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潜入4

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パーティ当日 夜

場所:ミストラル パーティ会場 VIPルーム

語り:ケイト

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 ステージに素足で戻った私はさっきとは違って固唾を飲んで勝負の行方を見守っている。


 こいつら二人とも大嫌いだが、なんとかサムに頑張ってもらわなければ困る。



 今の方針だとバイエルの作る速い流れに追込み二騎が勝負をかけると分かっている。


 だがもしジェイドが勝てば方針変更となる。


 こいつらは私がいる前ではそんな話はしないだろうし、私は裸にされた時点でこの部屋から追い出されるだろう。


 そうなったらさっき得た情報の価値は大いに下がってしまう。


 それどころか、ショーツに隠した機材がバレて、折角入手した証拠が無くなってしまう。


 裸にされた上に証拠までなくなるなんて正に踏んだり蹴ったりだ。



 誰かを人質にすれば逃げられない事は無い。


 でもそんな事をすれば、こいつらは警戒を強めて計画を全て見直して、場合によっては様々な証拠隠滅を計るだろう。


 そうなれば、こちらはまた一から調査を始めなくてはならない。


 本番までの時間を考えると、とてもそんな余裕は無い。


 癪だがサムに勝ってもらうしかないし、私も耐えなくては・・。




 3戦目、今度はお互い二度のカード交換で済んだようだ。


 また睨み合ってカードをテーブルの上に広げた。


「はっはっは。俺の勝ちだな。」


 そう言って勝ち誇ったのはジェイドだった。


 私がテーブルの横に進み出て、前かがみになると、またジェイドが紙幣を押し込んできた。


 でもさっきと違って、こいつは手を抜く時に胸を掌で撫でてきた。


 あまりのおぞましさに思わず「ひいっ。」と声が出た。


 するとまた部屋中が下卑た笑いで溢れ返った。


「おいおいジェイド。ちょっとやり過ぎだぜ!」


 と見物人が騒ぐ。


「まあまあいつもの事じゃねえか」


 とジェイドも軽口を叩く。


 こいつら・・・



 私はさっき同様見物人の前に出てイヤリングを外した。


「おい姉ちゃん。次からが本番だな。」


「いい脱ぎっぷり期待してるぜ。」


 と見物人は口々に私へ野次を飛ばしてきた。


 本当に忌々しい。




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パーティ当日 夜

場所:ミストラル パーティ会場

語り:レイ

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『成程事態は分かった。

 すぐにそっちに行く。

 お前も無理はするなよ。レイ。』

 

「はい、お願いします。」



 このやりとりから随分経ちます。


 ケイト様がVIPルームに行かれてから、バックアップ要員と連絡を取ろうとしましたが、マネージャーの監視の目がきつくて結局既定の休憩時間まで会場を出る事は許されませんでした。


 なんとか連絡を取って応援を呼びましたが間にあうかどうか。


 ただ、バックアップ要員も堂々と踏み込むわけにもいかず、今は会場の外で待機しているのでしょう。


 ケイト様どうかご無事で。




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パーティ当日 夜

場所:ミストラル パーティ会場 VIPルーム

語り:ケイト

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 4戦目、見物人の下卑た視線がさっきより熱を持ってステージ上の私に注がれている。


 次にサムが負けたら私はワンピースを脱がなくてはならない。


 こいつらはそれを期待しているのだろう。


 二人は今度は既定の五回まで交換し合った後、テーブルの上にカードを広げた。


「くそっ!」


 そう言ってテーブルを叩いたのはサムだった。


 バカが!こいつやる気あるのか?



「おおっやったぜ!」


「こうでなくちゃな!」


 次々と見物人から歓声が上がる。


 仕方がない。


 私は前に進み出てサムから胸に紙幣を押し込まれると見物人の前に移動した。



 私はワンピースを脱ぐために背中のジッパーに手をまわした。


 私の動作一つ一つに対して「おおっ」とかいちいち歓声が上がる。


 でもジッパーが動かない。


 どうやらジッパーにヘアウイッグの髪が何本か巻き込まれて動かなくなっているようだ。


「どうした?」


 サムが怪訝そうに聞いてきた。


「いえ、少々お待ちを。」


 私がそう答えると、「おいおい、潔く脱げよ!みっともねえぞ!」とか「手伝ってやろうか!」とか見物人からまた野次が飛んできた。


 うるさい!こっちだって色々必死なんだ。


 そうこうしているうちに、なんとか巻き込まれた髪を切る事は出来た。


 でもやはりジッパーは動かない。


「おい。いい加減に・・」


 サムがそう言いかけた所で私は見物人のテーブルにあるものを発見した。


 私はそこにつかつかと歩み寄り、「ちょっとお借りします。」と言ってそれを手にした。


 その瞬間「おいおい!」とか「うわあ!」とか言いながら見物人は立ち上がって私から距離を取った。


 サムまでが立ち上がって、「おい落ちつけ。」なんて言っている。


 ジェイドは同じ様に立ち上がっていても、顔面蒼白になってこちらを見ているだけで絶句している。


 私が手にしたのは葉巻の先を切るために用意されたナイフ。


 葉巻愛好家には葉巻カッターを使う人が多いが、どうやらこいつはナイフを愛用しているらしい。


 でもそのおかげで助かった。


 こいつらはどうやら私が刃物を持って暴れると勘違いしているらしい。



 私はワンピースの胸元に左手を差し込んだ。


 左手で素肌と服の間に隙間を作って右手のナイフを逆手に持ち直して刃先を下にして、内側から外に向けて隙間にねじ込んだ。


 そして左手で服に隙間を作ったまま、左手と右手を一緒に下へ少しずつ下ろして行った。


 するとビィィッという音とともにワンピースは縦二つに裂けていく。


 刃先を途中で脚のスリットへ方向を変えてそこに達した時、体を締め付ける様に纏わりついていた服は左右に別れていた。


 両肩の布にも同じ様に刃を入れるとワンピースはボロ布になって床に落ちた。


 そして半裸になった私が元にあった場所にナイフを戻した瞬間「おいおい脅かすなよ」とか「寿命が縮んだぜ」とかそういう声が聞こえてきた。


 だが一番多かったのは「普通に脱ぐよりエロかったぜ!」とか「興奮したぜ!」とかそういった類の声だった。


 何故だ?



 後ろを振り返ると、サムとジェイドも一安心したのか呆けたように私を見ている。


 視線を正面に戻すと見物人達が高額紙幣を持って次々と私に群がってきていた。


 私が身構えるより早くこいつらは私のブラやショーツに次々と紙幣を押し込んできた。


 こらよせ!やめろ!


 変な触り方をするな!


 こいつらは紙幣を押し込むと「気に入ったぜ姉ちゃん!」とか、「俺の女にならねえか?手当は弾むぜ!」とかろくでもない事を言いながら離れて行った。


 本当に下品が服を着て歩いているような奴らだ。


 何とかショーツの後ろ側は守ったけど危なかった。


 機材がばれたら元も子もない。



 私がテーブルからステージの上に戻ろうとすると、「それだけあると大変だろ。金はここに入れておけ。」とサムは私に袋を渡した。


 親切は有り難いが、それよりお前は勝負に勝て!



 今の所サムが一勝ジェイドが三勝・・・圧倒的に不利だ。




 私がステージに戻った瞬間部屋の明かりが落ちた。


 何事だ?


 そう思ったら次の瞬間2つのスポットライトが左右から半裸の私を照らした。


 見物人からは指笛や囃したてる声が更に大きくなった。


 こちらからは見物人の顔は良く見えないけれど、異様に興奮している様子は伝わってくる。


 さっきよりも私の姿が際立っているし、恥ずかしさが更に増した。


 見物人は私を見ながら口々に勝手な事を言っている。


「胸もでけえし、ケツもいい感じだぜ。」


「こうして見ると本当にいい女だぜ。」


「おお、肌の色がほんのり赤く染まって行くぜ。」


「ああ、たまんねえな、おい。」


 うるさい!


 口に出すな!



「よし、ここからが本番だ」とそう言ってスポットライトの下からサムが出てきた。


 こいつのせいか。


 余計なことばかりしやがって!




 そして5戦目


 今度もまた既定の五回までカード交換を行った後、テーブルの上にカードが広げられた。


 今度はジェイドが悔しがった。


「だが俺がまだリードしてるぜ。」


 そう言いながらジェイドは札束を一つサムに放り投げてから私に手招きした。


 私が近づいて前かがみになると、私から見て右側のブラのカップに紙幣を押し込んできた。


 それだけでも不快なのに、こいつ指先で右側の肩紐まで外しやがった。


「キャッ」っと私は悲鳴を上げてその場にしゃがみこんだ。


 対処が速かったから多分こいつらには私の胸は見えてない。


 見物人からは笑い声と一緒に「おいおいまだ早いぜ」とか「惜しい」とかの声が上がる。


 こんな事態じゃ無ければこんなやつら・・・




 6戦目、今度もまた既定の五回までカード交換を行った後、テーブルの上にカードが広げられた。


 今度もまたサムの勝ち。


「これでイーブンだな。」とサムが勝ち誇ると「けっ。」とジェイドは悔しそうにまた札束を放り投げた。


 私が警戒しながら近づいてかがむと、さっきと同じ様に右側のブラのカップに紙幣を押し込んできた。


 でも今度は追い打ちをかけてこなかった。


 それに挟まれている紙幣の感触が何か違う。


 カップから紙幣を取りだすと2枚あった。


「さっきの詫びだ。」


 とジェイドは私を見ながらそう言った。




 7戦目、今度は3回のカード交換で、テーブルの上にカードが広げられた。


 今度もまたサムの勝ち。


「リーチだぜ。」とサムが勝ち誇った。


「ふん。」とジェイドは悔しそうにしていたが、「勝負は最後までわからないぜ」とまた札束を放り投げた。


 私が近づいてかがむと、今度も同じ場所に同じ様に紙幣を押し込んできた。


 それだけで私を見ようともしない。


 追いつめられてもう余裕がないんだろう。


 頼むからこのまま負けてくれ。





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