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ランカスターカップ 最終追い切り翌日

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ランカスターカップ 追い切り日 翌日夕方

場所:オーエン厩舎

語り:俺

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 最終追い切りの翌日の夕方、リナがまた夕刊を持ってきてくれた。


「ナイト。枠順決まったよ。」


 待ってました!


 これで俺なりに作戦を練る事が出来る。



「出走頭数は18頭のフルゲート。

 それでナイトはね。10番だよ。」

 

 おお、良い枠じゃないか!


「でも気になる事があってね。」


 ん?


「9番がバイエルで11番がシルバーバレットなの。

 シルバーバレットは速くて強いけど左回りが全然駄目。

 バイエルはどうかな?左回りで一応勝ってるね。」


 うーん。ちょっと厄介だぞ。


 バイエル次第ではあるんだが、シルバーバレットが外から被せてハナを取ろうとするならハイペースは必至だ。


 早く出たらこいつらに挟まれて、先行争いに巻き込まれるか下手すりゃ突っ張って逃げなきゃいけなくなる。


 でもモタモタしてると内外両方から馬群が押し寄せて良い位置が絶対に取れない。


 どっちも勘弁してくれ。


 これはじっくり考えなきゃな。



「それでね。他のライバルなんだけど・・・」


 おお、こっちの情報も大事だ。


「グラジエーターは5番、良い枠だね。

 ラージワンは1番、無駄なく回れるとは思うけど・・

 ペドロは14番、脚質からいけば問題無いよね。

 レスターは18番、今回は厳しいね。

 フランジャーは3番、前回のレース振りから行けばいいんじゃないかな?

 全体で見たらレスター以外は上々じゃないかな。」



 まあ確かにな。


 グラジエーターは言う事無しの枠だな。


 先行争いの2頭を行かせて大名マークで道中進める。


 スタートをしくじらなければ、こいつが間違いなく一番の強敵だ。



 ラージワンやペドロはあの狭くて直線の短いコースで先行有利の流れを追い込んだ馬だから、普通に考えれば、今度は間違いなく有利だろう。


 ただ追込馬には一瞬の切れ味を行かすタイプと息の長い末脚を発揮するタイプがある。


 前者だと意外と直線の長いコースは駄目だったりする。


 こいつらはどっちなんだ?


 まあでも前者を期待しない方がいいな。



 フランジャーというやつは更に馴染みがないけど、厩舎のエルフの雑談だと、裏街道の重賞レースで終始3番手を追走して、直線で抜け出してそのままレコード勝ちを収めたやつだな。


 先行馬だけじゃなくて、マークして追走していたやつは全部潰れて、2着は人気薄の極端な追い込み馬だったらしい。


 こういうやつって知名度は無くてもかなり強い場合が多い。


 油断は大敵だ。



 レスターはいつもいい位置の、しかも内を立ちまわって無駄なくレースをしているイメージがある。


 そんなレースは今回は無理だろうな。


 紙面を見ると印は殆どついてないけど、戦った者の実感としてはあの馬相当強いぞ。


 絶対に何かしてくるはずだ。



 因みに俺の印は5人の予想の内、俺の世界の新聞で言えば最高の評価が▲で2つ、△が2つ、残りの一人は無印だ。


 まあこんなもんだろう。



「ねえナイト。私たちここまで来たんだね。

 私は未勝利を勝ってくれてお別れしなくて済んだだけでも嬉しかった。

 それが3歳最高峰のレースに挑めるようになるなんて今でも信じられない。」


 リナは俺の鼻面を撫でながら、感慨深げにそう言ってきた。


 そうだな。


 そう考えたらすごい事だよな。


「私は贅沢は言わないよ。

 勝てなくてもいい。着順なんてどうでもいい。

 ちゃんと無事に帰ってきてね。」

 

 最後にリナはそう言って厩舎を出て行った。




 さて、これから色々考えるべき事が山積みだ。


 今の俺には更にやるべき事まで加わる。


 泣いても笑っても今回が本番。


 本当ならガチガチの緊張ものなんだろうが、命がかかった未勝利戦に比べれば屁でも無い。


 今晩はバカども邪魔しに来るなよ。




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ランカスターカップ 追い切り日 翌日夕方

場所:オーエン厩舎前

語り:アニー

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 うーん。参ったぜ。


 アタシはその辺をうろついていた馴染みの記者を捕まえて、新聞を貰ってその紙面を読んでいる。


 普通に見れば絶好枠なんだが両脇がなあ・・・・


 こうして紙面を見ると改めて事態の深刻さを実感する。



 今朝枠順の抽選会にオーエンのオッサンと行って、オッサンがその枠を引き当てた時は大喜びだったんだが、後の抽選でまさか逃げ馬二頭に挟まれる事になるとは・・・


 しかも更にその内と外にグラジエーター以外の先行馬が3頭もいやがる。


 これだったら前回と同じ大外の方がましだったか?


 ナイトのゲートの出足はこのメンバーでもトップクラスだ。


 だからいつもみたいにポンと出たら先行争いに確実に巻き込まれる。


 それどころかシルバーバレットとバイエルにバチーンと挟まれる。


 特に今回のシルバーバレットの関係者の怨念は凄まじいからな。



 とは言えのんびり出たら、1コーナーまでの間にどんどん後ろに下がる事になる。


 そうなると下手すりゃ最後方近くまでに下がる事になりそうだぜ?


 確かにナイトの末脚の持続力と破壊力は大したもんだが、今回の相手に通じるか?


 アタシの実感としては、通じるとも言えるし、そうでないとも言える。


 あーもう!イライラする!



 仕方ない。


 オッサンの所に行ってじっくり相談するか。


 アタシは重い足取りで厩舎の事務所に向かった。




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ランカスターカップ 追い切り日 翌日夕方

場所:マーリン伯爵家 本邸

語り:ケイト

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 今日はお互いの健闘を祈ると言う事で、何故か3人だけの小さなパーティを開いている。


 ヴィルマの提案なんだけど、どうやら私達3人が集まる時は中立地帯という事で、これからもうちに集まる事になりそうだ。


「では、お互いの健闘を祈って乾杯!」


 ヴィルマがそう言って音頭を取った。


 私もエリスも一応合わせたけど、エリスはなんとなく居心地が悪そうだ。



「ヴィルマ。今日は一体どういう風の吹きまわしですの?」


「え?3人揃ってランカスターカップに持ち馬を出すなんて、そうそうある事じゃないでしょ?」


「まあ、そうですけど・・」


「格闘技の試合の前だって、敵味方一緒のパーティがよく開かれるじゃない。

 私達が開いたって誰も文句言わないわよ。」

 

 まあ私はパーティに関してはトラウマになりそうだけどね。


「でも競馬会による公式パーティが昨日あったばかりですのに。」


「私達はお互いの親から出席を禁止されたでしょ!」


「まあ、そうですけど。」


「それともエリスは私のお酒が飲めないって言うの!?」


「酔ってますわね?」


 エリスの言う通り、確かにヴィルマの目が据わっている。


 乾杯の一杯目でこれとは・・・


「酒は酔うためにあるのよ!文句ある!」


「少しはわきまえなさいな!ここはケイトの屋敷なのですよ!」


「だからってねえ・・・・」



 私は二人の喧嘩を眺めながら、潜入した日の事を思い出していた。


 ある人達との約束で、二人に隠し事をしなければならなくなった。


 エリス、ヴィルマ本当にごめんよ。


 私は事が終わるまで君達に嘘をつくよ。




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