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条件特別1

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条件特別出走3週前

場所:オーエン厩舎

語り:俺

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 あれから俺は更に強度が上がった調教を受けていた。


 どんな調教かと言えば、併せ馬を多用するようになったのだ。


 相手は同じ厩舎のがっしりした先輩古馬であったり、他厩舎の馬であったり色々だが俺はリナを背に出来るだけ負けないように走った。


 でもその分腹が減るからリナに飼葉の追加の催促をすることも多くなった。


「ほんと、よく食べるようになったわね。」


 そう言ってリナは俺の鼻面を撫でてくれる。


 大飯食らって褒めてもらえるなんてここくらいだろうな。



 そんな俺が耳にした事がある。


 前回の未勝利で一緒に走った他の馬だが、ハンスが乗っていた馬はイレイザーと言ってあれから未勝利戦を圧勝したとの事。


 確かに才能ありそうだったもんな。


 対抗馬のレスターと逃げ馬のスポートもそれぞれ別のレースで手堅く勝って無事未勝利を卒業したそうだ。


 またあいつらと走る事があるかもしれないな。


 その時はお手柔らかにな。




 そして前よりはちょっと気持ちに余裕があるから色々と気付く事がある。


 なんかここではエンジン音を一度も聞かない。


 当然俺がいた世界とテクノロジーは違うと思うけど車は音も無くスーッと動く。


 電気か?まあよくわからん。


 それとエルフ達が魔法を使うシーンに出くわす事が無い。


 そもそもこっちに魔法という概念があるのかも疑問だ。


 というか『エルフは魔法を使う』というのは完全に俺の偏見かもしれないな。



 間違いないのは今この世界で一番出鱈目な存在なのは俺だと言う事だ。




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条件特別 直前追い切り

場所:調教コース

語り:俺

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 それからまた何週間か経ち、準備運動を終えた俺がいつも通りリナを乗せて調教に出ようとしたら、久々にアニーと出会った。


「ようリナ。今日はアタシが調教に乗るから替ってくれ。」


 リナがオーエンの方をチラっと見るとオーエンは頷いた。


 事前の話し合いが出来てたんだろうな。


「お願いね。」


 とアニーに告げてリナは俺から降りて代わりにアニーが跨ってきた。



「おう、久しぶりだな。元気にしてたかよ。」


 そう言いながらアニーは俺の首筋をポンポンと叩いてきた。


 おう俺は元気だったぜ。



 俺はアニーに誘導されてコースに出た。


 暫くすると俺の横を二頭併せで通過した馬達がいた。


 アニーは俺に合図をして今の馬達を追わせた。


 どうやら今日は三頭併せらしい。


 俺は全力で追ったが今までと違ってなかなか差が詰まらない。


 こいつら強い。


 アニーのムチが俺にビシビシ入るがゴール前で鼻面を合わせて並びかけるのがやっとだった。



 ヘトヘトになって帰ってきたらオーエンが俺から降りたアニーに状態を聞いていた。


「どんな感じだ?」


「ああ、G1勝ちのある古馬相手にこれだけ走ったら充分だ。」


 おいおい、たかが一勝馬にそんなやつらを当てるなよ。


 必要以上に疲れるじゃねえか。


「よし、じゃあ後はマイクに連絡して本番の手配だな。」


「おいおっさん。今回もアタシが乗るぜ。」


「お前は別の競馬場で重賞に乗るんじゃなかったのか?」


「さっき聞いたんだが回避だとよ。マイクにもアタシから話はつけてあるし乗れるぜ。」


「なら頼む。」


「ああ。ちょっと試したい事もあるしな。」


 そう言いながらアニーは俺を意味ありげに見た。




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条件特別 直前追い切り後

場所:オーエン厩舎

語り:俺

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 今日のキツイ追い切りの後、厩舎では俺を目の前にして前より2人多い3人の記者がオーエンを囲んでいた。


 オーエンのコメントを要約すると『走ってみなきゃわからない』って事らしい。


 当然だな。


 激走の後の凡走なんて俺もいっぱい見てきた。


 ましてや3歳のたかが一勝馬だ。


 という事は今週はレースか。



 俺はキョロキョロと左右を見回した。


 あのキツイお嬢様は来てないだろうな?


 そう思っていたら来たよ。


 記者が帰ったら不機嫌そうにやってきた。


 相変わらず険しい目付きで俺をじっと見つめている。


 また叩かれるんじゃないだろうな?


 そう思っていたらまたフンッと鼻を鳴らして去って行った。


 俺はホッと胸を撫で降ろした。




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条件特別 直前追い切り後

場所:オーエン厩舎

語り:エリス

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 久々にあの馬を見たら先生の仰る通りに馬体が随分良くなっていました。


 この時期の馬の成長は著しいものがありますね。


 またリナにいい餌を届けなければ。




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条件特別 出走当日朝

場所:競馬場

語り:俺

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 追い切りから数日後、俺はまた馬運車に乗せられた。


 やはりエンジン音が全くしない。


 なんか不思議だが馬には絶対こっちの方がいいんだろうな。



 目的地に着くとリナが俺を馬運車から降ろしてくれた。


 ここ最近のリナは前の様な悲壮感は全くない。


 いつも通り世話してくれる時には色々話しかけてくれたし、笑顔で優しくしてくれた。


 前走は結果が出なかったら肉屋行きという異常事態だったからな。


 やっぱり断然こっちがいい。


 俺がまた勝ったらリナの稼ぎも増えるだろうし、あのキツイお嬢様にも何も言われないで済むだろう。


 今回はいつも世話になってるリナのために頑張ろう。



 周りを見回すと前の競馬場と違ってちょっと手狭な感じを受ける。


 何となく雰囲気に覚えがありそうな気もするが・・・


 それにどうやら今日は泊りじゃなくてそのままレースに出走する事になりそうだ。


 俺は前回と違って今回は午後の特別レースに出走するみたいだ。




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条件特別戦 馬装装備

場所:装鞍所

語り:俺

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 前よりずっと遅い時間に馬装を整えてもらってパドックに出ようとする時に、俺と同じレースに出る面々を見回したのだが、今回はやけに頭数が少ない。


 俺も入れて7頭しかいない。


 前回は18頭もいたけど今度はやけに少頭数だな


 その中に見覚えのあるのが二頭いた。


 イレイザーとスポートだった。


 この少頭数でまた会うとは何か因縁を感じる。




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条件特別戦 パドック周回

場所:パドック

語り:俺

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 パドックに出てきた俺はやるべき事をやろうと思った。


 さて、情報収集、情報収集と・・・


 俺が左右を見回すといた!


 あの酔っ払いのオヤジだ!


 会いたかったぜ。おい。



 俺は周回でオヤジの近くまで来ると前回同様新聞を見るために近づいた。


「お・おいまたかよ。」


 そう言いながらオヤジは俺を見ながらまた固まった。



 どうやら今度は4コーナー出口辺りからスタートしてオムスビの様な形のコースを回るみたいだ。


 何か見覚えあるな?このコース。


 因みに俺の馬番は1で最内枠、イレイザーは3番、スポートは大外の7番だった。


 このコース形態でこの少頭数なら正直どこでもいい。



 新聞の情報によると、どうやらイレイザーが圧倒的な本命でスポートが対抗。


 俺は三番手評価だった。


 イレイザーは安定感があるし妥当だろう。


 こういうコースと頭数だと単騎の逃げ馬はかなり有利だからスポートが人気になるのもうなずける。


 俺の前走の勝利は16番人気での事だったしフロックだと思われてるんだろうな。



 そろそろ戻らないとリナやオーエンに迷惑がかかる。


 そう思った俺はゆっくりとパドックの周回に戻った。


 パドック横の掲示板で俺の馬体重の増減を確認したらまた2桁増えていた。


 大丈夫か?おい。







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