国王杯 スクーリング
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国王杯 開催週 移動日 早朝
場所:オーエン厩舎前
語り:俺
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さて、今日は王立競馬場に移動か。
他に二頭出るとの話だったけど、馬運車を待っているのはリナに引かれた俺一頭。
今回は前程の見送りはいない。
まあ当然だろうな。
一生一度しか出られないレースというわけでもないんだし。
それでもリナと仲が良いスタッフ達は来てくれていた。
みんなそれぞれ俺やリナに声をかけてくれたし、俺を撫でてくれた。
そろそろ馬運車が来る頃かな?と考えていると、奥からハインケルでもグローヴァーでもない馬が一頭やってきた。
そいつはラージワンだった。
一瞬こいつも出るのか?と思ったけれど、馬主が逮捕されてる状態で出られるわけがない。
「ナイト、やっぱり気になる?ラージワンはね、隣の国の馬主さんに買われたみたいだよ。
だからうちの厩舎にいるのは今日でおしまい。」
そうなのか。こいつが殺処分にならなくて本当に良かった。
こいつとは今後国際交流のレースで会うかもしれないな。
そんな事を思っていたら、俺を運ぶ馬運車がやってきた。
俺がリナに引かれて乗り込んでいたら、向こうもこっちをじっと見ていた。
向うも俺の事を覚えているのだろうか?それとも単に見ていただけだろうか?
俺が完全に乗り込んだことをリナが合図すると、扉を閉められ馬運車は出発した。
スタッフ達は前回同様に手を振って俺達を見送ってくれた。
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国王杯 開催週 移動日 昼
場所:王立競馬場 出張馬房
語り:俺
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「今日からレース当日までここにいるんだよ。
後の二頭はレース当日にやってくるけど、ナイトは別に寂しくないよね?」
とリナは説明してくれた。
俺は別に他の馬と話せるわけじゃない。
まあ馬を眺めて分析するのは趣味の一つだが、出来なくてもどうという事は無い。
「明日はコースの下見をするからね。
明後日はアニーが来てくれるよ。
そこで最終調整をするからね。」
ほう。アニーがくるのか。
競馬場で最終調整というとジャパンカップに来た外国馬が軽い調整をするのに近いのかな?
まあ明日を楽しみにしよう。
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国王杯 開催週 スクーリング 朝
場所:王立競馬場 芝コース
語り:俺
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まずリナを乗せてコースの下見に出て来たわけだが・・・
うーむ。これは思ったより大変そうだ。
ここは俺が日本で行った事があるどの競馬場とも違う。
と言うよりは海外の話だけは聞いた事がある競馬場に近いと言った方が良いかも知れない。
今リナはゆっくりと俺をスタート地点に誘導している。
そして止まった。
「ナイト、ここからスタートするんだよ。」
おいおい、スタートから早速下り傾斜かよ。
「で、ずっと下るんだ。ちょっと長いよ。」
俺はリナに促されるまま歩いて坂を降り始めた。
長い、ひたすら長い。ずっと続く下りだ。
で800mくらい進んだだろうか?
そこでリナは俺を止めた。
「ここが下りの底だよ。
で、ここから右に回って登って行くからね。
アニーが上手くやるとは思うけどあんまり外にいちゃダメだよ。」
わかった。そこは了解した。
リナは俺に進むように促した。
こうして回ってみると緩やかだけど結構大きなカーブだな。
400mくらい進んだだろうか?リナはカーブの出口の所で俺を止めた。
「ここで他のコースと合流するの。
ここはちょっと平坦だけど、直ぐに登りになるからね。」
またリナに促されて俺は進んだ。
「ここのストレートは登りと平坦が連続するけど殆どが登りだね。」
そうか、なんか二段階になってる感じだな。登り→平坦→登りだな。
リナはまた400mくらい進めて俺を止めた。
「で、ここから最終コーナーだよ。
最後まで登りが続いてゴールはてっぺんにあるの。」
俺は右回りの最終コーナーを回って、そのままなだらかな上り坂を登ってゴールした。
感想としては・・・難コースだな。
多分俺が聞いた事があるあのコースに似ているけど、そこは貧乏人の俺には一生訪れる機会が無さそうな競馬場だ。
出来ればもう一回周って復習したいところだが・・・と考えていたら、
「ねえナイト、もう一周する?」
とリナが覗き込みながら聞いてきた。
ああ勿論だ。
是非お願いするよ。
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国王杯 開催週 スクーリング 昼
場所:王立競馬場 出張馬房
語り:俺
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さてお待ちかねの新聞タイムだな。
と思っていたらリナが来てくれた。
「ナイト。余程の事が無い限り12頭全部出そうだよ。
主な馬を一応紹介するね。えーとその前にね。」
「これがナイトだよ。前よりちょっと白くなったよね。」
そう言ってリナが紙面をタップして俺の姿の立体映像を浮かび上がらせてくれた。
やっぱりこっちの新聞は凄いな。
リナは次々に有力馬を浮かび上がらせてくれた。
「これがグラジエーター。」
やっぱりこいつは良い馬だ。立体映像でも本当に見栄えがする。
「これがレスター、これで今回の三歳は全部だよ。」
こいつは会うたびに良くなってる。また成長したのか?
「じゃあ古馬行くね。これがうちのハインケル。調子も良いし脚質も自在だし強いよ。」
そいつは稽古をつけてもらってた俺も実感してる。
「これもうちの馬だね。グローヴァーだよ。ハインケルより一歳年上でこっちは差し脚が武器。」
こっちも強いけど、勢いではハインケルの方が上だな。でも騎手が怖いな。
「で、これがブルーザー。年はグローヴァーと同じだね。古馬のG1馬はこれで終わり。」
立派な馬体だけど、この馬は最近不振なんだよな。
「でね、G1は勝ってないけど最近好調なのがこのコロネ。唯一の牝馬だよ。先行馬みたいだね。」
牝馬は斤量が軽いから油断ならないな。
「後はどうかなあ?」
まあ半分近くが強敵というだけでこっちは頭が痛いけどな。
実際の状態は当日のパドックで確認するかな。
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国王杯 開催週 スクーリング 夜
場所:王立競馬場 出張馬房
語り:俺
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今日回ったコースを俺なりにまとめてみると、形そのものは条件特別の時に走った2200mのコースに似てるオムスビ型だ。
でもスケールはこっちの方が断然大きくて2400m走っても全体を一周しない。
高低差はあの時の4倍強もあって、パワーが要求される。
このコースでは勾配そのものは下りの方がきつくて登りの方が緩い。
今回は2400mの距離では、最初の800mで下って残りの1600mで登る。
こういうコースに向いてるのは、やはりパワーがある馬で勿論スタミナもあるに越した事は無い。
パワーと言っても馬体が大きくてパワーがあるだけじゃなくて全体の重量(馬体重+斤量)に応じたものが備わっているかが重要になる。
つまりパワーを全体の重量で割って、その数値が大きい馬が有利になるはずだ。
ここまで考えたら昨日の朝馬運車の所で出会ったラージワンを思い出した。
あいつなら一番向いてそうだ。
だが折り合いも重要だよな。
その点有利なのはレスターか。あいつの反応の悪さがここでは利点になりそうだ。
今日のコース巡りで思ったのは、無駄なコースロスやスタミナのロスを極限まで避けないと勝機は無いという事。
自分なりにポイントをまとめると、
・最初の坂を調子に乗って降りて行くと間違いなく途中でバテる。
特にスタート直後は勢いがついてるから要注意だ。
・とにかく道中は我慢が必要
勝負所は最終コーナー出口あたりからだな。
そこまで死んだふりが出来るのか?
という所だろう。
でも逃げ切りによる勝利も望めない事も無い。
俺は三歳だから斤量が軽い。
古馬に比べて余計な荷物を背負ってない事は何よりの強みだ。
だから軽量を生かしてそのまま逃げ切る事も出来なくは無い。
だがグラジエーターの存在が気にかかった。
ハンスの方がこれを考えてそうだからだ。
結局実戦で自分が対戦した相手を想定してしまう。
でもまあ俺なりにポイントは抑えておいた。
後はアニー次第だな。
おやすみ。