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ランカスターカップ 最終追い切り

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ランカスターカップ 追い切り日 

場所:調教コース

語り:俺

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 今日はランカスターカップの最終追い切りだ。


 その証拠に俺の背にはリナじゃなくてアニーが乗ってる。


 ここ最近一緒に走っているジュリアは放牧に出て行ったから今日のパートナーは違うはず。


 さて今日のパートナーはどこだ?


 俺がそう思って左右を見回していると、G1古馬二頭がやってきた。


 今日は二頭とも俺と同じ厩舎のラッドが乗っている。


 リナはオーエンとコース脇から様子を見ているみたいだ。



 三人はお互い目配せをしただけでいきなり追い切りを始めた。


 今日は2頭が同時スタートをして俺が追いかける展開の様だ。


 アニーはリナと違って時計は見ていない。


 先行した二頭の位置を目で確認し終えたら、「よし、行け」と合図を送ってきた。


 あいよ。


 俺はコースに出て先行二頭を追った。



 先週みたいにムチャな差は無かったが、二頭にはなかなか追いつけない。


 さすがに古馬だ。


 地力がある。


 コーナーの出口でアニーのムチが飛んできた。


 俺はそれを合図に更に加速して追込む。


 そして徐々に差を詰めて並んだ所がゴールだった。



 やはり地力のある相手二頭だと簡単にはいかない。


 こっちはレースが近いから俺には体重の軽い騎手で、古馬には体重のあるラッドを乗せて、加減はしてくれてたとは思うけど、なかなか差し切る所までは行かなかった。


「まあ、こんなもんだろ。」


 俺から降りるときのアニーの一言で俺も「まあいいか。」と思えた。


 それにしても俺って強い奴とばかり併せ馬してるな。



 例によってアニーはオーエンと何事か話している。


 まあ大事な時期だしじっくりやって欲しいよ。


「ナイト行くよ。」


 いつの間にか近くに来ていたリナが俺を促した。


 ああわかった。


 やるだけの事はやったし、あとは当日だな。




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ランカスターカップ 追い切り日 

場所:オーエン厩舎

語り:エリス

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 さて最終追い切りが終わっていつもの視察です。


 厩舎に来た私はナイトの様子を見ています。


 馬体を見ても雰囲気を見ても、どうやら順調そうです。


 これも先生やリナのおかげでしょう。


 私も餌を特別に送ってきた甲斐があると言うものです。


 それにしても、ほんの数カ月前には競走馬引退まで考えた馬が、数日後には3歳最高峰のレースに挑もうとしているのです。


 全く予想できない展開と言うのはこの事を言うのでしょう。


 やはり感慨深いものがあります。



 だからこそ、何の支障もなく全力で走って欲しい。


 この前の様な薄汚い連中の妨害等あってはならない事です。


 今度あの様な者達を見つけたら灰に変えてやります。




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ランカスターカップ 追い切り日 

場所:オーエン厩舎

語り:俺

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 な・なんだ?エリスの背中に炎の様なものが揺らいでるぞ?


 俺何か怒らせるような事をやったか?


 なんか知らないけどごめんよ!




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ランカスターカップ 追い切り日 

場所:オーエン厩舎 応接室

語り:アニー

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 さて、ランカスターカップの直前ミーティングだ。


 馬主を交えての相談事はこれで最後になる。


 今日はお嬢様か。


 公爵様よりはやりやすい・・・ってわけでもねえな。



「おひさしぶりです。お嬢様。」


「こちらこそご無沙汰しておりました先生。」


「では早速対策会議を行います。

 出走馬も有力馬は当初の予定通り揃いそうです。

 ただラージワンの騎手がキースに代わりまして・・・」

 

「ナイトが勝った条件特別で、道中3番手になった逃げ馬のスポートをうまくなだめて2着に持ってきた騎手ですわね?

 油断のならない相手ですわ。」


「はい。ベテランらしいその場に応じた的確な判断や修正力はかなりのものです。」


 確かにそうだ。


 アタシから見てもキースのオッサンの巧さはタダもんじゃねえ。


 本当に何をしてくるか予想がつかねえ。



「展開としては逃げ宣言をしているシルバーバレットか、前走単騎逃げで良い所があったバイエルが前に行くでしょう。

 ただ出脚に関してはシルバーバレットの方が上です。

 前走のバイエルは押し出されての逃げでしたし、生粋の逃げ馬ではありません。

 どちらかと言えばシルバーバレットが逃げる確率が高そうです。」


「ハンスのやつはその二頭の後ろだな。」


「そうだろうな。グラジエーターは出足が速いしハンスもスタートの巧い騎手だ。

 必ず良い位置を取ってくるだろう。」


 オッサンも同じ考えか。


 どこにつけるのか?これ次第で勝つ確率が随分変わりそうだぞ。



「でもランカスターカップは必要以上にハイペースになる事が多いレースではありませんか?」


 そうなんだよ。お嬢様良い事言うぜ。


「はい。その年の出走馬によりますが、今年は多分ハイペースでしょう。」


「ではナイトは追い込みに回った方が良いのでしょうか?」


「そうとも言い切れないんだよな。お嬢様。」


「といいますと?」


「馬場とか色々な条件があるんだが、場合によってはある程度ハイペースでもあまり後ろだと届かない事がある。

 まあ先行馬達が何も考えずにガンガン飛ばしたら先行馬総崩れなんて事もあるけどG1じゃ殆ど無いな。」


「難しいものですね。」


「まあそれに関しちゃアタシとオッサンに任せてくれねえか?お嬢様。

 幸いにしてナイトは逃げ差し自在だ。

 馬群だって平気になったし能力も高い。

 直前まで色々考えてみるし、下手すりゃゲートが開いてから作戦変更なんて事もあり得る。」

 

「わかりましたわ。頼みましたよアニー。」


「ああ。全力を尽くすぜ。」



「ナイトのコンディションはどうだ?リナ。」


「はい、好調を保っています。」


「ならいい。悪くならなければ上々という所だろう。」


 まあそうだな。


 アタシから見てもこれだけ使っててこの状態を保ってるんだから上々だと思う。


 ただハンスの馬は今年これで3戦目。


 成長はともかくコンディションの面では、まだ上がり目がありそうなんだよな。


 こればっかりは仕方ねえか。




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ランカスターカップ 追い切り日

場所:オーエン厩舎

語り:俺

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 今日はいつもより遅い時間に、リナが新聞の夕刊を見せてくれている。


 今日の追い切り情報が出ているからだろうな。


「ほら、ナイトの記事が出てるよ。」


 そう言ってリナが俺の写真をタップして見せてくれた。


 外から見ると俺はこう見えるのか。


 これはちょっと興味深い。


「先生のコメントもあるよ。」


 どれどれ?


「えーとね。『体調も悪くないし自信はそれなりにあるが、エリオットステークス組に敬意を表して、あくまで挑戦者として臨みたい』だって。」


 まあ一番きついレースをしてきたG1組が上位に見られるのは当然の事だ。


 自信がそれなりってのがちょっと引っかかるけどな。


 G1組か。


 やはり強敵なんだろうな。



「シルバーバレットの陣営が凄いよ。『今度は何が何でも逃げる』って。」


 前走落馬したやつだな。


 そりゃ悔しいだろうからな。


 最低でも自分のレースはしたいだろうよ。



「そう言えばラージワンの主戦騎手が騎乗停止になってるね。だから今回はキースさんみたい。

 ナイト覚えてる?スポートで条件特別に一緒に出てた人だよ。」

 

 ああ、俺が逃げた時に3番手で冷静に騎乗してたベテランだな。


 こういうタイプが一番怖い。


 極端な追い込み馬をある程度の位置に持ってきたり色々な工夫を凝らしてくる。



「ナイトはどういうレースをするのかな?そう言えば3連勝の内容が全部違うんだよね。」


 そうだな。捲り追い込みに逃げに中団からの差し切り。全部違う。


 その中でアニーとピッタリと呼吸があったのがこの間のトライアルの一回だけ。


 今度はそんな状態じゃまず勝てないな。


 なんとかアニーと合わせないとな。




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