国王杯 ゴール
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国王杯 芝2400M
場所:王立競馬場 直線 ゴール200m手前
語り:クルーズ(レスター鞍上)
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よし、最強の相手のグラジエーターが沈んだ。
僕の予想通り、やはりあの馬はスタミナに難があった。
あと残り1ハロンだからこのまま行けば僕の勝ちだ。
ん?何か来た。
今度はナイトがきた。
一気に交わすつもりかも知れないけど、そうは行かない。
僕はレスターを外に振ってナイトに併せた。
ナイトもいつもの様な脚じゃないし、状態はこっちの方がずっといい。
今日こそ負けない。
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国王杯 芝2400M
場所:王立競馬場 直線 ゴール200m手前
語り:アニー(エリスズナイト鞍上)
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本当だったら外目を通って一気に交わした方が良いんだが、やっぱり併されたか。
それにしてもグラジエーターを競り潰したばかりなのに、しぶといやつだな。
ただこっちも負けるわけには行かねえ。
状態は向こうの方が上かも知れねえが、この馬と走って負けた事は一度もねえしな。
今回も返り討ちにしてやるさ。
それにこいつさえ交わせばレースにも勝てる。
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国王杯 芝2400M
場所:王立競馬場 直線 ゴール100m手前→ゴール
語り:俺
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俺はレスターと併せ馬の格好で最後の1ハロンを叩き合って進んでいた。
こちらが前に出たら相手も差し返してくる。
ランカスターカップのラージワンの時は、馬体を何度か当てられる鬱陶しさはあったけど負ける気は全然しなかった。
確かに相手は切れる馬だったけど、こちらの脚が下回っていたわけじゃなかったし、状態そのものも良かった。
でも今回の方が道中の疲労度が上だし、元々の状態が万全じゃなかったせいか、なかなかレスターを振りきれない。
レスターの方もグラジエーターと競った疲れからか、こちらを置き去りに出来ないみたいだ。
それでも勝負には負けられない。
俺はずっと全力を尽くしていたし、少し前に出ては相手にも差し返される。
もうすぐゴール前。
こいつさえ交わせば勝てる。
俺はそう思っていた。
そのゴール目前だった。
俺の外から一瞬の脚で駆け抜けた馬がいた。
気付いたらそいつはもうゴールしていて、鞍上の騎手が誇らしげにムチを持った左腕を振り上げていた。
俺とレスターは俺が僅かに出た所で並んだままゴールした。
俺はこのレースに勝った騎手と馬に見覚えがあった。
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国王杯 芝2400M
場所:王立競馬場 直線 ゴール後
語り:アニー(エリスズナイト鞍上)
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あーあ負けちまった。
アタシがこいつに乗り始めて初めての負けか。
でもこいつはよくやってくれた。
状態が悪い上に大外枠だったのにな。
「すまねえな。勝たせてやれなくて。」
アタシは感謝と謝罪を込めて相棒の首筋を軽くポンポンと叩いた。
ん?あいつ勝ったくせに何してんだ?
勝ち馬の騎手が観客に愛想を振りまくわけでもなく、なぜかこっちを見ている。
どうやらあいつは馬の速度を緩めてアタシが来るのを待ってたみたいだ。
「おいマイクどうした?」
「すみませんでした。姐さん。」
「はあ?」
一体何言ってやがんだこいつは?
「いや、俺がハインケルで姐さんのナイトをG1で負かしちゃったんで・・」
「バカヤロー!」
アタシはマイクの頭をバシーンとヘルメット越しに叩いた。
「痛いですよ。姐さん。」
嘘つけ!手の方がずっと痛えよ!
こんなもんで痛くなるなら、ヘルメットの役割なんて果たさねえだろうが。
「お前なあ、G1も平場もあるか!同じレースに乗ったら敵同士だ!
その勝負にお前は勝った!何を謝る必要がある!」
「いや、何となく。」
「全く、お前はよう・・・」
まあ元から優しいやつではあるんだよな。
その上真面目だしな。
「そんなことより、お前G1初制覇だろう?おめでとう!!」
アタシをそう言いながら、今度はバシーンとマイクの背中を叩いてやった。
「今度は本気で痛いですよ。姐さん。」
だろうな。じゃあさっきのは嘘なんだな?
まあ負けた事は悔しいが、日頃のこいつの真面目さや熱心さがこうして報われて良かったぜ。
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国王杯 芝2400M
場所:王立競馬場 直線 ゴール後
語り:クルーズ(レスター鞍上)
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また負けてしまった。
出し抜けでこちらを差し切ったハインケルに負けたのは仕方がない。
でも同じ三歳のエリスズナイトにまた負けてしまった。
掲示板を見ると短頭差。
今日は馬の実力じゃなくて、僕の腕で負けたように思う。
馬の状態は明らかにこっちが上で競馬場の特性もこの馬に合ってた。
それなのに負けてしまった。
僕がアニーさんやハンスさんみたいに乗れる日は来るんだろうか。
伯爵様や先生にも厩舎のみんなにも申し訳ない。
そんな事を思っていたら、
「おう、どうした?若いの。」
と後ろから声をかけられた。
グローヴァーに乗ったキースさんだった。
「キースさん。いえ・・僕の腕が足りないばかりに負けてしまって・・
状態の良くないナイトにも負けて・・なんか自分が情けなくて・・」
「何だよそんな事かよ。」
「そんな事って。」
何てことを言うんだこの人は。
「お前の腕のせいかどうかは後で映像で見てみろ。落ち込むのはそれからにしろや。
後ろから見てた限りじゃお前にミスは無かったぜ。
それによく考えてみろ。ナイトとやりあう度に着差を詰めてるじゃねえか。
次はどうなるかわからねえぜ。
だから次の事を考えな。」
そう言ってキースさんは先に行った。
いつも誰かと揉めてるイメージだったけど良い人なんだな。
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国王杯 芝2400M
場所:王立競馬場 検量室前
語り:俺
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俺は初めて2着馬のスペースに繋がれた。
いつもの俺のスペースにはハインケルがいる。
こうして見ると、なんか変な感じだ。
でもリナはいつも通り出迎えてくれた。
オーエンは勝利馬のハインケルの方に行っている。まあ当然か。
「すまねえリナ、負けちまった。」
アニーは俺から降りてリナに謝っていた。
「いいの。無事に帰って来てくれたからそれで充分。」
リナはそう言ってアニーの手を握った。
「まあでも、あそこまで行ったら勝ちたかったよな。」
アニーはそう言って悔しさを隠さなかった。
悪いな。俺だってそうしたかったよ。
でも今回は無理だった。
あーあ。それにしても疲れた。
いつもと違って計量が済んだら、俺は早々に出張馬房に戻された。
そういやレースがすんだらセレモニーが当たり前なんて思ってたな。
負けたらこんなにあっさりしてたのか。
楽だけど何か虚しい。