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お座敷えるふさん  作者: ビタワン
はじまり
4/15

エルフさんの受難

「んー。ココ、あなたってお日様のいい匂いがするわ」


私を抱き枕のように抱えながら、奥様がのたまいます。奥様、それはさっきまで庭園でお昼寝してたからです。そういえば、エルフになって汗は掻くんですがあまり悪臭とかしないのですよね。匂いの強い料理を食べても口臭が長持ちしませんし。お日様の匂いって服や布団に付着した汗や脂肪、洗剤などが太陽の光にあたって揮発分解されたりしたものが主成分だそうですが、エルフの私も普通の人間と同じ扱いでいいんでしょうか。あと、自分ではわからないのですが私の服を洗濯したメイドさん曰く、少しばかり森の匂いがするそうです。ほんと私のバクテリアはどうなっているんだか。もしかして、人間より植物に近いとか、知らない間に光合成とかしてる?うわぁ、それはなんか嫌です。


「うん……落ち着くわ」


それは何よりでございます奥様。

お日様の香りも森の香りも芳香剤になるくらい人の心に快適を与えますから。つまり私は歩く芳香剤。オートアロマてぃっくエルフなのですね。私に抱きついたまま、奥様は気持ちよさそうに表情を緩めています。いつもの凛としたお顔もいいですが、気を抜いた顔でも美しい、いやまだまだ若いですし可愛らしく見えるのだから美人は得ですね。


そういえば、最近よく奥様からお昼寝の添い寝に呼ばれます。

相変わらずベッド上での夜間運動会は続いているようですね。ここの所ずっとメイドのお姉さんがご夫婦の寝室のシーツを取り換えていましたので察しました。どうやら旦那様と奥様も結婚して一年が経とうかといった所で、お子様が欲しいと頑張られているようです。旦那様も結構いいトシですので、なんか周りから「お世継ぎ期待!」のプレッシャーがあるそうです。その辺はペットゆえ気にすることもない私は、そばにいるだけで癒しになってるのかもしれません。アニマルテラピーに、さらにアロマテラピー効果も上乗せですから。そういう事情があって、心と体に疲労がたまってる状態なのですね。また今日も、という訳でお昼寝をして回復しつつ決戦に備えてお昼寝です。というか、旦那様……お仕事で忙しい筈なのに、毎夜、年の若い奥様がダウンするまで励むとか、精力強靭すぎますよ!



「また何か考えてるの?貴方はあまり声を聞かせてくれないけど、コロコロ表情が変わって面白いわね」


すみません、最近言葉に出すより先に本能でばかり動いてました。私の普段は食う寝る遊ぶ、それに仕事が含まれてますからね。そう、私のゴースト(本能)が囁くのよ。つらつらそんな事を考えていると、ゆっくり頭を撫でていた奥様の手が止まり、私の長い耳の先端を指の腹で摘まみました。


「ひゅいっ」


予想外の衝撃に私の口から変な声が出てしまいます。

お、奥様、それはあかんです。そこ敏感なんです。駄目です。駄目駄目です。だからっ、耳摘まんだままこしこし擦らないでぇ!


「ふぅう!……あぁうっ」


体を縮こまらせて与えられる刺激に耐えますが、どうしてもあられのない声が漏れ出ます。前世で猫が飼い主に尻尾の付け根の性感帯をコリコリされて喘ぎまくる動画見て「かーわいい」などとニヤけた顔で閲覧してましたが、これはダメです。強すぎる刺激が、快感を伴う波が大きすぎて苦痛にも思えます。思わず涙腺が緩んで、涙をためた目で奥様を見上げてしまいます。


「……かわいい声」


奥様の瞳に火がついたように思います。うっとりとした表情でますます指を動かします。猫コリコリ動画を見ていた私もこんな表情だったんでしょうか?その微笑が怖いです奥様。


「もっと聞かせて?」


そんなご無体な!あっ、緩急つけるのは反則……ぅ!奥様いつの間にそんなテクニックを!このまま、奥様が飽きられるか寝入るまで続きそうです。早く終わって!いや終わらないで!しばし、私の意識は天国と地獄の行き来を経験したのでした。





日が傾くころに私は気だるい体を押して、とてもすっきりしたお顔の奥様を置いてベッドから抜け出しました。そして待機所のメイドさんたちを前にして、ある切実なお願いを言い出せないでいました。

下着の替えが欲しい……なんて、どう言えばいいというのでしょう。さすがに奥様とのあれは口外なんてできませんし、さりとてこの見た目年齢、少女の姿で、その、お漏らししましたとか口に出そうものなら私は恥ずかしくて城から脱走します。しかし、このまま下着ベトベトさんで過ごすのも気持ち悪くて嫌です。


言葉につまりもじもじする私を見た年配のメイドさんが、苦笑しながら私をリネン室に連れて行って新しい下着を用意してくれました。それから諭すように「次からはちゃんというのよ?」なんて言われたら顔を赤くして俯きながら「うん」と答えるだけで精いっぱいです。なんとかお礼の言葉を絞り出して、たまらず早歩きで去ります。これ、ぜったい私お漏らししちゃったと思われてるよね?でも本当のことは言えないし、今更事情を説明しに戻るなんて羞恥心が限界です。絶対に無理。ここに至って私の選択は……不貞寝しました。


なんだか翌日から、メイドさん『たち』の私を見る目が妙に生暖かいというか、子供さんを見る目なんです。

なにか……色々と大事なものを失ってしまった気分です。泣きたい。



久々にワンコがしゃべったと思ったらこれだよ

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