第2章 ギルド入団試験
やっと出せた~。今回も手抜き感MAXの内容となっております。
もっと投稿ペース上げなきゃ(使命感)
――痛…… 頭がズキズキする……
えっと… ここどこだろう……
向こうに… 誰か……
――けて…
……え?
「お前たちはもう逃げられない…… 早くそいつをこちらに引き渡せ……」
――だ…れ、か……
「言え、さもないと……殺す!」
何? 何なの……?
――――助けて!
ガバッ!
「はぁっ…はぁっ……!」
「い、今の夢は……」
今、夢の中で誰かに呼ばれていた。狭くて暗い場所で、傷だらけの男の子に助けてって言われた気がする。そして、傷だらけの男の子を女の人が庇っていて、その女の人に鎧を纏った男が何かを囁いていた。
何だったんだろう。まぁ夢だしあんま気にしないでおこう。にしてもすっごく気持ち悪い終わり方だったな。鎧の男が女の人の首を――
うぅ…… 思い出したら吐き気が……
今更だが、私はここが自分の部屋でないことに気付いた。
う~ん、おじいちゃんが寝ている私をベッドまで連れて行けるわけないし、そもそもおじいちゃん家にこんな部屋ないしなぁ。
それじゃあまさか……誘拐?やばい、そんな気がしてきた。
昨日私は変な男に森を連れまわされ鳥に襲われた時に傷薬と称して謎の液体を無理やり飲まされた。きっとその液体に睡眠薬か何かが混ぜてあったんだろう、そのせいで頭が痛いんだ。私は深い眠りに落ち、この部屋に運ばれ今に至る――
我ながら名推理だ。しかし、これからどうしようか。電話はないし、犯人を捕まえてここから脱出するか?でもここかどこか分からないし外に出てもこんななにもなさそうな森の中じゃサバイバルなんてできないよ……
私はとりあえず誘拐犯が部屋に入ってくるのを待つことにした。
数十分して部屋の扉が開く音がした。
ギシギシという足音が、ゆっくり、一歩ずつ近づいてくる。
私は、しくじれば何をされるかわからないという恐怖と闘いながら、その時が来るのを待つ。
奴が布団に手をかけた。
……今だっ!
私はとっさに振り向き、布団の中に隠していた花瓶を誘拐犯の頭めがけて振り下ろす。
「うおりゃぁーーー!」
バリィィィン!
花瓶の割れる音がした。目をつぶっているのでよく分からないが、どうやら命中したようだ。
ドサッ
同時に、何かが倒れる音がした。あ……これ殺っちゃったかもしれない。
私はおそるおそる目を開け、音のした方を見た。するとそこには――
「あ、あぁ……」
そこには、頭から血を流し、うつぶせのまま動かなくなった男が倒れていた……
――が、あっさり起きあがってしまった。
「っ……なにすんだよサキ!俺じゃなかったら今頃殺人犯だったぞ!」
くっ!まだ生きてやがったのか!こうなったら今度は素手で――
え?
こいつ今確かに私の名前を呼んだぞ?
「な、なんで私の名前をあんたが知ってんのよ!」
私がそう言うと、男はハァッと小さくため息をつき、「やっぱりか……」と呟いた。男は腕を組んで少し考えたが、すぐに何か思いついたようで奥の部屋へと姿を消した。しばらくして、男は懐から分厚い本を取りだし、それを私に差し出した。
「何?これ?」
その奇妙な文字が書かれた本からは、異様な臭いを漂わせている。触れたくない、触れてはならない、そんなことを思わせる、恐怖心を煽ってくる臭いだ。
私が本を見つめていると、男は意味深なことを言った。
「お前が昨日の出来事を思い出すためのカギだ。」
記憶を開く――カギ
今まで私に何があったのか、この本を受け取れば全て思い出すことができる。そんな気がするのだが、私は本能的に本を拒んでしまい、なかなか手を出すことが出来ない。
「大丈夫、俺がついているから。何も怖がらなくて、いい。」
私は、なぜかこいつを信用できる気がした。男の言葉で、私は震える手を、ゆっくりと差し伸ばす。
指先が本の背表紙に触れる。すごく重たくて、ずっしりとした、金属のような冷たい感触が伝わってくる。その無機質すぎる本をつかみ取った瞬間だった。
私の中で、さっきまで封じ込められた物が解放されるように、昨日起こった出来事が私の頭の中に映し出される。刹那ではあったが、今もその情景はしっかりと脳裏に焼き付けられている。
「う、うっ、うあぁぁぁぁぁぁぁ!」
いろんな感情がこみ上げてきて、私は思わず泣き出してしまった。私はいっぱい泣いて、少し落ち着くと、泣いている間ずっとオーリアに懐抱されていたことに気がついた。私はすぐに距離をとる。
「な、なんだよ。」
「いや、だって…… 恥ずかしいし……」
私は恥ずかしさのあまり布団に潜り込む。その様子をみて、オーリアはくすっと笑った。
私はいじけた声で言う。
「何笑ってんのよ……」
「いやあ、サキもやっぱ女の子なんだなって思って。」
じゃあこいつは今まで私のことを男とでも思っていたのだろうか。腹が立つ。
「そりゃそうよ。てか、その言い方だとなんか私が男っぽいみたいじゃない!」
「そりゃそうだろ。男に暴力ふるう女の子なんて見たことないからな。それに相手は年上だし。」
「そ、そりゃそうだけどさ。」
言い負かされるのは嫌いなのでちょっと話をそらす作戦に出る。
「それより、朝ごはん出来てるんでしょ?」
「あ!すっかり忘れてた!冷める前に早くくっちまおうぜ。」
オーリアはそう言って、真っ先に朝ごはんを食べ始めた。このままだと私の分まで食べつくしてしまいそうだ。
「ちゃんと私の分も残しといてよね!」
まだ出会って1日しか経っていないのに、何年も一緒に過ごしてきたような、不思議な感覚だ。
そういえば、ここにきて一度も元の世界に帰りたいなんて思わなかった。それが良いことなのか悪いことなのか、私は良く分からないけど。でも、本当に彼がいてくれてよかった。
元の世界に帰るまで―― 案外早く帰れるかもしれないし、何年もかかるかもしれないし、残りの人生をこっちで過ごすことになるかもしれない。
それまで、よろしくね、オーリア。
「え~、というわけで以上が魔法が発動するの仕組みだ。理解できたか?」
「…んぐっ! ごめん、聞いてなかった。」
朝食を終えた後、オーリアは私の為に青空教室を開いてくれたのだが、うん、これがさっぱりわからん。
「言葉で言ってもやっぱわかんないか…… それじゃあ早速だが実戦に移るぞ。」
「え?マジ?早くね?」
言葉では分からんって言っても急すぎるわ。
「実戦っていってもそこらへんの雑魚を的にするだけだから大丈夫だ。死にはしないよ。」
「え~でもあんな厨二臭いこと言えないよ。」
私は口をとがらせる。
「でもお前盗賊たちをおっ払ったときに『フレア・エクスプローション!』とか叫んでたじゃん。」
オーリアが笑いながら話してくる。
「言うな!」
オーリアの顔にパンチをおみまいする。
「ふげっ!」
「あの時はあんたを助けるのに必死だったから勢いでいけたけど、普通にやってて魔法となえたことない一般人が普段あんなの詠めるわけないでしょ!」
あれは今思い出しても、黒歴史すぎて泣けてくる……
そういえば、少し気になってたことがある。
「そういえばさ、あの蜥蜴集団ってなんだったの?」
オーリアは頬をさすりながら言う。
「あぁ、あいつらはここいらじゃ有名な盗賊ギルドさ。」
「ギルド?何それ。」
さっきまで立っていて疲れたのか、オーリアは机に腰掛け、話を続ける。
「ギルドって言うのは、同じ趣味とか持ってる奴らが集まってできた集団みたいなものさ。政府から公認を受けているギルドは支援金や物資を供給されることがあるようだが、それ以外はメンバーの受け取った報酬金の一部なんかで経営することが多いから、仕事が来ない底辺のギルドは盗賊ギルドに成下がっちまうことも多いんだよ。ま、最初から強盗とか暗殺とかそういう仕事で金を稼いでいる闇ギルドってのもあるけどな。」
自分で聞いておいてアレだけど、なんか割とどうでもいい感じだった。
「へ~。この世界もいい人ばっかってわけじゃないんだね。」
「ああ。俺の周りには悪い奴しか集まってこねぇしな。」
「それって私のこと?」と言いかけたが、オーリアが神妙な顔をしていたので、言うのをやめておいた。
そして、もうひとつ私には気になっていたことがある。
「それで、あの…… そいつらは大丈夫…なの?」
私はあの時、恐怖であいつらを殺すことしか考えていなかった。
殺らなければこちらが殺られる。そう思っていたからだ。
しかし、あいつらがいくら悪人だとしても、殺すというのは決して正しいとは言えない。だから気になったのだ。あいつらが死んでいないかどうか。
「ああ、蜥蜴どものことか?」
私は少し震えた声で話す。
「うん。魔法で、死んでないかなって……」
私がそう言うと、オーリアはふふっと笑った。
「大丈夫。あいつら、目が覚めると一目散に逃げってったよ。」
それを聞いて、私は胸を撫で下ろした。
「良かったぁ。」
「サキがうらやましいよ。」
「えっ?」
突然言われてちょっと驚いた。
「だって、サキは蜥蜴たちのことを心配しているじゃないか。そうやって、相手のことを大切に思うことって、すごいなぁって思ってさ。」
そんなこと言われると照れちゃうよ。
「そ、そうかな?でもさ、オーリアも十分私のこと思ってくれてるよ。」
散々バカにされたり、物凄く大変な目にあったけど、オーリアは私のことを守ろうとした。ボロボロになっても私に「逃げろ」って一生懸命叫んでた。ちょっとむかつくところもあるけれど、本当に信頼できる私の仲間だ。
オーリアが小さな声で、「ありがとう」と言ったのが聞こえた。
こちらこそ、ありがとう、オーリア
「それで、実戦はどうするの?」
オーリアは腰を上げて少し背伸びをする。
「ん~、とりあえず今からギルドに行って、雑魚の依頼が無いか探してみるか。」
「うん。分かった。」
私たちは森を抜けて、村に入って行った。規模的には村というより町と言ったほうが正しいような気がするが。
私は初めての光景に、子供のように辺りを見まわす。
周りには、民家やお店がいっぱい立ち並んでいる。隣町にはもっといっぱいお店が並んでて、お城もあるとオーリアが言っていた。依頼が終わったら隣町にも行ってみようかな。
ギルドっていったいどんな所なんだろう?ドキドキするなぁ。
「着いたぞ。ここがギルドだ。」
「うわぁ~。」
目の前には巨大な門があって、その奥にもとてつもなく巨大な木造の建物がある。
中にはいってみると、酒や食事を楽しんでいる人、カードゲームで遊んでいる人、テーブルを囲んでおしゃべりしている人など、もうとにかく人がいっぱいだ。あと昼前なのにお酒くさい。
「す、すごい量の人だね。」
「ああ、この村で唯一のギルドだからな。」
この村で唯一って…… それにしても人多すぎだと思うんだけど。
「とりあえず団員証貰いに行くぞ。」
オーリアは人ごみの中に入っていく。
「あ、ちょっと待って!」
オーリアを見失わないように、私は必死で後を追う。
「ふ~。死ぬかと思った……」
「ほぉ~。この子が新入りかぁ~。なかなか骨のありそうな子じゃないか。」
私が顔を上げると、目の前には蜥蜴の顔があった。
「うわっ!」
その蜥蜴…いや、訂正しよう。多分これは龍だ、頭に角が生えてるし。
その龍はかなり年をとっているみたいだった。喋り方も古風で、ボロボロの服を身につけている。
老人は口から立派な牙をのぞかせていて、顔には無数の傷がある。身体が緑色の鱗でおおわれていて、頭から尻尾の先まで艶々の白くて長い獣毛が生えている。かなり体格もよく、老人の体つきとは思えない。一番の特徴は、目つきが鋭く、もうヤクザ顔負けっていうレベル。数々の修羅場を潜り抜けてきた勇猛な戦士――そんな感じがする人だ。
私は驚いて腰を抜かしそうになったが、龍の老人はお構いなしに話を続ける。
「早速だが、お主には試験を受けてもらう!」
いやいや突然すぎるだろ!私は意味が分からず、唖然としていた。
オーリアが怒り口調で老人に言う。
「ちょ、ちょっとジジイ!こいつまだ魔道書の扱いにも慣れてないんだぞ!」
「お主は黙っておれ!」
老人がそう言って指を軽く振ると、光のツタがオーリアの口元に巻き付いて、マスクのように口を塞いでしまう。
「さて、話を続けようかの。」
このお爺さん、なんか怖い……
私は、さっき言っていた試験について聞いてみた。
「あのー、試験と言うのは?」
「お主、ギルド証がほしいんじゃろ?」
「はっ、はい!」
このお爺さん、いちいち声がでかいから話してるとなんか緊張するなぁ…
「ギルド証がほしいなら、儂の出す簡単な試験に挑戦し、それに合格するんじゃ!」
「ですが、私には戦闘経験が無いので……」
「ぬ?昨日盗賊ギルドの連中と戦ったのではないのかな?」
「ま、まぁそうですけど。」
あれ?私何も言ってないのに、このお爺さん何で知ってるんだろう?オーリアが先に話しておいてくれたのかな。
「いや、儂はなにも聞いておらんぞ。」
「そ、そうですか。」
ん~、じゃあなんで分かったんだろう?
「それはお主の心を読んだからじゃな。」
あ~。なるほどね。メンタリズムとかそういうのね……
「って、ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!心を読んだ!?えっ?えっ?」
「お主は本当に面白いのう。さっきから驚いてばかりじゃ! がっはっはっはっは!」
そ、それじゃあまさかオーリアとのことも――
「もちろん。すべてお見通しじゃ。」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
もう、穴があったら今すぐそこに隠れたい気分だ……
老人にぽんぽん、と肩を叩かれる。
「まぁ。そう落ち込むでない。それよりも試験じゃ!し・け・ん・!」
「そ、そうでしたね。」
気を取り直して、試験の内容について質問する。
「試験って、具体的にどういうものなんでしょうか?」
老人は軽く咳払いをし、腰に手を当てる。
「ふむ、まぁそこまで難しいものではないから安心せい。」
「今回の試験内容は… コレじゃっ!」
そう言って、老人はズボンのポケットからくしゃくしゃの黄色がかった紙を取り出し、私に突きつけてきた。
紙には可愛らしい動物の絵と、地図と、3行ほどの短い文が書いてあった。紙に書いてある文章を読んでみる。
「えっと… これって?」
紙には、
『村周辺に出没するウルフの駆除をお願いします。場所:ニルク村周辺 報酬:1000dlg』
とだけ書いてある。
「地図にある指定の場所に依頼主はおる、さあ、行ってくるんじゃ。」
「いや、それじゃ分かりませんって!」
「若いんじゃから、つべこべ言わずにさっさと行かんかい!」
老人はそう言って、私の首根っこをつかみ軽々と持ち上げたかと思うと、私はそのまま門の外へ投げ飛ばされてしまった。
っったぁ~。腰を思いっきり打っちゃった。もうちょっと手加減してよ。私は不満げな顔で、体についた土を払いながら立ち上がる。
あのお爺さん、いろいろと理不尽だなぁ。そういえば名前聞いてなかった。後で聞いておかないと。
私はいろいろ考えながら全身の土を払い終えると、地図を見ながら歩き出した。
老人は、サキが村から出たのを確認すると、オーリアの口元に張り付いていたツタを解いた。
「はあっはあっ……」
「じ、ジジイ!てめえ!」
オーリアは老人に殴りかかるが、呼吸が整っていないのもあってかひらりとかわされてしまう。
老人は無表情で話す。
「お主、何をそんなに怒っておるんじゃ?そんなに苦しかったかの?」
「ふざけるな!サキが死んじまってもいいのか!」
オーリアが叫ぶと、周りの者の視線が二人に集中する。お互い睨みあったまま、一歩も引こうとしない。二人のその風貌は、まさに竜虎の如しだ。
老人は険しい表情で、おもむろに口を開く。
「あの程度でくたばればそれまで、無事ならば我がギルドの新たなメンバーとして迎え入れる。ただそれだけのことじゃ。」
オーリアはこの老人に怒りを越して憎しみさえも感じていた。
「話になんねぇ……」
オーリアはそう言うと、入り口へ向かって歩き始める。
「何処へ行くんじゃ。」
「決まってんだろ。サキを助けに行くんだよ。」
老人がオーリアの腕をつかむ。
「お主が行けばあの子は失格じゃ。」
オーリアは老人の腕を振り払って歩きだす。
「失格になってもいい、あいつが無事なら……」
常人では視界にとらえることも出来ないであろう早さで、老人はオーリアの首筋を手刀でみねうちする。
ドサッ
気絶したオーリアは、声もあげずに前へ倒れてしまった。
「あの子には〝この世界〟のことを身を持って知ってもらう必要がある。辛いかもしれんが、今はあの子のことを信じて帰りを待つんじゃ。」
老人がオーリアを抱きかかえる。
「こらっ!皆の者、早く持ち場に戻らんか!」
老人の声で、みんな一斉に仕事を再開する。
老人はオーリアを別室のベッドに運ぶと、近くの椅子に座って居眠りを始めた。
今回はどうでしたでしょうか。
投稿に間隔が開いてしまったのですが、別に忙しいわけではありません。改善点を見つけていただけです。
次回は早く投稿できるようにします。