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潜入1

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翌日 夕方

場所:ミストラル パーティ会場

語り:ケイト

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 悪夢だ。


 話し合いの翌日、今私は潜入工作のためにミストラルのパーティに来ている。


 まあここまでは良しとしよう。



 問題はいつもの格好と違って、今日は露出の高いスタッフユニフォームに身を包んだ上に、アンバー色でロングのヘアウイッグをつけている。


 靴だってハイヒールだし、そのせいで本当に動きにくくて仕方がない。


 エリス達はこんなのをいつも履いていて平気なのだろうか?


 唯一の助けはエリスの所のレイが来てくれている事か。


 彼女も変装していて一見誰だかわからない。


 私達は二人ともパーティスタッフとして飲み物を配って歩いている。


 時々参加者達の話に耳を傾けるけど、商売の話とかどこかの女の話とか私達に関係ない話題ばかりの様だ。


 それにしても忌々しい。


 こんな恰好どう見ても私には似合わないと思うのだが・・・



「よくお似合いですわよケイト様。いえ、アンジェ様。」


 私の考えを見透かしたようにレイが寄って来てヒソヒソと話しかけてきた。


「冗談はやめてくれ。」


 と私も小声で返した。




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 3時間前の事。


 私はヴィルマに呼ばれてエリスと共にアボット家を訪ねた。


 ヴィルマは応接室に通された私達の姿を見るなり、こう息巻いてきた。


「あいつらのパーティの情報を掴んだわよ!」


「それはいつですの?」


「今日よ。」


「随分いきなりだな。」


「参加者リストはありますの?」


「そんなものはないけど、ランカスターカップ上位入着組の3人は出るみたいよ。

 これで何もないと思う方がおかしいじゃない!」



 確かにヴィルマの言う通りだけど問題が幾つかある。


「昨日報告させて頂きましたけどお父様からは一切動くなと言われましたわ。

 その上レイを使っての調査活動まで中断させられましたし。

 私個人としてはとても残念なのですけどね。」

 

「うちも同じだ。父さんはついでにこの件は誰にも言うなとまで言ってきた。

 これはエリス同様報告済みだと思うけど。」


「あんた達それでいいの?」


「それは確かに納得はできませんが・・」


「それとこれとは別問題だよ。

 君だって動くなと言われたんだろう?」



「そうよ。でも手はあるわ。」


「どういう手ですの?あなただって手札を封じられたのでしょう?」


「私とエリスが悪目立ちして動けないなら。」


 そう言いながらヴィルマは私を見た。


 エリスはかなり不満そうな顔をしながらも我慢している感じだ。


 多分ヴィルマの考えを確かめる気なのだろう。


「ちょっと待ってくれ。君達同様私も馬主席では一緒に目立ってしまっているのだが・・・」



「だからよ。ケイトはその格好で目立ってる。

 これを利用しない手は無いわ。

 エリス手伝って頂戴。」

 

 そう言ってヴィルマは私を隣室へと連れ出した。



 私はそこで二人がかりで女性用のスーツに着替えさせられ、メイクをされアンバーのヘアウイッグまで着けられた。


 一通りの作業が終わって鏡を見せられた時にヴィルマの意図が正確にわかった。


 確かにこれだと日頃から接している者でない限り、私だとわからないだろう。


「ねっ、かなりの美人じゃない?ちゃんと出るとこ出てるし。」


 そう言ってヴィルマは私の胸やお尻を触ってきた。


 悲鳴を上げるほどではないけれど、いくら同性とは言えやめてほしい。


「そうですわね。折角の美貌を男性の格好で隠していたなんて勿体ない。」


 とエリスまで同意している。


 正直今までの格好に比べて動きづらい。


 何とかしてくれ。



 そんな私の思いを無視してヴィルマが私に一枚の紙を手渡した。


「そこが会場で、アンジェという名でパーティスタッフに応募しておいたわ。

 近くまでうちの者が送って行くから、後は現地で情報を集めて頂戴。」

 

 その紙には私の仮の名前や、応募者の集合場所が書いてあった。


 因みに集合時間は一時間後。


 それにしてもヴィルマは私が行けなかった時の事は考えていなかったのだろうか?


「ご苦労をかけますわケイト。本当はヴィルマがやるべきですのに。」


 とエリスが本当に憐れんだ目で私を見ている。


 でも止める気は無いんだね・・


「少しでもすまないと言う気があるから、こうして何から何まで段取りしたのよ!

 また蒸し返す気?」


「じゃあ行ってくるよ。」


 そう言って私は部屋を出た。


 この上喧嘩の仲裁なんてやってられない。




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 私が会場のスタッフ控室へ着くとチーフと思われる人物から仕事の内容や休憩の時間やらありきたりの説明を受けてから、着替えのユニフォームを支給された。


 そのユニフォームは、体にピッタリと張り付きラインがモロに出るような服で胸元も開いている。


 やれやれ。まさか現場で更に動きにくい格好をさせられるとは・・・



 私が着替えようとすると、横にスッと誰かが立った。


 ふと横を見るとヒソヒソ声で「お久しぶりですケイト様。」とその人物は言ってきた。


「誰だ?」と私もヒソヒソ声で返すと、「私です。エリス様付のレイです。」と相手は答えた。


 その後私はレイに手伝ってもらって、更に変装に手を加える事になった。


 エリスも人が悪い。


 レイが来てるなら最初にそう言ってくれ。




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パーティ当日 夜

場所:ミストラル パーティ会場

語り:ケイト

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 私とレイはお互いつかず離れずの距離感を保って飲み物を配っていた。


 時々参加者の会話に耳を傾けるけど、まだ有力な情報は何もない。



 配る場所を広げてみるか。


 そう思っていたら、


「ちょっとあなた、アンジェと言ったわね。」


 とマネージャーが私を呼びとめた。


「はい。」


 そう答えたものの、ひょっとして何かばれたのか?


「主催者の方々があなたをご指名よ。

 すぐにVIPルームへ行ってきて。」

 

 VIPルーム?


 ひょっとしてそこで何かが?


 レイも気付いたらしい。


 こちらに歩み寄って来て「私もご一緒します。」とマネージャーに言ったけれど、「あなたにはあなたの仕事があるでしょう。」と一蹴されてしまった。


 レイはまだ心配そうにこちらを見ていたけれど、私はレイに「気にするな」と伝えたくて軽く頷いて見せた。



 そしてマネージャーにVIPルームの場所を聞いて、「では行ってきます。」と言ってから会場を離れた。


 今のやり取りでレイにもVIPルームの場所はわかったはず。


 エリスに連絡を取るのか、彼女自身が行動するのかそれはわからない。


 多分悪いようにはしないだろう。



 私は言われた通り2Fに上がりVIPルームと札が貼られた部屋のドアをノックした。







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