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ランカスターカップ 週明け

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ランカスターカップ 開催週明 

場所:マーリン伯爵家 本邸

語り:エリス

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 さて、週が明けて私の謹慎も解けました。


 スカーレットカップの結果ですが、うちのジュリアは3着。


 5番人気でしたから結果は上々という所でしょう。


 勝ったのはヴィルマの所のアマゾネス。


 こちらは一番人気がそのまま入ったようです。


 でもレース後の疲れが酷いそうで、すぐ放牧に出す予定とか。


 ひょっとするとこのまま引退もあり得るかもしれません。


 ヴィルマの所は牡馬牝馬共に当たり年の様で、少し羨ましいです。



 今日はまたマーリン家に集まる事となりました。


 本来はうちに二人を呼ぶつもりでしたがケイトのたっての願いでそうなりました。


 まあいいでしょう。


 話しさえ出来ればどこだって構いません。



「二人とも呼びつけてごめん。」


 応接間に通された私とヴィルマを見るなりケイトが謝ってきました。


「いえ。問題ありませんわ。」


「私も別に。」


「なら良かった。この間の潜入調査の事なんだけど。

 期待した様な情報は得られなかった。」


「ええ。それは先週も聞きましたわ。」


「うん。」


「ただ注意して欲しいんだ。」


「何をですの?」


「ミストラルのメンバーに馬主席で会っても知らない顔をして欲しい。」


 ケイトも妙な事を言うものです。


 相手が絡んでこない限り、私はそうするつもりでした。


 でもヴィルマはそうでもなさそうです。


「状況証拠から行けばあいつら絶対怪しいのに手も出せないなんて。あーあ悔しい!」


 バカですか?この娘は。


 証拠も揃ってないのに手を出せばこちらが罪に問われます。


 この様子だとミストラルのメンバーに会った時に過剰な反応を示しそうです。


 当日は是非ケイトに抑え役をお願いしなければ。


 ただ最近は以前程の抑止力が無くなってる気がしますが・・・



「それより気になる事があるんだ。

 実はミストラルのパーティに王立軍の軍服を着た男がいた。」


「王立軍が?」


 魔法やそれに準ずる方法でのレースの妨害や操作を防ぐために、王立軍は当日の競馬場の警備を担っているはずです。


「ひょっとして軍に買収されてるやつらがいそうって事?」


「可能性はあるね。」


「でも私達はこの件からは手を引くようにと言われたはずだよね?」


 とヴィルマが言いました。


 私もお父様から散々言われました。


「そうだけど王立軍の人員は一番どこに配備されると思う?」


「重要人物が多い馬主席ですわね。」


「そういう事。馬主席にはミストラルも多い。と言う事は?」


「何かやらかすために接触する可能性があるってことね。」


「わかりましたわ。軍人とミストラルのメンバーの動きはそれとなく追う事にします。

 いいですか?ヴィルマ。暴走は厳禁ですわよ?」


「あんたに言われたくないわよ!」




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ランカスターカップ 開催週明 

場所:オーエン厩舎

語り:俺

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 ここの所毎日リナが新聞を読んだり見せたりしてくれている。


 先週は当然の事ながらスカーレットカップについての特集で、ランカスターカップの情報はどちらかと言うと脇扱い。


 でも今週は本番だからデータ収集をしっかりしないとな。



「ナイト。これ昨日のスカーレットカップの結果。

 ジュリアは良く頑張って3着になったんだよ。すごいねえ。」

 

 確かにな。


 G1で三着なんてそうそうなれるもんじゃない。


「今週はナイトの番だね。一緒に頑張ろうね。」


 そう言ってリナは俺の鼻面を撫でてくれた。


 ああ当然だ。



「それでね。ナイトは覚えてるかな?グラジエーターって強い馬。

 あの馬が本命なんだよ。」


 そう言ってリナは記事のグラジエーターの写真をタップして目の前に浮き上がらせてくれた。


 この新聞はいつ見てもすげえ。


 グラジエーターなら覚えてるさ。雰囲気からして3歳とは思えなかった。


「それとね。それ以外の強敵はこの3頭。」


 そう。その情報を聞きたかったんだ。


「バイエル、ラージワン、ペドロの3頭だよ。グラジエーターとこの3頭がエリオットステークスの上位馬。」


 そう言ってリナは3頭の写真を次々とタップして見せてくれた。


 確かにどれもよさそうだ。


 特にラージワンってのが良さそうだな。



「前回のエリオットステークスはね。

 スタート直後にアクシデントがあって2番人気の逃げ馬が落馬してね。

 バイエルが押し出されて相当なスローになったの。

 で二番手につけてたグラジエーターが余裕で抜け出して勝ったの。

 バイエルはそのまま逃げ粘って2着、ラージワンとペドロが並んで追い込んできたけど3~4着が一杯。」

 

 成程そういうレースだったのか。


 バイエルってのがまた逃げるならある程度前にいないと厳しそうだな。


「その時スタート直後にぶつけられて落とされた馬がね。今度も出てくるシルバーバレットって言うの。

 でも左回りはあまり得意じゃないみたい。ほら、ナイトと同じ芦毛だよ。」


 今度はシルバーバレットの映像が出た。


 俺の墨色も段々と薄くなっているけど、こいつは俺よりずっと白いな。



「もしこの馬が逃げるなら、そんなにスローにならないよ。

 ナイトは道中どこにいるべきかな?難しいよね。」


「ああ、その通りだ。」


 聞き覚えがある声がしたからそちらを見ると、アニーが厩舎の入り口に立っていた。


「アタシの言った通りにしてくれてるんだな。」


 アニーはそう言いながら俺に近づいて鼻面を撫でてくれた。


「うん。パドックで今度やったら何らかのペナルティがくる可能性があるって、競馬会から言われたから・・・」


 そうだったのか。


 うーん。思ってた以上に迷惑をかけてたみたいだな。


 正直スマン。


「まあアタシは毎回笑えたからちょっと残念だけどよ。」

 でどうだ?読んでやった感想は?」


「まあ返事をするわけじゃないからよくわからないけど、大人しく聞いてくれてるよ。」


「返事をしたらこええじゃねえか。」


「そうだね。アハハハハ。」


 いやまあ、あれだ、返事はしないけどしっかり聞いてるよ。


 何せ俺自身の問題だからな。



「今週はいつも通りアタシが調教に乗る。だからよろしくな。」


 そう言ってアニーは俺の肩をポンポンと叩いた。


 ああ。こっちこそよろしくな。


 そういやアニーは口はがらっぱちだし、気も強いけど馬の扱いは丁寧だよな。


 必要以上にムチも入れないし本当に最低限だけ。


 厩舎スタッフにも気に入られてるし、いいやつだよな。


 それに機転がきく。


 未勝利戦も並みの騎手だったら途中からあんな感じで対応してくれたかどうか・・・


 あれは文字通り俺の命がかかった戦いだったから、本当に助かった。


 こいつが俺の主戦で良かったのかもな。


 贅沢を言うならレース前にアニーと作戦会議が出来たら最高なんだが、それは流石に無理だな。




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