ランカスターカップ スタート前
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ランカスターカップ パドック周回
場所:パドック
語り:俺
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リナに引かれて俺はパドックに入ってきたわけだが・・・
今日は特別な日だからか、いつもは誰もいないパドックの真ん中のサークル内に馬主の集団がいる。
ぬおっ!何で殺気を漂わせたエリスがいるんだ?
ちゃんといつも以上に着飾ってるし一見平穏そうだが、これは絶対に何かあったぞ!
バイト先のチーフの機嫌を察する事が死活問題に繋がってた俺にはよくわかる。
よく見るとその隣にいる緑髪のエリスと同じ年くらいのエルフもそんな感じだ。
他の馬主は和やかに談笑したりとお祭りムードなんだけどなあ・・
ん?何か下卑た感じの奴らもいるなあ・・
エリスの視線を追うとそいつらに向かってる。
あいつら何かしたなら早めに謝らないと黒焦げにされた上にピンヒールで踏まれるぞ。
パドックの周りも人が随分多い。
当たり前だろうけどトライアルの時とは比較にならない。
もしリナに新聞を見せてもらってなかったら、あのオヤジを探し出すだけでも一苦労だったな。
周回中に何回か周りを見回してみたがあのオヤジはいない。
まあ今回は特に用事があるわけじゃないんだが、いないならいないで何となく気になる。
敵情視察をすると、一番良く見えるのはやはりグラジエーター。
何と言うか年誤魔化してないか?こいつ。
最初に会った時同様随分迫力のある馬体だし、雰囲気はまるで古馬のものだ。
体重も俺よりは確実に30Kg以上はあるだろう。
いや?もっとか。
それに落ち着きもあるし本命を背負うだけの事はある。
ラージワンもいかにも切れそうな感じがある。
名前と違って小さな馬体だが意外とパワーもありそうだ。
ペドロもタイプはラージワンと似た感じなんだろうが、馬格はこっちがある。
でも雰囲気とかはラージワンの方がずっと上だ。
レスターは前の時よりも更によく見える。
ひょっとして上がり目はこいつが一番あるんじゃないか?
フランジャーも良い馬だ。
思ったより距離がもちそうな馬体をしてるしこいつも油断ならないな。
バイエルは言うほど良い馬か?
俺は好みじゃない。
シルバーバレットはすごくいい。
雰囲気ならラージワンにも劣らない。
でも左回りはからっきしなんだろう?
俺としては先行馬ではグラジエーターとフランジャーが、差し追い込み馬ではラージワンとペドロが相手だと思う。
だがレスターの成長度合いが不気味に映る。
何かあるとすればこいつだな。
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ランカスターカップ パドック周回
場所:パドック
語り:エリス
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G1出走という事で私もヴィルマもケイトもパドックのサークル内にいます。
結局ここまでミストラルの尻尾を掴むことはできませんでした。
ヴィルマが『こいつらがパドックに行った隙にロッカーエリアにある証拠を確保しよう』などと小声で言ってきましたが、私とケイトの二人がかりで止めた事は言うまでもありません。
それにしてもバカですか?この娘は。
全員があの場を引き払うなんてありえない事です。
間違いなく留守番を何人か置いているでしょう。
何となくヴィルマという娘は余計な事をさせずに周りに対して愛想よく振る舞っているときが一番有能だと思えてきました。
外見だけは良いわけですからね。
そこを最大限に生かせばよいのです。
ナイトがリナに引かれて周回しているようですが、トライアルの時より少し良くなって出来は今回がピークと言って良いでしょう。
まさか本当にここに出る事になるとは・・
少々感慨深いものがありますね。
そんな事を考えていたら停止命令が出て騎手達が馬の方へ駆けてきました。
ナイトは丁度私の前で止まりました。
先生もいつの間にか私の横にいらっしゃったようです。
そこにアニーが駆けてきて、リナに介助を受けてナイトに跨りました。
折角なので一声かけるとしましょうか。
「アニー。レースでは頼みましたよ。
先生、リナ、出来れば表彰式でお会いしましょう。」
「任しときなよお嬢様。なっ相棒。」
そう言ってアニーはポンポンという感じでナイトの肩を軽く叩いています。
何となくナイトがアニーに返答と言いますか何やら反応している気がしますが気のせいでしょう。
「はい。お嬢様。私達もぜひそうありたいと願っております。」
と先生はお答えになりました。
リナも遠慮がちに「はい。お嬢様。」と答えてくれました。
周りを見るとヴィルマもケイトも私達と同じ様に関係者に声をかけているようです。
ミストラルもこれだけたくさんの目に囲まれたらこの場では何もできないでしょう。
仕掛けてくるとすればこの後でしょうか?
さていよいよ本馬場入場です。
私達は馬主席に戻るとしましょう。
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ランカスターカップ 本馬場入場
場所:地下馬道→本馬場
語り:俺
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オーエンとリナに引かれて俺は賑やかだったパドックを出て地下馬道を歩いていた。
丁度良い明るさで落ち着ける空間ではあるけど、ここもトライアルの時より人が多い。
警備やらメディアやら様々でみんな通り過ぎる俺達を見ている。
「先生、すごいですね。」
リナが左右を見回しながらそう言った。
「まあな。G1中のG1だ。スタンド前に出るともっとすごいぞ。」
「そうだぜリナ。こんな所で凄いなんて言ってたらスタンド前に出たら気絶するぞ。」
オーエンとアニーにそう言われてリナは「そ・そうですね。」と返すのが精一杯のようだ。
やがて上り坂になって俺達はスタンド前に出た。
スタンドは大観衆で埋まっていた。
俺より先に出たグラジエーターが返し馬に入った途端に怒号の様な声援に競馬場全体が包まれた。
本当に凄いなんてもんじゃない。
「おい。オッサン!リナ!コースに出たらすぐにこいつを放せ!
こいつは大丈夫だとは思うが念のためだ!」
アニーが大声で二人にそう言うと「ああわかった。」「わかったわ。」とオーエンたちも答えた。
実際周りを見ると大歓声に驚いて立ち上がろうとしたり興奮してる出走馬も少なくなかった。
俺達はダートコースを横切って芝コースに出た。
そこでオーエンとリナはロープを外して「頼んだぞアニー。」「アニーお願いね。」と鞍上のアニーに言ってきた。
アニーは「任せとけ!」と二人に答えると俺を4コーナー方向に誘導した。
俺は返し馬に入ってそこそこの速度でその場を後にした。
その時俺の名前がアナウンスされて後ろ姿が場内ビジョンに大写しになるとグラジエーターの時ほどじゃないけれど、大きな声援が観客から湧いた。
嬉しいねえ。俺にも応援してくれる人がいるのか。
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ランカスターカップ 返し馬
場所:3-4コーナー→待機所付近
語り:俺
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俺は4コーナーに向かってる時にある事に気が付いた。
トライアルの時に比べると随分芝のコンディションが悪い。
なんというか芝がまばらになっているというか地肌が見えてる所もあった。
そして4コーナーに行くとそれは更に酷くなっていた。
特に内側の剥げかたが酷い。
恐らく3コーナーもそうなんだろうな。
そう思いながら3-4コーナー中間まで行くと想像以上にコースは荒れていた。
これはコース取りを間違うと随分な消耗を強いられそうだ。
待機所までゆっくり戻ろうとするとレスターの騎手がこっちをじっと見ていた。
でも視線に気づいたアニーがレスターの方を見たら馬の方向を変えて待機所に向かって行った。
「何だよクルーズのやつ。」
アニーは不満げにレスターの騎手をそう呼んでいた。
そうかあの騎手の名前はクルーズというのか。
レスターとは2回当たって全部勝ってるせいか騎手の事までは厩舎でも話題になってなかったな。
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ランカスターカップ 返し馬
場所:内馬場ゴール手前付近
語り:ケイン中尉
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もうすぐ俺の借金生活も終わる。
それだけじゃない。
他所の土地でのんびり出来るくらいの金も手に入る。
高飛びの準備も出来たし後はスタートを待つのみだ。
仕掛けを施した兵士4人はゴール手前100から適当に間を開けて配置しておいた。
兵士は内馬場を警戒しているからコースには背中を向けている。
俺は兵士達を指揮する関係上コースの方を向いてるからレースの様子がわかる。
サミュエルとの段取りはこんな感じだったか。
「グラジエーターが勝ちそうならこいつを押せ。
そうでないなら何もするな。」
「もしグラジエーターが沈んでもあんたらの馬以外が勝ちそうならどうする?」
「そんな心配はいらん。あの馬以外俺達の馬に敵うはずがないからな。
レースが終わった時には勝利は俺達ものだ。
そうなりゃこいつを押しても押さなくても金は払ってやる。」
「それとこのタスキ留だが・・・」
こんな感じにサミュエルのやつは偉そうに言ってきた。
こうして見るとなんかペンに似たスイッチで押しボタンがついている。
ここから見てグラジエーターが勝ちそうなら押せばいいし、ラージワンとかが勝つようならほっときゃいい。
気楽な仕事だ。
スイッチと一緒に受け取ったタスキ留は4人の応援要員の兵士に付けておいたし、準備は万端だ。