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潜入5

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パーティ当日夜(勤務終了5分前)

場所:ミストラル パーティ会場

語り:レイ

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 時計を見ると勤務時間が終わる5分前。


 会場の人数も当初の1/3程になり、随分余裕が出てきました。


 マネージャーに様子を見に行く許可だけでも貰いに行ってみます。


「すみませんマネージャー。」


「何かしら?」


「そろそろアンジェを迎えに行こうと思うのですが。」


 私がそう言うとマネージャーは腕時計を確認して、「まあいいわ」と許可をくれた。


「では失礼します。」


 と私が一礼するとマネージャーは私に「今日の報酬。あなたもそのまま上がっていいわ。」と言って小切手を渡してくれた。




 私は廊下に出ると周りを確認してからバックアップと連絡を取った。


「これから迎えに行きます。」


『ああ、頼む。今から指示する方法で本人と合流したら一緒に集合場所に来てくれ。場所は・・』


 私は聞き終えると控室に行って自分とケイト様の着替えを回収しました。


 VIPルームに急がなければ!




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同時刻

場所:ミストラル パーティ会場 VIPルーム

語り:ケイト

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 8戦目、今度は既定の5回までカード交換が行われた。


 二人とも今までで一番気合が入っていた。


 そしてカードが広げられた。


 一瞬の静寂の後、「これでまたイーブンだな。」とジェイドが言った。


 今度はジェイドの勝ち。



 この結果を受けて歓声が一段と大きくなった。


 私はブラを取らなければいけない・・・


 私がサムに紙幣をブラに押し込まれた後、テーブルの前に回ろうとしたら、サムから「ステージの上でやれ。」と言われた。


 私がスポットライトが当たっているステージの上に戻ると歓声が一層大きくなった。


 確かに恥ずかしい。


 顔から火が出そうだ。


 でも折角手にした情報をフイにする事は出来ない。


 次の勝負の結果次第で情報がフイになる確率は50%。


 でも今ここで脱がなければ100%になってしまう。


 私は覚悟を決めた。



 私は一度大きく息を吸ってから、背中のホックに手をまわして外した。


 ブラの肩紐は両方とも肩から落ちた。


 私は左手で乳房を隠しながら右手でブラを抜き取って横に置いた。


「おいおい。手で隠すなんてありかよ!」


「そうだぜ!往生際が悪いぜ!」


「いや。これはこれでありだぜ!手ブラってやつか?結構エロイ!表情だってすごくいい!」


 見物人達は口々に野次を飛ばしてきた。


 でもその内容の殆どが私を非難するものだった。


 私は両腕で胸を庇った。


 覚悟していたとは言え、あまりにも恥ずかしすぎる!



 ジェイドがサムに顎で「なんとかしろ」と言いたげに私の方を指した。


「仕方ねえな。」と言いつつサムが私に近寄ってきて、私の右腕を掴んで上に引っ張り上げた。


 辛うじて左腕で隠しているものの、この体勢ではいつまでもつかわからない。


「いい加減覚悟決めろよ。おい。」


 見物人の大声援に後押しされたのか、サムはそう言いながらもう片方の手で私の左腕を外しにかかっている。


 そのせいで掌が右の乳房から外れた。


 サムにはモロに見られた。


 サムの視線が私の乳房に注がれているのが良くわかる。


 角度によっては見物人の誰かにも見られたかもしれない。



 その時だった。


 ドンドンドン!という激しいノック音が廊下へ続くドアの方から響いてきた。


 サムはそちらに気を取られて私の腕から力を抜いた。


 私はその隙にサムの腕をふりほどいて、また両腕で乳房を隠した。


 サムは「チッ」と舌打ちをしてから廊下に向かって「何だ一体!」と怒鳴りつけた。


 するとドアの向こうから「オーナー大変です!今警察が来て、”既定の時間がとっくに過ぎているのに、終業する様子も無くまだ営業しているとは何事か”と言っています。」と聞こえてきた。


 この声はレイ?


 いいタイミングで来てくれた。


 ひょっとして私は助かったのか?


「そんなもん幾らか掴ませて追い返せ!」


「そうしようとしたら”私や警察全体を愚弄する気か!”と責任者の方が激怒されまして。」


「何?ちっ、そいつは大方どっかのお堅い貴族の子弟だな?あいつらは全く融通が利かねえ!」


「どうしますか?”このままだと責任者と関係者をまとめて逮捕する”と大変なお怒りようです。」


 この一言が効いたようだ。


 見物人達は口々に「おいおい、もうお開きにしようぜ」とか「やばいぜ!ここにいる事は女房には内緒なんだ」とか口々に騒ぎだしている。



 サムはジェイドの顔を見て「おい、決着はどうする?」と聞いた。


 確かに勝負はイーブンで決着はまだ付いていない。


「もういいや。最初の通りにしようぜ。

 俺の本業は相場師だ。

 こうしてケチがついた話からはとっとと手を引くに限る。

 俺はそうして今の財産を築いたんだ。」


 私は心底ほっとした。


 これで私の苦労も少しは報われる。



「よし、みんな最初の予定通りだ。」


 とサムは見物人達に呼びかけた。


「ああ、わかったわかった。」


「あのねーちゃんのオッパイ見たかったな。」


「バカ!面倒事はごめんだぜ。」


 それぞれ見物人達は好きな事を言っていたが殆どのやつは警官との面倒事を避けたがっているようだ。


「オーナー!どうしますか?このままだと警官が踏み込んできます。」


 と更にレイの声が追い打ちをかける。


「わかった!今から俺が降りて説明すると警官に言え!」


「わかりました。そうお伝えします。」


 サムは机からカギを取り出すと「頼む。」と声をかけて、ロニーに向かって放り投げた。


 ロニーがドアを開けると見物人達はぞろぞろと部屋を出て行った。



 サムは私の方に振り返ると、「今日の報酬だ。おいジェイド半額は後で返すからな。」と言って高額紙幣の束を一つ私に投げて寄越した。


 ジェイドも頷いて納得しているようだ。


「お前のおかげで結構場が盛り上がったからとっときな。

 ただなあ、最後の出し渋りがなきゃ2つやっても良かったんだが、その分は半額に減額だ。

 お前もすぐに支度してここを出ろ。

 マネージャーにはギャラは渡したと伝えておくがそれでいいな?」

 

「はい。」


「ならいい、さっさと行け。」



 私はブラをつけて、周りを確認しながら調度品につけていた送信機も回収した。


 そして金の入った袋を持って見物人達と共に廊下に出た。



 イヤリングとハイヒールは置いてきた。


 あんなもの履く気にもつける気にもならない。


 廊下にはレイが待っていたけれど下着しかつけていない私の姿を見てぎょっとしていた。


 当然だろう。


 私が逆の立場でもそうなる。



 レイは周りを見回してから素早く私に寄ってきて「こちらへ。」と手を引いてきた。


 それは見物人達とは逆の方向で普段なら目立つ行動なのだが、警官との関わり合いが嫌な者にとってはどうでもよい事なのだろう。


 誰も私達を気にも留めなかった。




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パーティ当日 夜 パーティ終了

場所:ミストラル パーティ会場 踊り場

語り:ケイト

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 レイに連れられてきたのは非常階段の踊り場。


 ビル風が結構な速度で吹き抜けて、下着しか着けてない者にとっては正直寒い。


 ひょっとしてこの格好を通行人に見られるかと心配したけど、ここから街の灯は見えても、こちらは真っ暗だから誰も私達を見る事は出来ないと確認出来てほっとした。



「ケイト様こちらをどうぞ。」


 そう言ってレイは私の着替えを渡してくれた。


 この女性用スーツは最初に着た時は動きにくいと思っていたけれど、半裸よりは随分ましだ。


 一応靴も入っていたけど忌々しいハイヒール。


 仕方ないこれも履くか。



 私の着替えが一通り終わるとレイは「あのう大丈夫ですか?」と控えめに聞いてきた。


「ああ、何とかね。」


 そう答えたものの多分説得力は無い。



「あの、情報は手に入りましたか?」


「ああ、私達の推測を裏付ける物や色々ね。相手がこの通り行動してくれたらこちらにとって随分有利になる。」


 今機材はショーツからこのスーツのポケットに移している。


 本当に苦労して手に入れて良かった。


 私はポケットの中で機材を軽く触りながらそう思った。


 これでエリスもヴィルマも大喜びだろう。


 ただ、私は色々不愉快だったけど・・・



「それにしてもレイ。よく考えたね。」


「はい?」


「警官が来たなんて嘘でまんまとあいつらの気を引いて。」


「嘘じゃありませんよ。」


 レイはさも心外だと言わんばかりにそう答えた。


「え?」


「警官が来たのは事実ですし、やり取りも本物です。

 ただマネージャーの対応を側で聞いていたか無線で聞いていたかの違いだけです。」

 

 どういう事だ?

 

「パーティの終了時間とここのホールの終業時間を比較したら、終業時間を大幅にオーバーしている事がわかったんです。

 それで警察の中でも特に厳しく仕事熱心な方に来て頂いたんです。」


「そうなのか。」


「はい。」


 レイは随分得意そうにそう言った。


 でも何か違和感がある。


 私は疑問をそのまま口にしてみた。


「レイ。君は今エリスの指示で動いているわけじゃないね?」



「そこまでわかったなら上出来だ。さあ、それを渡しなさい。」


 と声が上から聞こえて来て、男が2人上の階から階段を下りてきた。


「あ・あなた方は・・・」


 私はその二人と面識があった。






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