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四魂学園物語。2  作者: 西谷 零
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2-2 偽名

「あ、そうそう」

希白は大きなエントランスを進みながらそう呟く。

大きいからなのか、上が天窓だからなのか。小さな声でも反響して大きく聞こえてしまう。

「なんだよ」

小声でぶっきらぼうに龍我もかえすが、どう返しても反響するので諦め寸前な彼。

「貴方の偽名、言うわね。覚えてよ?」

「ちょっと待て!?」

思わずその単語を聞いて、大声を上げてしまう。大きく反響するその声を自分で聞いて、今生徒が授業中で良かったと思ったことはこれほどないだろう。

希白は、人差し指を薄桃色の唇に当て、「しぃーっ」と息を出した。

はっとして、口を押える龍我だが、今更そんなことをやっても遅い。はんきょうしてしまっているのだから。

「…なんで偽名なんか」懲りたのかすごく小さな声で希白に聞く。

丁度エントランスの中央…入り口の直線状に立ったところで、希白は足を止め、龍我へと顔を向けた。

「…家帳の話はしたでしょう?有名な家系は全て名前が載るの。」

「あぁ。…俺が龍我家の最後の血筋だとか。そういうヤツだろ?」

小声で会話する中、彼女はコクリと頷き、周りに誰も居ないことを確認してから、身をやや屈めた。

聞かれたくない話なのだと悟った龍我も身を屈める。

「それはつまり、全校生徒が知って居るということなの。…命、狙われても知らないわよ?…後、もっと恐ろしことあったんだから」

悲しげな、怒りがこもっているような声音で小さくそう呟くと、クルリと前を向き、彼女は歩き出す。

それに1テンポ遅れたが、龍我も慌てて隣を歩く。

声音を聞いて、彼は”実際にあったこと”だと悟り、追求するのはやめた。もしかしたら、それが生徒会長になってからの初めての事件だったのかもとか、考えながら――――。

いつのまにか、唇が渇いていて、上手く言葉がでない。出そうとしても、声が震える。掠れる。

そんな自分の状況に驚きながらも、やっとの思いで口にした

「……なるほどな。……分かった。で、偽名は?」

彼女もふぅっと息を吐き、1テンポ送らせてから、龍我のほうへと向く。そして、小さく微笑んだ。

流賀りゅうが やんよ」

「また随分と中国のほうとかにいそうな名前だな…」

名前を聞いて苦笑する。そんな名前は日本にいて聞いたことがない。巡り会ってないのかもしれないが。

少し嫌な感じもしたが、それを口にはしなかった。

それを拒否したらどうなるのか、すぐに見当がついたからだ。

そんな話をしながらも足を進めていた2人だったが、エントランスを抜けると、オレンジ色の明かりがポツポツとだけある細長い(短いほうだが)廊下に出た。

ダークブラウンに塗られた壁に明かりが反射し、幻想的な空間を作りだしている。

その空間を無言で進み、突き当りの扉へつくと扉へ手を掛けた。

キィッという古い音と共に、扉は開かれる。まだ古いといえるほどの年数ではない四魂学園だが、こういうつくりになっているのだろう。実に巧妙で、扉の疵なども変にリアリティーがあるものだ。

希白が扉側に立ち、紹介をするように片手を前に出した。

「ここが全クラス共通の談話室。…でも基本は勉強してるわね」

そこまで広くない空間をしっかりと利用するためのように、細長い机が3つ縦に一つずつ並んでいて、その周りを椅子が囲っている。

勉強する人が多いからなのか、後ろ側のスペースには本棚がたくさんあり、本がずらっと並んでいるのが黙視できた。

この空間も、廊下と同じような雰囲気を纏っていて、ミステリアスのような、落ち着きのある空間をしている。

彼女は龍我を見て小さく微笑むと、扉を閉めた。

しっかりと確認するまで待っていてくれたようだ。

彼はあたりをきょろきょろと見渡してみるが、辺りにそれらしい扉はない。どうやら、この廊下は談話室だけの様だ。

ふと、しっかりと左右を確認してみると、左側にまだ道が続いていたし、上を見れば廊下があった。一階にある小さなロフトのようなところに上がるための階段だろう。

そして右側には、保健室から出た時、生徒会長室に向かった時などに使用した扉が見える。おそらく、長い階段のところに出るのだろう。

(あの階段、一階エントランスから最上階まで全力で上るとか無理だろうな…)

と、龍我はふと考えるのだった。

希白は左側の道をスタスタと進む。それに1テンポ遅れながらも、龍我は後に続く。

右側には、1-A、1-B と出ているので教室なのだとすぐに分かった。先生の声が教室内から聞こえてくる。ちゃんと授業中だ。

「なぁ、位でクラスって変わるのか?」

ふと頭に浮かんだ疑問を彼女にぶつけてみた。だが、彼女からの返事はない。

「なぁ」とさっきより強めでいうと、彼女は右手を龍我の前に出し、止まるように促す。

急だったので躓きそうになりながらも止まる龍我。

怒りを微妙に希白に覚えながらも、前を見た。

前からは、ダンディなひげを生やした男性がこちらへと手を振りながら歩いてきている。

龍我にではなく、希白にだろうが。

彼女は無表情のまま、深くお辞儀をした。男性がすれ違うところで足を止め、笑顔を見せる

「やぁ、編那あみなクン。元気かね?」

ハスキーボイスで希白に問いている。だが、希白は「麻綯」だ。間違えてるのだろうか。

そんな疑問を掻き消すかのように、希白はうなずいた。

「えぇ。おかげさまで元気ですわ」

さっきとは全然違う声音、口調で彼女はそう答えた。

龍我には、訳が分からなかった。

彼にはわからない会話を希白と男性はかわすと、男性は龍我へと目を向けた

「彼は?」

一瞬、龍我には微弱な寒気が背中に走った。嫌な感じの寒気。さっきも感じた、いやな嫌悪。

怒られてるわけでも、自分に問われて居るわけでもないのに、威圧感がとてつもない、この男性。

彼女はハッとしたかのように、龍我へと手を向ける

「こちらは今日からの新入生ですわ。成績が良かったので、ダイヤモンドクラスですの。流賀、こちらは学園長様ですわ」

”学園長様”と説明をされた彼は小さくお辞儀をする。

慌てて龍我も深くお辞儀をする。学園長というのは、とてつもなく偉い人のハズだ。…普通ならば、生徒会長である希白よりも。

四魂学園ではどうなっているのかはわからないが、希白も敬意をしっかりと分かりやすく見せているから、生徒会長よりも偉いのかもしれない。

(……だが)

希白から、名前は違えど呼び捨てされたのは初めてだ。明らかな他人感くを今更覚えた龍我。

朝、保健室で会った時からフレンドリーだったのであまり考えてはいなかったが、希白(この人)は学園

内で一番偉い人物なのだ。

改めて認識すると、怖い。

「りょ…。流賀 楊です。…初めまして」

いつも西春宮高校(前の学校)で見せていた笑顔を作りそう挨拶をする。

「おや、礼儀正しい子ですな。わたくしは中西 志郎と言いますよ。宜しくお願いしますね」

中西…と名乗る、学園長は小さく微笑すると「では、編那クン。また後でね」と笑顔で言うと、足を進めていく。

希白は深くお辞儀をすると、さっきよりも足を速め進んでいく。

「あっ、おい!」と学園長にばれないように龍我は声をかけながら、希白の後を追った。

お久しぶりです。皆様。

すいません。今回、情景描写がやけに酷いです。

ですがまぁ、雰囲気だけでもわかってくれれば幸いですね。

今回はとても日にちが空いてしまったので、お詫びということで、いつもより多めに書いております。

…それで許して…

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