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トライアル2

△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race

ランカスターカップトライアル 返し馬

場所:本馬場

語り:俺

△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race


 返し馬でコースをある程度回ってみて改めて実感した。


 ここは府中にそっくりだ。


 府中の2400はG1が3つも開催される日本を代表するコースと言っていい。


 特徴は何と言っても最後の長い直線。


 長いだけなら新潟の方が長いけれど、こっちはダラダラ坂がある。


 先行馬にとっては足を止める厄介な坂なのだが、差し追込馬だって決して楽じゃない。


 この辺りのスタミナ比べも見どころだ。


 何ていつも考えてたけど、今日は俺が走るんだよな。


 変な感じだけど、すごく楽しみだ。



 強敵はレスターかな?


 他のやつは見た事無いからなあ。


 やっぱりさっきのオッサンの新聞見たかったぜ。


 まあいいか。ここは俺のホームグラウンドだと考えよう。


 大外で邪魔をされる心配もなさそうだし、今日はいいレースが出来そうだ。

 



△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race

ランカスターカップトライアル 返し馬

場所:馬主席(本馬場側)

語り:エリス

△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race


 さてコース側に来ましたが、ケイトはともかくヴィルマも当然の様な顔で同席しています。


 これはもう言うだけ無駄ですから諦めますが、何か最近の馬主席の噂によりますと私達は3人で1セットの仲良し三人組の様に見られているとの事。


 大変不本意です。



「エリスの馬が一番人気か。」


 とヴィルマ。


 さっき自分でその話題を中断しておきながら勝手なものです。


「そうだね。前走の勝ち方が凄かったし。」


 とケイトが答えます。


「レスターも強いけどなあ・・でもうちのグラジエーターはもっと強いわよ。」


「そうですわね。一番人気にはレスターがなるべきですわ。」


 と私が認めるとヴィルマは信じられないと言った表情でこちらを見ています。


 ついでにケイトも。



「一体どうしたのよ?エリス・・・自己顕示欲の塊の様なあなたが・・」


「あなたには一人称と二人称を間違える癖がおありの様ね。

 まあいいでしょう。単純な事です。人気を被ったら配当に旨みがありませんので。」


「配当?」


「ええ。当り馬券で厩舎スタッフの祝勝パーティの費用とか色々都合出来ましたの。

 あなたのおかげよヴィルマ。」


「な・・・」


「あなたとイレイザーかしらね。」


「バカにしないでよ!!」


 ヴィルマはそう言って席を立ってどこかへ立ち去りました。


 やれやれ人が折角感謝の意を示しているのに。


「エリス・・」


 ケイトはまたしてもお手上げのポーズです。




△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race

ランカスターカップトライアル スタート前→スタート

場所:スタンド前

語り:俺

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 スタンド前のスタート地点で俺は輪乗りの輪に加わっていた。


 周りを見た所、骨っぽく感じるのはやはりレスター。


 あと2~3頭調子がよさそうなのがいる。


 他には胴が詰まってどう見てもスプリンターにしか見えないのもいた。


 距離適性は体型だけでは測れないから何とも言えないけど、もし承知で使ってるなら酷いな。



 ファンファーレが鳴った。


 これは重賞専用の曲だな。


 今までのやつより更に凝っていた。



 次々と馬がゲートに誘導されて行くけれどゲート内で立ち上がるのがいたり、入るのをとことん嫌がるやつがいた。


 あーあ、奇数番の内枠のやつらは中で長く待たされて災難だな。



 その騒ぎも何とか収まり最後に俺がゲートに誘導されるとすぐに合図があってスタートした。


 俺はいつも通りのスタートを切ったけどさすがオープンクラスだ。


 俺以外にも4-5頭スタートが速いのがいて先行集団を形成していく。


 俺が少しづつ内に寄りながら馬群の外にとりついたら丁度窪みがあったからそこに入った。


 俺の内には一頭だけ。


 コーナーで3-4頭分外を回るのはだるいしな。


 後で響くのも嫌だし。


 どうやら位置的には大体7-8番手といった所だ。


 悪くない。



 1-2コーナー中間で先頭にいるのはさっきのスプリンター体型のやつだ。


 2コーナーを回って向正面に入ると、そいつは随分速くてもう8馬身以上の差をつけて単騎で逃げている。


 持つのか?と思ったが潰れる確率の方が高そうだ。


 放置で良いだろう。


 このコースは1コーナーから向正面の中間点近くまでなだらかな下りになっている。


 所が中間点手前でいきなり登りの急坂が用意されていて、先行馬が1-2コーナーから向正面を調子に乗って下ってるとそこの登りでスタミナを消耗する。


 更にそこを上りきるとまた3コーナー中間まで少し角度がついた下りがまた続く。


 そこからは登りだ。


 言ってしまえば二重の罠があるようなもんだ。


 だから追いかける必要は無い。


 それにアニーはさっきから手綱を全然動かさない。


 多分俺と同意見なのだろう。


 そう言えば実戦でこいつと俺の考えが一致したのは今回が初めてじゃないか?


 今までよくこんなので勝ってきたな。



 後ろから気配を感じたのでそっちを見るとレスターがピッタリと俺をマークしているようだった。


 コースもラチ沿いに取っていて無駄が無い。


 これは騎手の腕がいいんだな。




△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race

ランカスターカップトライアル 

場所:向こう正面→3コーナー手前

語り:アニー(エリスズナイト鞍上)

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 こいつスタート直後にかかる所が一切なかったな。


 こりゃ驚きだ。


 しかも自分で馬群の窪みを見つけてコーナーを大周りしないようにしやがった。


 アタシも色々乗ってきたが、こいつは今までと違う。


 なんかこいつコースやレース展開を自分で読む事が出来るのかと疑いたくなるぜ。


 なんか面白くなってきたぜ。



 逃げ馬が単騎でぶっ飛ばしてるけどあいつはいいだろう。


 気になるのは馬群の先頭から好位のやつらとこっちをピッタリとマークしてるレスターだ。


 そろそろ3コーナー手前か。


 少しポジション上げるかな。


 と思ったけどやめた。


 ここは4コーナーまで待とう。




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ランカスターカップトライアル 

場所:3-4コーナー→直線

語り:俺

△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race


 3-4コーナー中間で異変は起こった。


 レスターが俺を内から追い越して前に進出を始めたのだ。


 そして直線に向いた時にはもう先頭に立っていた。


 逃げ馬は4コーナーで脱落してあっという間に下がってきた。


 まあ1000Mを58秒くらいで行ってたから仕方ないだろう。


 あいつはどう見ても1200くらいの馬だぜ。


 こんなとこ使ってやるなよ。



 先行馬でも力が無いものは同じ運命だった。


 今前にいるのはレスターと一緒に上がって行った他の有力馬だけだ。


 ダラダラ坂を上がりながら俺も前の馬達を追う。


 でも未勝利の時と違って相手のレベルもそれなりに上がってるから、あっという間に交わすというわけにもいかない。


 坂を登りながら一頭また一頭とじわじわと交わして行く感じだ。


 レスターとの差は少しづつ詰まっているものの、まだ距離がある。




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ランカスターカップトライアル 

場所:計量室

語り:リナ

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「先生。」


 計量室でレースを見ていた私は思わず先生の上着を掴んでしまいました。


 相手が上がっているとは言え、ナイトに未勝利の時の様な勢いが感じられなかったからです。


「大丈夫だリナ。ここの直線は長い。あと少しでナイトの射程に入るから見てなさい。

 ここはダイアナが得意としたコースだ。

 その子供のあいつを信じてやるんだ。

 お前が日頃から接してるあいつをな。」


 そうだ。先生の仰る通り私がナイトを信じなければ。


 ナイト。とにかく頑張って。




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ランカスターカップトライアル 

場所:直線→ゴール

語り:俺

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 坂の頂上近くで前にいるのは最内をピッタリと走るレスターと、レスターのスパートについて行った2頭だけになった。


 その中でレスター以外の2頭はもう完全にバテている。


 先行の利で何とか今の順位に踏みとどまっている感じだ。


 こいつらは敵じゃない。



 相手はレスターのみ。俺との差は3馬身も無かった。


 後ろから俺について来ているのはいるけど俺より脚色がいいのは一頭もいない。


 バテた先行馬を交わしていたら自然に順位が上がって来ているような感じだ。



 そして坂を登りきった所の残り300m辺りでアニーのムチが飛んできた。


 俺はそれを合図に最後のスパートをした。


 俺は馬場の真ん中を通って、最内で粘るレスターを持ち前の瞬発力で交わした。


 そこから少し走った所がゴールだった。




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ランカスターカップトライアル 

場所:ゴール後→計量室前

語り:俺

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 アニーは例によって1コーナー手前で俺の肩をポンポンと叩いて「いいレースだったぜ。本番も頼むな。」と言ってきた。


 ああ、こちらこそな。



 地下馬道を通って検量室の前に行って最近指定席の一着馬のエリアに誘導されると前回同様リナが満面の笑みで迎えてくれた。


 そして「今日もよく頑張ったね。」と前回同様褒めてくれた。


 うん。実に良い習慣だ。


 出来ればこれからも続けたい。



 リナの顔を見て急に実感がわいてきたけど、これで俺も重賞勝ち馬か。悪くない気分だ。



 アニーは俺から鞍を外して計量に向かった。


 量りを降りたアニーはそこでまた何かオーエンと話している。



 レースの結果は、俺は1着、2着のレスターとの差は2馬身半。


 3着は俺について来てた追込馬でレスターから4馬身差。


 俺とレスターが本番への優先出走権を得た。




△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race

ランカスターカップトライアル 

場所:計量室前

語り:アニー

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「今日もやってくれたなアニー。実に落ちついたいいレースだった。

 レスターのロングスパートにも惑わされなかったし、さすがアニーだ。」


 まあ褒めてくれるのは嬉しいんだが・・・


「どうしたんだ?」


「オッサン。こいつは想像以上の馬かもしれないぜ?」


「どういう事だ?」


「やる事にムダが無いんだ。」


「ムダが無い?」


「ああ。古馬でレースが近い事を察して自分で調整する馬がいるよな?」


「そうだな。自分で飼葉の量を減らしたりするやつはいる。」


「こいつはそんなもんじゃないんだ。

 今日だって無駄にテンションを上げない。かからない。

 さっきだって1コーナーで大周りをしないように自分で位置を見つけてたぜ。」


「本当か?」


「ああ。だから驚いてるのさ。」


「今にして思えば未勝利のスパートもかかったんじゃなくて・・」


「ああ。あいつなりのタイミングで出た可能性がある。」


「にわかには信じがたいな。」


「だが本物ならこれは大きな武器だぜオッサン。」


「そうだな。」


「それとな。本番前に頼みがあるんだが・・・」


 アタシは随分前から気になってた事をオッサンに頼んでみた。


 そんなに金がかかるわけでもねえし、多分聞いてくれるだろう。



△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race

ランカスターカップトライアル 

場所:馬主席(スタンド側)

語り:エリス

△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race△▼Race


「エリス、三連勝おめでとう。すっかり本格化したね。

 うーん。でもうちのは負けちゃったか。」


 とケイトが残念そうに言います。


「レスターも流石でしたわ。

 他の馬は皆レスターに潰されたようなものですし。」


「厩舎関係者から切れ味勝負だと分が悪いから早めのスパートから粘らせるって聞いてたけどね。

 最後はやられちゃったな。」

 

 ナイトとレスターはこれで優先出走権を得ました。


 ナイトは重賞勝ちを、レスターは重賞連続2着なので、ランカスターカップだけでなく秋の戦線も安心して参加できるでしょう。


「やっぱり、あんた達の馬が相手みたいね。」


 いつの間にか立ち直ったヴィルマがしれっと戻ってきています。


 そのまま帰ればよかったのに。



「今日はおめでとうと言わせてもらうわ。

 でも本番では裏街道より表街道を勝ってきた者の方が強いって証明してあげる。」


 そんなヴィルマの態度は、まるで漫画に出てくる悪者の様な感じです。


 この娘には似合いすぎて怖いくらいです。



 因みに馬券は大当り。


 でも今日は色々買うと赤字になりそうでしたので単勝1点のみです。


 それにしても馬券で赤字とか気にしだすなんて以前は無かった事です。


 ナイトのせいで私まで色々と変わってきたようです。


 これだけで重賞の祝勝パーティはきつそうですのでお父様にもいくらか負担して頂きましょう。


「さて、表彰式でも行ってきます。」


 私は席を立ってケイトとヴィルマに別れを告げました。


 いよいよ次が本番です。



<ナイトの出走レースについて:その3 トライアル戦>

 近い時期に開催されるG1レースに優先的に出走する権利を得るためのレースである。

 優先権を得られる頭数はレースによって違う。

 トライアルが重賞の時は、3歳限定の場合過去に大レースを勝った実績馬でも周りと同じ斤量で出る事が出来るため、過去の実績通りの着順になる事も少なくない。

 ただ実績馬の場合、本番への出走権は獲得賞金面でクリアしているため、余裕残しで仕上げて惨敗することもある。

 出走時点でG1への獲得賞金が足りない陣営にとっては最後のチャンスである事も多いため、本番同様あるいは本番に限りなく近く馬を仕上げてくる場合が多く、実績馬より先着する事も珍しくない。

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