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条件特別3

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条件特別戦 芝2200m

場所:馬主席(スタンド側カフェ)

語り:エリス

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 今日は逃げに出ましたか。


 1コーナーまでの様子を見ますとナイトがスポートに被せられても怯える様子はありません。


 まあ今後の事を考えての事でしょうけど、アニーもなかなか面白い事をするじゃないですか。


 それにしてもイレイザーまで追ってくるとは意外です。


 大方ヴィルマからうちの馬にだけは負けないようにと命じられているのでしょう。


 少しハンスが可哀想になりました。



 ヴィルマは身を乗り出してイレイザーを必死に見つめています。


 出走馬をここまで少なくする程の本命馬と自称するならもう少し堂々とすればいいのに。




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条件特別戦 芝2200m

場所:1コーナー→2コーナー手前

語り:ハンス(イレイザー鞍上)

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 まさかスポートの機先を制してまで行くとはな。


 アニーのやつ一体どういうつもりだ?


 前回の末脚があるなら絶対後方から来ると思っていたのに。


 まあいい。こちらとしては手間が省けた。


 アニーがペースを落とせないように道中しっかりとつついてやるさ。



 それにしても流石キースさんだ。


 ちゃんと馬を落ちつかせて立て直してる。


 それにわざとこちらと距離を置いて単騎逃げの様な形に持ち込んでいるし。


 後ろも油断が出来ないな。




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条件特別戦 芝2200m

場所:1000m地点付近

語り:俺

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 俺はイレイザーを引き連れてオムスビのてっぺん目指して進んでいた。


 さっきパドックで俺の体重がまた二桁増えてる事を知った時は息が持つか心配したけど全然平気だ。


 むしろ前回より断然楽に行けている。



 やがてオムスビのてっぺんに来てこのコースで一番きつい角度のコーナーを過ぎた。


 1000Mの通過が61秒弱か。


 一勝馬のペースじゃないな。


 落とそうかな?


 そう思っていたら3コーナー手前の残り800辺りでイレイザーが外から俺に並びかけてきた。


 頭差くらいまで並ばれたけど、少し挽回して首差くらいまで差を広げてなんとかリードを維持している。


 俺はイレイザーが加速する度に同じだけ加速して差をずっと維持していた。




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条件特別戦 芝2200m

場所:残り800→600m付近

語り:ハンス

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 こっちのスパートにエリスズナイトは併せてきた。


 こっちの加速にもしっかり対応してくる。


 ん?でもアニーのやつの手綱が動いてないぞ?


 こっちはムチまで入れてるのに。


 冗談だろ?




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条件特別戦 芝2200m

場所:4コーナー出口前

語り:俺

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 そろそろ4コーナー出口が近づいてきた。


 ゴールまでこのままの状態が続くかと思ったけど、異変が起こった。


 俺についてきていたイレイザーが後退を始めたのだ。


 むこうはずっと俺の外を回って多く走ったせいもあるのだろう。


 どうやらスタミナ切れを起こしたようだ。


 ハンスがムチを入れているけどありゃもう駄目だ。


 とにかく最も警戒すべき相手は沈んでくれた。


 こういう時は三番手辺りにいる相手の出し抜けが一番怖いけど今の所その姿は遠い。




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条件特別戦 芝2200m

場所:4コーナー出口

語り:キース(スポート鞍上)

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 アニーにしてもハンスにしても何やってんだ?


 アニーは前回あれだけの末脚を披露した馬を、俺のスポートを差し置いてまで逃がすし、ハンスはハンスであんな追いかけ方するし、まあ俺はおかげで単騎逃げみたいな恰好でレース出来たからいいけどよ。


 ほんと若い奴のやる事はわからん。



 それにしてもさすがダイアナの子だな。


 前回の捲りも大したもんだったが、スタミナには何の不安もなさそうだ。


 馬体も増えて身が入ってきたみたいだし、まだ強くなりそうだ。



 今追い越したイレイザーは、スピードはあるし気性も素直だがスタミナ比べは分が悪いな。


 次からもうすこし短めの距離を使ってやれよな。



 おおっと人の心配してる場合じゃねえな。


 そろそろ後ろから無欲の追走をしてたやつらが襲いかかってくる。


 エリスズナイトには追いつけねえが、2着は確保しないとな。



 まあでもこいつはしぶといぜ。


 切れる脚はねえが粘りは一級品だ。


 簡単には差せねえぜ。




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条件特別戦 芝2200m

場所:検量室

語り:リナ

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 私は検量室のモニターで、先生と唖然としながらナイトのレースを見ています。



 前回と打って変わって逃げに出て、途中からイレイザーとずっと競り合ってる光景を見た時はもうダメかと思いました。


 でも先生は大丈夫だと言ってアニーを指さしました。


 アニーの手綱は全然動かないのにナイトはイレイザーにちゃんと対応していました。


 そしてイレイザーが後退を始めた時には一緒に下がって行くのではと心配しましたが、ナイトはちゃんと速度を維持しているようです。


 後は後ろから何も来ないで欲しいと祈るのみでした。




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条件特別戦 芝2200m

場所:直線→ゴール

語り:俺

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 4コーナーを抜けて最後の直線に入っても後ろとの差は随分あった。


 そして俺よりかなり遅れて直線に姿を現したのはイレイザーではなくスポートだった。


 更にその後ろに続いた馬もイレイザーではなかった。



 直線半ばで勝利を確信した俺が軽くスピードを落とそうかと考えた瞬間「ヒュン」と音がして、左目の辺りにムチがヌッと差しだされていた。


 所謂見せムチというやつだな。


 ビシバシ叩くほど状況はひっ迫してないけど、気を抜いて走るのは許さない。


 という鞍上のアニーの意思表示だろう。


 わかったよ。


 最後までちゃんと走るよ。


 俺は最後の坂を加速して駆け上がり、ゴールをトップで通過した。



 逃げのレースはなんか地味だが、先頭を切って走るのは気分がいい。


 前走の捲りも結構疲れたが今回の長い競り合いも結構疲れる。


 でも体調は前よりずっといい。


 疲れが取れるのも早いだろう。



 それにしても俺って極端なレースばかりしてるな。




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条件特別戦 芝2200m レース後

場所:1コーナー付近→検量室

語り:俺

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 競馬場は前回と打って変わって罵声の嵐だった。


 とくにイレイザーとハンスに対するものは酷かった。


 ガラの悪いファンはどこにでもいるな



 アニーが例によって1コーナー手前で「ご苦労さん」と声をかけてくれた。


 ああ、こっちも世話になったな。


 検量室前の1着馬のスペースに向かう俺を前回同様リナが迎えてくれた。


 アニーと握手して俺の首筋を撫でながら満面の笑顔で


「今日も頑張ったね。」


 と言ってくれた。



 アニーは俺から鞍を外して計量に向かったようだ。


 量りを降りたアニーはそこで何かオーエンと話している。



 結果として俺は1着、2着のスポートには何と9馬身の差がついた。


 3着は最低人気馬がスポートに半馬身差まで迫っていた。


 イレイザーは6着。


 掲示板にも載れなかった。




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条件特別戦 芝2200m レース後

場所:検量室

語り:俺

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「ありがとうなアニー。

 課題も賞金もクリアした事だし、これで安心してトライアルに向かえる。」


 オーエンが嬉しそうにアニーに礼を言ってるけど、なんか今後の見通しがついたって感じだな。


「そうなんだよ!ハンスのやつが仕掛けて来ても全然怯まずにちゃんと前に出ようとしてたぜ。」


 まあ、あそこで前に出したら面倒だしな。


 それにこっちも余力があったし。


「そうか。所でなアニー、これからもこいつに乗ってくれるか?」


「アタシ以外に誰が乗るんだよ!」


「じゃあ頼んだぞ。」


「ああ。任せとけ!」


 こちらこそよろしくな。アニー




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条件特別戦 芝2200m レース後

場所:馬主席(スタンド側カフェ)

語り:エリス

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 これで2連勝ですか。


 馬券も連続で大当たり。


 イレイザーが沈んで最低人気が来てくれたおかげで思ったより配当も大きいです。


 これでもう一度皆さんを祝勝パーティにお呼びする事が出来そうですね。


 あら?さっきまで隣にいたヴィルマの姿がありません。




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条件特別戦 芝2200m レース後

場所:馬主エリア(廊下)

語り:ヴィルマ

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 見ていられなかった。


 私は4コーナーでイレイザーがズルズル後退し始めると同時に席を立った。



 マッチレースでエリスの馬に負けた。


 あれじゃ多分無欲の追走をしていた馬にも差される。


 ハンスに確認しないとわからないけど距離の限界かもしれない。


 父母が同じ全兄姉が距離をこなせたからと言って弟もそうとは限らない。


 そんな例を私は今までいくつも見てきた。



 ただエリスの馬が血統通りの実力をつけてきたことも確かだと思う。


 やはりダイアナの血は伊達じゃないという事か。


 もうイレイザーじゃダメ。


 やはりこちらも一番の馬で対抗しないと。



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3歳クラシック1冠目の結果

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 このレースの数週間後に行われた3歳クラシック1冠目のレースは、アボット家所有のグラジエーターがハンス騎乗で1番人気に応えての勝利。


 ランカスターカップの最有力候補に躍り出た。


<ナイトの出走レースについて:その2 条件戦>

 条件戦とはこの時期の3歳の場合は1勝馬あるいは未勝利馬によって行われる。

 条件戦には平場と呼ばれる一般レースもあるが、ナイトが出走する特別レースの場合は賞金が高く、副賞が貰える事も多いため、馬の実力が高い場合はこちらに回る事が多い。

 実際は未勝利馬が出て来ることは稀。

 相手が強い事に加え、出走希望頭数が多い場合は真っ先に除外対象となるからである。

 尚、一勝馬であっても、重賞で2着以上の実績がある馬は出る事が出来ない。

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