国王杯 レース前日
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国王杯 開催週 レース前日 昼
場所:王立競馬場 滞在厩舎
語り:俺
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今日はどうやら競馬開催が行われているみたいで、時々ここまで歓声が聞こえてくる。
明日は隣の馬房にハインケルとグローヴァーがやってくるから、今リナが掃除をしている。
俺はと言えば早朝に厩舎周りで軽い引き運動をしたくらいでそんなに動いていない。
開催日だから馬場に出るわけにもいかないしな。
衝撃の枠順発表から俺には時間だけはたっぷりあったからずっとレースの事を考えていた。
でも色々考えてみたけど、どうしようもなかった。
結局最終的には何かをマークするしかないのかなとも思えた。
でもどの馬を?どの位置で?
結局それを考えるのはアニーだ。
自分ではどうしようもないんだよな・・・
俺は俺で何パターンか想定するしか無いな。
アニーがどう出ても慌てない様に。
あっ掃除を終えたリナが戻って来た。
手に新聞を持ってる。
「ナイト、前日オッズなんだけどね。ナイトとグラジエーターが一番人気を争ってるね。
3歳だから斤量も軽いし、やっぱりみんな前走の決着戦を期待してるのかな?
でもナイトがあの時の正式な勝ち馬なんだよ。あんなことが無くても絶対勝ってたと私は思うよ。」
やっぱりリナは俺の一番の味方だ。
これを聞けただけで全てが報われたように思える。
実際ファンの間では俺への評判は懐疑的なものが少なくないそうだ。
まあ前走の決着があんな感じだったから仕方ないけどな。
ただ何となくだがグラジエーターの方が最終的には人気になりそうな気がするぞ。
「例年だったらナイトがすんなり一番人気なんだけどね。
まあ調教のパターンがいつもと違うし、コンディションを疑う人も多いんだろうな・・・
先生のコメントでも『何とか間に合わせました』って感じだし。」
リナが責任を感じてるみたいだけど、これは仕方がない。
実際グラジエーターよりレースを使ってるし、休養は絶対に必要だった。
それに枠順だって一番外だ。
「この新聞だとね、先生はうちの馬の中ではハインケルの出来には自信があるみたいだよ。
『ここを目標に仕上げて来たし実績もあるから好勝負になる』って。」
実際にハインケルは強い。
筋肉量もあるから俺よりここの馬場が向いてそうだしな。
「グローヴァーは最近頭打ちだけど、今回のキースさんに期待してるみたい。
『実績は問題無いが何かが足りない。ベテランがそれを引き出してくれたら良いんだが』って。」
この馬だって強い。併せ馬で勝つのはいつも大変だ。
あの強さで頭打ちなら、やっぱり何かのきっかけが必要なんだろうな。
「他所の馬でコメントが強気なのはやっぱりグラジエーターだね。
『今度はエリスズナイトには絶対に負けないし、レースが終わったらどの馬が一番強いかわかる。』
ってハンスさんが言ってる。」
あいつらしいな。
ハンスは鼻につくやつだけど腕がいいのは確かだ。
そこから来る自信もあるんだろうな。
「同じ3歳のレスターだけど『ここはこの馬に向いている。枠も良いから好勝負出来る』って。」
こいつはパワーがあるから少なくとも俺よりは向いてるだろうな。
それにこいつは会うたびに強くなってる気がする。
「あとコロネだけど『そんなに力の差は無いと思っている。牝馬で斤量が軽いのは強みになるはず』だって」
ひょっとして未勝利で一緒に出てたかもしれないけど、牝馬とレースを走った記憶は無いな。
でもここに出て来る以上並の牝馬じゃないし、リナがこうして言う位だからかなり強いんだろう。
「ねえナイト、いつも同じ事言ってる気がするけど、必ず無事に帰って来てね。
私は結果なんて気にしないからね。」
そう言いながらリナは撫でてくれた。
俺は俺で全力を尽くすしかない。
是非リナにG1をもう一つプレゼントするんだ。
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国王杯 開催週 レース前日 条件戦
場所:王立競馬場 芝コース 最終コーナー出口手前
語り:アニー(条件馬鞍上)
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今回は追い込み馬だが同じ距離のレースに乗れたのは有難いな。
馬群はずっと密集していたが、ここでようやく少しばらけた。
アタシはまだ最後方にいるけど間は抜けられなくて、仕方ないから外寄りに馬を誘導した。
ムチを入れて追ってるけど思ったより伸びねえな。
先に抜け出した二頭は捕まえられそうにない。
結局離れた3着だった。
まあナイトと違ってこの馬は条件馬だし、同じ様な伸び脚を期待するのは酷か。
もしかしたらと思って外を通ってみたけど、これだけ芝のコンディションが良かったら単純に内有利になる。
トライアルの時はレスター以外大したやつがいなかったから大外でも問題無かったけど、今度は古馬までいるからなあ。
何とか対策考えるしかねえな。
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国王杯 開催週 レース前日 条件戦
場所:王立競馬場 検量室
語り:アニー
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1着の馬はクルーズが乗ってたのか。
2着はハナ差でマイクか、それなら勝っとけよ全く。
「ようアニー、3着はお前か?」
アタシが振り向くとキースのオッサンが立っていた。
「そうだぜ。オッサンは?」
「俺は4着だ。お前の馬とは1/2馬身差だな。」
「ああ、最内にいたのか。この絶好の芝コンディションならやっぱり内が有利だよな。」
「まあな。俺のは今のレースじゃ最低人気だったが何とか残したぜ。」
これはオッサンの腕も大きいな。
「ここまで露骨だとなんかやる気無くすよな。」
「まあそう言うな。くじ運なんて気まぐれなもんさ。それに今回は12頭で済んでるんだ。」
確かにそう言われるとなあ。
もっと出てくる可能性だってあったんだからな。
「第一お前は一番人気馬に乗ってるわけだから馬の能力が認められてるって事だぜ?感謝しなよ。」
「当然感謝はしてるさ。」
ローズ家と仕上げてくれたオーエンのオッサンとリナにな。
当然相棒にもな。
ただ最終的な人気はまだわからねえ。
グラジエーターもやっぱり売れてるし、古馬だって強い。
「だがようアニー。俺だってレースをあきらめたわけじゃないぜ。
出るからには一泡吹かせてやるつもりだ。
当然お前にもな。」
「ああ、そりゃ当然だ。アタシだって絶対負けねえ。明日を楽しみにしてな。」