トライアル1
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ランカスターカップトライアル パドック周回
場所:パドック
語り:エリス
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さて、今日も私は馬主席のテラスからパドックを見ています。
昨夜バカどもが起した騒ぎに関してお父様への説明やら色々あったので、寝たのは朝方近くになっていました。
ああ眠い。
でもまさかこんな日が来ようとは。
未勝利で結果を出さなければ引退させるつもりがあっという間に二連勝。
何と重賞レースで一番人気になっています。
二番人気はケイトの所のレスター。
本来ならば前走重賞二着の実績があるこの馬が一番人気で不思議は無いのですが、うちの馬が9馬身差という派手な勝ち方をしたせいで人気を被る事になりました。
まあでもあの着差は展開による所が大きいので、そこは割り引いて考える必要がありますが、これじゃ馬券で前回までの様な大儲けはあまり期待できそうにありません。
それよりも何とか二着以内に入ってランカスターカップの権利をしっかり取って欲しいものです。
それにしても眠い。
私が目を擦っていると、私と同じテーブルについているケイトが「さっきから眠そうだね。」と言ってきました。
「ええ。昨夜ちょっと。」
と言う私の答えに対して、
「遠足を待つ子供みたいに眠れなかったってわけ?」
と余計な声が。
変ですね?気のせいでしょうか?
「それよりもうちの馬が一番人気なんて・・レスターの方が実績がありますのに。」
「ちょっと無視しないでよ!エリス!」
ああもう。とうとう話に割り込んできました。
「イレイザーはさっきの条件特別で圧勝したのだから、さっさと帰るべきでしょう?ヴィルマ。」
「ほっといてよ!うちのグラジエーターが本番で相手をするのがどの馬になるのか見極めるためにいるのよ!」
確かにそれは正論です。
でもそれなら違うテーブルでもいいはず。
ヴィルマは例によって私の許可なく勝手に同じテーブルについています。
他の人のテーブルにつくときにはちゃんと許可を取る癖に一体どういうつもりでしょうか?
まあでも今日はケイトがいるから良しとしましょう。
この娘がいればヴィルマも抑えが効きます。
パドックの掲示板を見ると馬体はまた増加。
でもしっかり身が入った増加で申し分ありません。
ここまでしっかり仕上げてくれたのは先生とリナとアニーの三人です。
あの三人には感謝の気持ちしかありません。
でもあの騒ぎの直後に厩舎の応接室で先生からこんなお話がありました。
「誠に申し訳ございません。お嬢様。」
先生は地面に頭を擦りつけかねないほど恐縮されていました。
「いえ。大事には至りませんでしたし表をお上げください。」
「未遂に終わったとは言え、私の身内が起しました今回の不始末はお詫びのしようもございません。
もし、事態に気づかなければ、ローズ家の名に泥を塗る所でした。」
それは確かにそうです。
馬から禁止薬物が見つかればローズ家は勝つために手段を選ばない恥知らずと揶揄された事でしょう。
「ですから今週のレースが終わったら、厩舎を解散いたします。」
「先生!そんな!」
「ご心配なく。馬達の転厩先もちゃんと決めた上でそうさせて頂きますので。
ナイトもリナと一緒に受け入れてくれる所をご紹介いたします。」
「話が急すぎます。先生の責任感の強さには敬服いたしますが、ナイトがここまでの馬になれたのは先生あってこそです。
是非お考え直しください。」
「いえ。今では首にしているとは言え、至らない身内を厩舎スタッフに入れた私の責任です。
ですからこうするのが当然です。」
「ではせめて私の父と相談させてくださいませ。
結論はそれからでも遅くないと思いますわ。」
「・・・・」
「よろしいですわね?」
「ご面倒をおかけして申し訳ありません。」
先生はそう仰りながら私に再度頭をお下げになりました。
家に帰ってお父様に話をしてみると、直に先生と話してみるとのことです。
どの様な結論になるかはわかりませんが、ナイトにとって先生の元を離れるのは決して良い事ではないでしょう。
お父様の事です。
多分悪いようにはしないでしょう。
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ランカスターカップトライアル パドック周回
場所:パドック
語り:俺
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馬は4時間寝れば十分だと言うが、その通りの様だ。
昨夜のバカのせいでどうなる事かと思ったけど特に疲れも無い。
俺はリナに誘導されてパドックに出てきた。
さーていつもの酔っ払いのオヤジはと・・・
お、いたいた。
おーいオヤジ。俺だ俺。
いつもの様にオヤジに近づこうとしたら、リナが全身で踏ん張って俺を止めている。
「ナ・ナイト駄目。今度やったら怒られるだけじゃ済まなくなっちゃう。」
うーむ。そうなのか。
リナには迷惑はかけられない。
でも情報収集がなあ・・・
まあいい。
もしここが府中に似た所なら今までよりやりやすいはず。
今わかってるのはゼッケンを最後に渡されて、列の最後に並ばされたから多分18番の大外枠。
人気は一桁代は俺を含めて3頭。
まあ人気なんかかどうでもいいか。
そんな事を色々考えてたら、アニーがやってきて俺に跨った。
「よろしく頼むぜ。」
と言いながらポンポンと軽く俺の肩をたたくいつもの儀式が終わったら、いよいよ本馬場入場だ。
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ランカスターカップトライアル 返し馬
場所:本馬場
語り:俺
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抜けるような青い空。
広々として開放的な馬場。
そして最後の直線のダラダラ坂。
まあ3-4コーナーに大欅は無いけどな。
これは我が愛しの府中とそっくりじゃないか!
うーん。これだけでテンションが上がる。
まああんまり上げちゃいけないけどな・・
俺はこれから府中の2400を走ろうとしているんだ。
よーし一通りコースを見るか。
オーエンとリナから離れた俺はアニーを乗せて向う正面に向かった。
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ランカスターカップトライアル 返し馬
場所:本馬場
語り:アニー
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オーエンのオッサンまさか本当に厩舎を畳む気じゃないだろうな?
アタシに言ってくれたら、こうなる前にジェイクにちゃんと焼きいれてやったのに水くせえよ全く。
あっと。本番前だ。もう一回打合せの内容を思い出すか。
「オッサン。ナイトは逃げも追いこみも経験したからな。今度は中団で我慢させようかと思う。」
「ああ、それがいいだろう。余程の切れ味か実力差が無い限り1コーナー10番手以内じゃないと本番もきついからな。
その上で2着確保が絶対だ。やれるか?アニー。」
「アタシを誰だと思ってるんだ?
まあ最内みたいな極端な枠ならそれなりに戦法考え直すけどそれ以外ならいけるだろ。」
「頼んだぞ。」
「ああ。」
で今回は大外18番か。
まあ他の馬に邪魔されない格好の枠なんだが、前走行ったからかかる可能性もあるな。
まあいい。その時はその時だ。