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お座敷えるふさん  作者: ビタワン
はじまり
5/15

エルフさんの後悔


今日も奥様にお呼ばれしましたが、部屋の中の雰囲気がいつもと様子が違います。

私の方は、いつもの通り奥様の隣で頭を撫でられながら控えています。

そして、奥様は古参のメイドさんたちと何やら真面目に話し合ってるのですが、その内容が……。


「いい案はないかしら、今はいいけれどこのままじゃ私の体が持たないわ」

「王都より強めの精力剤をお取り寄せするのはいかがでしょう」

「あれは副作用が強いそうよ、奥様はお子様を授かる大事なお体ですもの」

「では、その、逢瀬を少し控えて頂くというのは……」

「いえ、旦那様は今でも奥様の体調を慮って抑えてらっしゃるそうよ」

「あぁ!何てこと……」


夜の作戦会議でした。なにこれ凄い居心地が悪いのですが。

見た目少女の私を前になんという会話をしているんでしょうね。内容が分からないと思われているのかもしれませんが、残念、私の前世はHENTAI文化大国の元日本人ですからね。ネットを開けばそんな赤裸々な相談がわんさか検索結果に出てくる社会に生きておりました。夫の求めを拒んで関係がギクシャクしたり、思わぬ体調を崩したりといったケースも読んだことがあります。なぜそんなものを読んでいたか……強いて言うならその当時、私も思春期だったという事です。そんな事どうでもいいことはひとまず置いておきます。

ここは!日頃のご恩返しに、私がひと肌脱ぐべきでしょうかっ!


「あの……奥様」


声をかけると、はっとしたようにこちらに笑顔を向けてくださいます。話に参加していない私へのお気遣いでしょうか、奥様はいいお母様になりそうですね。と、メイドさんたちも話を止めてこちらに注目しています。


「奥様の負担、和らげるように、したいです」


これから言おうとする事が内容が内容なので、ちょっと緊張してとぎれとぎれとなりましたが、なんとか意思は伝えました。なにやら奥様が感動されています。メイドさんたちも優しい目でこちらを見ています。うわぁ、言い出しづらいなぁ……。


私は窓際のテーブルの奥にある白く薄い石版と羽ペンを持ってきます。ホワイトボードのようなもので、付属の羽ペンでなぞると線が浮かび上がるのです。もちろん描いた物の削除も可能。一応これも魔法具らしくえらく高価なものだそうで、遊んでたらメイドさんに怒られたのも記憶に新しかったりします。私は、石板にいくつか線を引っ張って、その先に丸をつけます。あっという間に寝転んだ棒人間の絵が出来ましたと。そして、そこに中腰でのしかかるもう一体の棒人間。すべてを描ききった私は、ドヤッとばかりに薄い胸を張って奥様とメイドさんたちに石板を見せます。皆、しばし頭に疑問符をつけて覗き込んでいましたが、その絵の内容を悟ると固まってしまいました。誰かがゴクリと喉を鳴らす音がします。


その後、奥様は固まったままでしたが、ようやく復帰したメイドさんたちはしきりに感心したり顔を赤くしたりしておりました。


「こ、これって」

「あらあらまぁ」

「こんな子が……エルフってすごいのね」

「子供に見えるのにねぇ、これがエルフの英知という物かしら?」


なんかすごい誤解が生まれた気がします。


この世界のエルフの皆様ごめんなさい、高貴で知的なエルフのイメージをおもいきり粉砕した様な気がします。とまれ、なぜ知っているかを皆様に説明できる気はしなかったので、あいまいに頷いておきました。ついでにもう一つ、横になった棒人間を二つ並べて描きます。いわゆる側位という奴です。えぇ、奥様がご懐妊された時には必要かなと思って。メイドさんたちの中でも子供さんの要る方たちは、直ぐにこれの必要な時に気付いたようですね。お腹に負担をかけない姿勢は必要ですから。


あ、奥様はまだ固まったままです。あとは、多少投げっぱなしになりますがあとのフォローは人生経験の豊富なメイドさんたちにお任せしましょう。わたしがんばった!羞恥に耐えてよくがんばった!だからもう眠ってもいいよね。奥様の座るソファーの隣で丸くなると、私はそのまま眠りの世界へ旅立ちました。わふん。





翌日、旦那様はいつもと違う妻との逢瀬にタガが外れてしまい、朝から奥様が動けない状況になってしまったそうです。奥様のお体を案じての提案でしたが、まさかこんな結果になるとは。弱弱しくベッドの上で過ごす奥様を見ると、私も責任を感じてしまいます。

恐るべし旦那様、でも明日からはぜひ自重してくださいませ。


寝汗を拭いたりお水を渡したりとメイドさんにお仕事を貰って、奥様のお世話をしておりますと、旦那様のお呼び出しがありました。今日は珍しく、日中にお城にいらっしゃるようですね。体調を崩した奥様を気遣っての事でしょうか。ともかく、城の執務室へと向かうと、旦那様と始めて見るの初老の男性に迎えられました。この豊かな髭のおじ様は、お城の専属画家さんだそうです。


「実はな、お前にやって貰いたいことがあるのだ」


はい、はい!なんで御座いましょう。普段は奥様付きなので旦那様に頼みごとをされるのは滅多にありません。勢いよく首を縦に振る私に苦笑しながら、旦那様はあるものを差し出しました。


これ、昨日のエルフの英知(笑)じゃないですか……。

続いて、髭のおじ様の方から渡された羊皮紙には、絡み合う男女の絵が――って、いきなり何てもの見せるのですかっ!


「お前の持つ、その、エルフの英知を編纂したいのだ!」


どどーんと背景や効果音が付きそうなくらいに息ごのんで、私の両肩を掴みます。痛いです、熱意は分かりましたから手を緩めてください旦那様。私の涙目の視線を受けて、少しクールダウンしたのか咳払いひとつ。協力することは吝かではありません、でも言ってることの内容はフォローのしようがない程ほど世間体がないものですよ。見た目少女に「エロ行為のテキストを作りたいから君のエロ知識を全て話せ」とか、日本であれば110番が確定してますよ。なんですかその羞恥プレイは!私は顔を赤く染めながら、観念して棒人間を描きつつ説明を付け加えます。


「ほう、その姿を清水に例えるか」

「エルフとは詩人な表現をするものですな」


更にはより詳しく突っ込んで聞かれたりして、答える私はもう疲労困憊です。でもこれが、旦那様と奥様の(夜の生活に)お役にたてるならば、わたくし頑張ってやり遂げて見せましょう。


「ほほう!その発想は無かったわ!」

「おぉ、なんという冒涜的、いや背徳的な姿よ!」


興奮した様子で次へ次へと促すイイ年のおじ様二人に、決意したばかりで早くも心が折れそうです。

もうやだちょっと勘弁してください……と心の内で涙するのでした。



ワンコは辞書のエロい単語を調べまくったタイプ。

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