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インテルメディオ はじまりの神話

 人間ははじめ、天使でした。

 地上に使わされた、たったひとりの天使でした。


 まだ地上が荒野に包まれていた時代、草木はとぼしく、動物たちもひもじい思いばかりしていました。少ない草や、川の水を求め、動物たちはいさかいを繰り返していました。

 それを雲の上から見た神々は、地上に緑をもたらし、動物たちが伸びやかに暮らせるようにあるべく、神の言葉、智恵、加護を届けるために、その天使を作り上げました。

 天使は、とても美しい女神の幼い頃の姿を由来として作られました。そしてその天使を形にするために持ち寄られたものは、夢でした。希望であり、未来に想い描く未来であり、神々の幼心であり、その他たくさんの輝かしいものが使われました。

 天使を作った神々の夢の中には、自分の力だけで空を飛びたいというものもあり、その夢は虹色の翼という形をなし、天使に空を飛ぶ手段を与えました。たくさんの言葉を聞いて覚えられるよう、耳は左右に長くなり、その耳を守るために、ふわふわ、ふさふさの、やわらかな毛も与えられました。

 天使は、ラマーという名前をもらいました。名前を呼ばれて目を開いたラマーは、あどけなくにっこりと微笑みました。

 こうしてラマーは、虹色の翼を羽ばたかせて地上と雲の上を行ったり来たりし、地上を豊かにする役目をこなしてゆきました。忙しい毎日でしたが、日に日に地上が豊かになってゆくのを見て、ラマーは更にがんばります。動物の友達もでき、言葉を覚えた動物とのお話も楽しいものでした。

 しかし、そんな豊かになった地上を我が物にせんとたくらむものがいました。

 それは、魔王。雲の上に住む神々とは反対に地底の奥深くに城を構える、惨酷な種族の頂点に立つものでした。

 魔王は使いの途中のラマーの羽根を投げた槍で射てラマーを地に落とし、大地の奥底へと連れ去ろうとしました。魔王はラマーの知恵を神々から横取りし、また、ラマーを雲の上に返さないことで雲の上と地上を切り離そうとしたのです。

 ラマーは魔王に神々の知恵を与えることを拒みましたが、恐ろしい力にあらがうことはできませんでした。そんなラマーを助け出したのは、地上でラマーと言葉を交わし、ラマーとの絆を深めた、たくさんの動物たちでした。

 かくして魔王は倒され、ラマーは再び太陽が輝く地上に戻ってくることができました。しかし、ラマーはもう雲の上に帰ることはできません。だからラマーは、地上で暮らすようになりました。

 それからのラマーは、神の言葉を届けるのではなく、自分の心で思い、考え、動き、動物たちと協力しながら、今まで以上に地上を豊かにしてゆきました。

 やがて、ラマーはたくさんの子どもたちに恵まれました。子どもたちには空を飛ぶための虹色の翼も神々の言葉を聞く長い耳もありませんでしたが、子どもたちは大地にしっかりと両足で立ち、自由に走り回ります。

 そしてラマーは、そんなわんぱくな子どもたちと、そしてよき友達であり命の恩人でもある動物たちと共に、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしました。

 ラマーの命の光が消えたあと、残された子どもたちは、ラマーが教えてくれたたくさんのことをたずさえ、世界中にその教えを広める旅に出ました。嵐に負けないよう、夜に凍えないよう、頼れる動物たちに守られながら。

 そして遥かなる時を経て。

 天使の子どもたちは人間として、今を生きています。

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