序
「こんばんは」
ーびっくりしてる。可愛いなぁ。ものすごく可愛い。
「入っていいですか?」
ーそこで嫌そうな表情をするんだ。ねえ、もっとその顔見せてよ。
一瞬の表情の後答えられた。
「あー。ちょっとまって、いや、待たないで。入って。」
ー返事が遅いよ。早く入らせてよ。というか、そんな簡単に入らせたらダメだよ。だって、私・・・。
両腕の手首は紐で後ろ手に縛られている。目の前の男は私を見つめている。その目をジッと見つめ返す。
「先生、なんで私縛られたの?」
素直な疑問を問いかける。
ため息をつきながら返答が来る。
「そりゃな、お前、俺を殺そうとしたからだろ。何刺そうとしてんの。身の危険を感じたから、縛ったの。」
信じられないとでも言いたげに私を見つめてくる男は山田久文、30歳。うちの高校の私のクラスの元化学の先生だ。
「先生ってそんなに危機管理能力高かったっけ?なんか、すぐに死んでくれると思ったから殺しに来たんだけど、なんで縛られないとダメなのー。あ、もしかして、そういうプレイ好きだったりした?流石にそこまでは調べてなかったんだけど、意外とアブノーマル?」
言い終わる前に否定の言葉が飛んできた。
「違うわ!お前なぁ、俺は気に入られてる方だと思っていたぞ…。なんで殺そうとしたんだ?」
「そんなの簡単だよ、好きだから。先生のことが好きで好きでどうしようもなくなって、私が壊れる前に先生を壊して、自分のものにしたかったからだよ。先生いなくなっちゃうじゃん。だから。」
何とも言えない顔で見つめられても困るんだけどなぁ。
先生は黙ったまま私を見る。