだったよ」
シリアス先輩「どう説明したんだ? シャローヴァナルは、お前とアリスの関係は知らないんだよな?」
マキナ「私が……というかエデンがアリスを評価してるってのは知ってるから、アリスとの取引の結果ってことにして、あのプログラムコードをシャローヴァナルの世界に持っていく許可も貰ったよ。代わりになんか、浴衣と花火についての詳しい情報が欲しいっていうから渡したけどね」




