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月白の魔道士  作者: 獣毛
物語
1/2

序章 目覚めた世界

なんかいろいろとひどい作品です。

自分で読みましたが数秒でブラウザバックの出来るレベルです。

「ふぅ、やっと終わった……」


 私はほっと溜息をついてまず顔の汗をハンカチで拭き、グラスを手に取り中の麦茶を一気飲みする。

 クーラーどころか扇風機すらないこの環境で、この絶望的な量の夏休みの課題を片付けろというのは、都会育ちの私にとってはあまりにも絶望的な試練である。なぜ、夏休みにおじいちゃん家に来てまで課題をやらないといけないのだろう。まぁ夏休みを満喫しまくるためだが。


 夏休みのしおりを手に取り、他に何か課題があったか確認してみる。

 ワーク類は全て終わった。美術のポスターと技術の作品は昨日終わらせて、理科の自由研究のレポートも今朝まとめた。よし。これで全部か。あ、読書感想文……

 やばい、本とか持ってねぇし。つか読むのめんどくせぇ。

 なんか無性に腹立ってきた。そもそも本読んで感想書くとか何?書けるわけないだろうが普通。

 私は大きい独り言をぶつぶつと唱えていたが、文句を言ったところで何も変わらない。とりあえずなにか考えないと……

 そういえばこの家には書斎があったはず。しかし、日本語の本があまりなかったような気がするなぁ……

 早くしないと日が暮れてしまう。今日はお泊り会を開く予定なので、夕方になれば友達がくる。そしたら確実に私は遊びモードに入り、そのまま遊びに没頭してしまうだろう。少なくとも夏休みの最後まで。それだけは何としてでも避けなくては!

 あぁ、こんなことなら久しぶりにおじいちゃん家に行くからお泊り会開くとか言うんじゃなかったよ。昨日の私は舞い上がりすぎていた。

 過ぎたことを悔やんでも仕方がない。さっさと書斎へ行くことにしよう。

 私は書斎へ向かって歩きだした。




 無理だ。もう諦めようかな。部屋に入った瞬間私はそう思った。

 壁一面本で覆い尽くされ、天井に届きそうなぐらい巨大な本棚にも大量の本が詰められている。この中から日本語の本を探せ、と。砂の中からダイヤを探すよりも難しくないだろうか。

 一番近くにあった本棚に近づいてみる。棚を見上げると、分厚い本が綺麗に並べられている。どの棚もきちんと手入れがしてあって、ホコリ一つ無い綺麗さだ。おじいちゃんは一人暮らしなので、これを全部一人で管理しているというのはとても信じられない。背表紙を見る限り、英語やイタリア語、フランス語、中国語やハングルなどの文字で書かれた本しかなく、日本語と言っても古文書のようなものしか無いように見える。芥川龍之介の本とかはないのだろうか。というかおじいちゃんの書斎どうなってんだよ。

 とりあえず日本語で、私でも読める本探そう。


「あづいいいいいいいいいいい……」

 私はもう限界だった。探しても探しても、日本語が無い、あるとしても古文書か長すぎる物語だけだった。

 はぁ~っ、とため息をついて本を棚に戻そうとすると、何やら奇妙な表紙をしている本が私の目に留まる。

 表紙には見たこともない文字(というか文字なのかこれ)が書かれており、中身は小さい文字でびっしりと何かについて記されている。

 ぱらぱらとめくっていると大きな蝶のような挿絵があり、それが目にとまった。同時に意識が遠のき、なんだか引き込まれるような感覚に襲われる。

―――――――――――――――

 エアコンどころか窓すらないのに風が吹いている。それに葉がこすれる音や水のにおいもするような……


「あれ?」

「ここ…何処……?」

 何が起こったのか分からなかった。さっきまで書斎で本を見ていた。そして大きな蝶の挿絵を見つけて――

あれ?蝶の挿絵が――無い……

 私は芝生の上に座り込み、考えた。本を見ていたら急に、ほんの一瞬だけ音や光が白にかわって、気づいたらこの周りを森で囲まれた湖のほとりに立ってて――

「あぁ~もう、わけわかんないよ。」

 私は疲れてきて、芝生の上に寝ころがった。風が頬に当たって気持ち良い。こんなところで寝ればいい夢を見れそうだ……ん?夢?


 あ、そうか。これは夢か。


 そうだよ、夢だよ。だってありえないじゃん、急に場所が変わるなんて。

 それにしてもずいぶんとリアルな夢だ。芝生の感触も、風の心地よさも、木が揺れて葉がこすれ合う音も、全てが現実のように感じる。とても夢とは思えない……でも夢じゃないほうがもっと非現実的だ。

 とりあえず夢だと思いつつ、目が覚めるまで遊ぶことにする。

 湖に近づき、水面に足をつけてみる。水は丁度いい冷たさで、私を癒してくれる。ん~気持ちいい!

 ……えらく感触がリアルだな。いや、これは夢だ。場所が一瞬で変わるなんてありえない!そう自分に言い聞かせて、足でおもいっきり水をはね上げる。


 少し水遊びしすぎた。おかげで服がぐしょぐしょになって気持ち悪い。まぁ夢だからいいのだけど。

 水遊びしたら少し体が冷えてきた。することもないし森の中を探索してみるか。




 濡れた服を絞りながら森の中へと入っていく。森の中は思ったより暗く、じめじめしている。途中、何度も木の根に足を引っ掛けそうになった。

 しばらく歩くと、小屋を見つけた。最初は入ろうか迷ったが、夢だから大丈夫だろうと思い、入ってみることにする。

 ゆっくりと、木でできた重い扉をあける。小屋の中にはいると、少しカビ臭かった。外見に比べて中は意外と広かった。ような気がしただけだと思う。

 それもそのはず。多少の本や生活用品のようなものはあるが、それ以外の物は必要最低限のものだけでほとんど何もない。

 部屋に置いてある物を手にとって眺めていると、突然扉の開く音がして、後ろから声がした。


「――――!」

「へ?」

 なんとなく怒っているのは表情と口調で分かるんだけど、何語でしゃべっているのかわからない。

 それにこいつの格好もおかしい。弓矢を背負って、腰に短刀を携えて、ぼんやりと光る石をぶら下げている。まるでゲームに登場する狩人のような格好だ。


 私が何を話しているかわからず戸惑っていると、異変に気づいたらしく、狩人は鞄から液体の入った瓶を取り出してそれを飲んだ。


「……俺の話していることが分かるか?」


突然のこと過ぎて戸惑ったが、私はなんとか平常心を保って答える。


「はっ、はい。」

「それじゃあ早速ききたいことをきかせてもらおう。おまえはいったい何者だ。」


 なんだこいつ……と思ったが武器を持っているし、雰囲気がやばかったので答えることにする。

「私、風道 咲といいます。13歳の中学二年生です。」

 そう言うと、狩人が不思議そうな顔でこちらを見てきた。

「今日は学校じゃないのか?」

「いや、それが……」

 私はこれまでのいきさつを話した。


「そんなことがあったのか。確証はないが、俺の推測だと他の世界から飛ばされてきた可能性があるな。」

 私は首をかしげる。

「と、いうと?」

「この世界では魔法で瞬時に移動することができる。それにその本も見たところ魔道書のようだしな。それも強い魔力をもった、強力な魔道書。」

 私は疑惑の目で狩人に言う。

「それじゃあ勝手にその瞬間移動の魔法が発現してこの世界に飛ばされたって言うんですか?」

「そういうことだ。」

 いや、魔法なんて信じられない。

「いやでも……」

「じゃあなんでお前は俺と話をしている?あまりに現実的すぎる感触、音、景色はどうなんだ?」

 魔法とかそっちの方が信じられないんですけど。

 私は無言のままうつむいた。

「そんなに信じられないならついてこい。」

 そう言って狩人はさっさと木の扉を開け、小屋を出て行った。私は急ぎ足で後を追いかける。

 なぜ私はこんな変な夢に振り回されているのだろう……




 私が森の中を眺めながら歩いていると、また木の根っこに足を引っ掛けてしまった。

「きゃっ!」

 私はおもいっきり前にこける。地面が目前に迫ってくる恐怖で、目をつぶってしまう。

 突然、身体が空中で急停止する。ふと目を開けると、狩人が抱きとめてくれていた。

「大丈夫か?」

 私はしばらく狩人に抱きついていたが、数秒して我に帰り、狩人の腕を振り払う。

「だっ、大丈夫よ!」

「そ、そうか。」

 私が慌てているのを見て、狩人はかなり驚いた様子のようだ。

「さっさといきましょ!」

 そう言って私はどんどん奥へ進む。

「お、おい待てよ。」

 狩人が走って追いかける。なぜか一瞬、狩人のことをかっこいいって思っしまった。いや、絶対にそれはない、こんな男に好意を持つなんてありえねぇ……


 そういえば、ずっと彼のことを狩人って呼んでるけどなんか呼びづらいな……今更だけど名前聞いとこう。何で私が自己紹介したときにこいつは自己紹介しなかったんだ。やはりマナーの知らない野蛮な奴だったんだな…

 私は狩人に話しかける。

「あの~、名前聞いてなかったと思うんだけど。」

 狩人は振り返りもせずに歩いている。人の話を聞く態度というものがあるだろうが。まぁかなり後方で話をしている私が悪いのだが。

「ん、そうだっけか?」

「うん、聞いてないよ。」

「そうだな~」

 なぜそこで悩む!

「狩人でいんじゃね?」

 はい?

「いや『狩人でいんじゃね?』って何だよ。なんで適当なんだよ。なんで疑問符がつくんだよぉぉぉぉ!」

 絶叫している私に狩人は嘲笑しながら言う。

「いや、名前を教える必要性がほとんど皆無、というかわからん。それにお前に名前で呼ばれたくないしな。」

「何だよその理由!蹴り飛ばすぞ!」

 私が怒りながらそう言うと、狩人は鼻でフッと笑う。

「蹴ってもひとは飛ばせないと思うぞ。お前はゲームのしすぎで頭が逝っちゃったんだな。かわいそうに……」

 狩人が憐れむような顔でこちらをみてくる。

 こいつ、くそうぜぇ……

「じゃあ蹴られても良いんだね?」

「おういいとも。まぁ俺はお前の蹴りなんて目をつぶってても避けられるけどな。」

「舐めんなぁー!!」

 私は助走をつけ、そのままの勢いで狩人の背中にとび蹴りを喰らわせた。

 狩人は体をひねってよけようとしたようだが、甘いな、私はそれも計算済みだ。角度は微調整している。

 狩人は勢いよく前に吹っ飛ばされた。

「ごほぉ!」

 狩人は地面で顔を強打した。私は狩人を見下ろす。どうだ、見たかこの野郎。

「ぐ……お前の蹴りって結構痛いな。死ぬかと思った。」

 私は狩人を見下しながら言う。

「そのまま死ねばよかったのに。」

 狩人は私をみてふっと笑った。

「俺が死ねば困るのはお前だぜ?」

 立ち上がる狩人に私は聞く。

「なんでよ。というかなんで笑ってんのよ。」

 狩人は服についた土や苔を払いながら、私の方に向きなおす。

「俺が死ねばお前これからどうすんだよ、頼れるやつはいないんだろ?まぁお前は力が強いから大丈夫か。あっ、でも脳筋だから誰かいないと野垂れ死にそうだな。」

 私は笑顔で握りこぶしを作る。

「ちょっと歯をくいしばろっか。」

「馬鹿って言ってごめんなさい。すみませんでした。」

 狩人が土下座しながら謝罪をすると、私は握り拳をほどく。つかどんだけ土下座すんの早いんだよ。土下座選手権あったら優勝確定だぞこいつ。

「分かればよろしい。」

「んで、名前は?」

 私が質問すると、狩人が困った顔で言った。

「俺には記憶が無いから、なんて呼んでもらえばいいか……ん~、オーリアだ。オーリアでいい。」

 私は笑顔でオーリアの手を握る。この狩人、男で、しかも狩人なのに腕はほっそりとしていて手のひらもも小さい。それでも私よりかは大きいが。

「よろしくね!オーリア!」

「よろしくな!サキ!」




 しばらく歩いていくと、オーリアは足をとめた。オーリアの視線の先には大きな鳥がいて、長い首を上下させながら辺りをきょろきょろと見回している。

 オーリアがその怪鳥を指さして言った。

「あそこに魔物がいる。お前攻撃されて来い。それで痛かったら夢じゃないだろ?」

「なっ……」

 あんなのに襲われたら死ぬだろ普通。というか痛いだけなら私を矢で刺すとかでいいじゃん!

オーリアがニヤニヤしながら言う。

「それとも夢なのに怖いのか?」

「そっ、そんなことないわよ!行けばいいんでしょ!」

 言ってしまった。挑発にすぐに乗ってしまう私の悪い癖が出てしまった。しかもあの怪鳥が私に気づいて、もうすぐそこまで近づいてきている。もう後に引くことはできない。

 私は死ぬ気で怪鳥にタックルした。

「うをおおおおおお!!」

「グエーーーーー!」

 鳥の雄たけびとともに、私の体は宙を舞い、地面に打ち付けられ、くちばしで裂かれた腹から血が吹き出る。激しい痛みが稲妻のように体を走り、私は叫びをあげることも出来ずにうずくまった。

 この痛みは夢じゃない。現実だ。

 地面で蹲っている私に、怪鳥がゆっくりと近づいて来る。

 私、死ぬのかな……

 私があきらめかけた瞬間、怪鳥は唸り声をあげると同時に倒れた。どうやらオーリアが怪鳥を倒したようだった。

 オーリアが頭の後ろを掻きながら近づいてくる。

「いやーごめんごめん。軽傷で済むと思ったんだけどやっぱ防具身につけていないとだめだっ――」

 私はオーリアが言い終わらないうちにサッと立ち上がり、オーリアの鳩尾(みぞおち)に右手をめり込ませる。

「ごふぅっ!」

「ごめんですむかボケェェぇ!死ぬかと思ったわ!」

 青ざめた顔で冷や汗をかきながらオーリアは顔を上げた。

「なにも腹パンしなくても…」

「さっさと薬だしやがれ!!」

「元気そうだし大丈――」

 もう一度同じ場所にパンチを入れる。

「ふぐぅっ!!!」

 オーリアがその場に倒れこむ。

「何か言いった?ん?」

 オーリアは土下座……というかほとんど(うずくま)るような形で私に謝罪した。

「マジデスミマセンデシタゴメンナサイ。」

「これ、治癒薬ですので。どうぞ。」

 そう言ってオーリアは瓶に入った青い液体を取りだした。私はオーリアから薬を取りあげると、それを一気飲みする。

「くそまずいなこれ。」

 オーリアが涙目で言う。

「文句言うなよ。結構高いんだから。」

「ふ~ん。でも痛みが引いてきたし許してあげるよ。」

「おっ、さすがお高いのは効き目が違うね~」


 そうやって他愛もない話をして笑っていると、向こうから蜥蜴(とかげ)のような姿の、いかにも悪い感じのやつらがニヤニヤしながら近づいてきた。少し不安になってきたので、オーリアに話しかけてみる。

「今度は何?」

 狩人が物凄い険相でトカゲたちを睨みながら弓を構える。さっきの緩い雰囲気だったオーリアが、ハンターへと豹変する。

「サキ、逃げろ。」

 私ははっとして声を出す。

「え?」

「早く逃げないと殺されるぞ!」

「わ、分かった」

 そう言って私が走りだそうとした瞬間、まぶしい閃光とともに爆発が起きた。

「うわああああああああああ!」


 痛む体を起こしてあたりを見まわすと、近くにオーリアが倒れていた。オーリアの服やマントは黒焦げになっていて、周りには血の水たまりが出来ている。その光景が私の光を奪い、絶望を与える。

 私は急いでオーリアの近くに寄ろうとしたが、足の骨が折れたみたいで動けない。

「ねぇ、ちょっと?オーリア?」

「ちょっとぉ……聞いてるの?」

 オーリアは私の呼びかけに反応してくれない。

「オーリアぁぁぁ!」

 私は泣きながら必死に、何度も叫んだ。しかし、オーリアはピクリとも動かない。いや、オーリアが少しだけ動いた。

 ガクガク震えながら、オーリアは上半身を起こす。

「に…逃げろ……」

 私に向かってそう言うと、オーリアは動かなくなってしまった。

「嘘だ……」

 私の思考が完全に停止する。

 オーリアが死んだ。あんなに元気だったのに。さっきまで楽しくおしゃべりして、喧嘩してたのに。

「なんで……」


 私が泣きながら固まっていると、蜥蜴(とかげ)の姿をした人たちが狩人に群がってきた。蜥蜴たちが狩人の服のポケットや燃えてしまった鞄を漁りながら何か話している。

「おい、だから言ったろ。威力は低めにしとけって。」

「あーあ。鞄も燃えちまってら。今日も収穫なしか…あ、こいつまだ生きてやがんぜ。」

「まぁ生きてても何もできないんだし。ほっとけばいいんじゃないの?」

 生きていると聞いて、私は少しほっとした。が、ほっとしたのもつかの間。

1匹の蜥蜴が突然くるりと体の向きを変え、こちらに向かって歩き出した。

「それよりもあっちの娘だ、結構かわいいじゃねぇか……」

トカゲがニタァと不敵な笑みを浮かべ、近づいてくる。

「く、来るな……」

 追いつめられた私は、震えた声で呟く。逃げようとしても、体が動かない。

今の私はまるで蛇に睨まれた蛙だ。

「へへっ。たっぷりかわいがってやるからよ…」

「い、いや…」

 私の必死の抵抗も虚しく、蜥蜴の手が服にかけられた瞬間だった。


「ん?こいつ魔道書もってやがんぞ。」

 蜥蜴がそう言って、私の持っていた魔道書を取りあげる。すると、他の蜥蜴たちも狩人を放って魔道書に群がってきた。

「す、すげぇ。下級魔法から上級魔法まで、何から何まで揃ってるぜ!」

「こんなレアもん滅多にお目にかかれないぜ!」

 仲間の蜥蜴が、私に近づいてきた蜥蜴から魔道書を奪い取る。

「こ、これは俺のだからな!」

「いーや。俺が最初に見つけたから俺のものだ!」

 そう言って、最初に魔道書を持っていた蜥蜴が奪い返す。

「いや、俺が貰うぜ!」

「なにすんだよ!それは俺のもんだ!」

 蜥蜴たちが魔道書を奪い合い、言い争っている。チャンスだと思った私は、蜥蜴たちが争っている間に逃げようと必死で地面を這う。


ゴトッ

 重たい音がして、私の足に何かがぶつけられた。いやな予感がする。

「う、嘘……」

 予感的中。それは魔道書だった。恐る恐る振り返ると、蜥蜴たちと目があった。

「ゴルァ!魔道書返せ!」

 いや、あんたらが投げてきたんでしょうが!

「くそっ!だから俺に渡しとけばいいって言っただろ!」

「そんなこと言って無かっただろうが!」

「お前らそんなこといいから早く魔道書取り返せ!あの娘に魔法を使われたら終わりだぞ!」

 蜥蜴たちは言い争いながら私の方に向かって走ってきている。どうしよう、何かこの状況を切り抜けられるいい方法は……


 そうだ、魔道書だ。私は本を開き、ページをぱらぱらとめくった。

なぜだか分からないけど、書いてあることが読める。これなら適当な魔法を見つけて奴らを倒せるかもしれない。

 私は『上級魔法』と書いてあるページを見つけて、適等に書いてある言葉を必死で叫んだ。

炎の断罪フレア・エクスプロージョン!」

 すると、私の目の前に魔方陣が描かれ、魔方陣から炎の渦が飛び出し、蜥蜴たちを飲み込む。それは一瞬の出来事で、蜥蜴たちがそれに気付いて逃げようとしたころには全員炎の渦に巻き込まれていた。

「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 蜥蜴たちは叫びをあげて、悶え苦しんでいる。

 トカゲたちは真っ黒焦げになり、バタバタと倒れていった。その光景を見て少し安心する。

「や、やった…」

 とりあえずなんとかなったかな。でも、オーリアが……

 ぐっ、身体が……言うこと……

 腕の力が抜け、うつ伏せになり、だんだん意識が遠くなっていく。立ち込めるひどい臭いに嘔吐きながら、私は気を失った……

永遠の黒歴史ですね、はい。

もっと自重しまふ。

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